アベリア (ハナゾノツクバネウツギ) Abelia ×grandiflora
  (×は雑種であることを示す記号)

1999.10.22:長居植物園)

アベリア (長居植物園 1998.10.23.)

スイカズラ科* ツクバネウツギ属 【*APGⅢ:スイカズラ科】

Abelia:人名(Abel)から grandiflora:大きな花の

アベリアというのは、本来、スイカズラ科ツクバネウツギ属のラテン名で、 特定の種をさすわけではありません。大阪の浅い山の中にも、 例えばツクバネウツギやコツクバネウツギなどがありますから、 すこし植物を知った人にとっては、アベリアという名前だけではどの種をさすのか特定できず、 困ってしまいます。それが、いまのように公園や街路の植え込みによく見かけるハナゾノツクバネウツギを指すようになったのは、 それほど古いことではなく、せいぜい25年か30年ぐらい前からのように思います。 たぶん、この植物の園芸的価値が評価されて一気に多用されるようになるにつれ、 ハナゾノツクバネウツギやハナツクバネウツギという長い名前が煩わしく、 「アベリア」という短くてややハイカラな名前が好まれたことによるのでしょう。

ハナゾノツクバネウツギは、1886年頃に中国に自生するタイワンツクバネウツギ (A. chinensis) A. uniflora の雑種で、実生から選抜されたといわれており、 雑種強勢によって母種よりすぐれた性質をたくさん持っています。 たとえば、日本の落葉性アベリアとは違って常緑性で一年中葉があり、 繊細な枝は刈り込みに大変強く、何よりも春から冬の始めまで非常に長い間、 たくさんの花を咲かせることができます。 また、やや光沢をもった葉は冬にはやや赤みを帯びて美しく、衝羽根(つくばね)型の萼片が残っていて、 一見花のようにも見え、園芸植物としてはたいへん優れたものと思います。 日本へはかなり古く、大正年間には入っていたようで、 ハナゾノツクバネウツギという名前もそのときつけられたと思うのですが、 それほど普及しなかったのは不思議というべきかもしれません。

ハナゾノツクバネウツギの花はやや赤みを帯びた白い色をしていますが、 葉の大きさや樹形がやや小型で、花色がもっと濃いピンクのものを時々見かけます。 園芸的にはアベリアとして同じように扱っているようですが、 これが同じ親からでたハナゾノツクバネウツギの違った品種なのか、 まったく来歴の違う植物なのかについてはよくわかりません。