講師:京都外国語大学日本語学科教授 中川良雄先生      
全5回シリーズの後半は、中・上級偏。中・上級の学習者に対する教え方の学習会です。 (第1回は別項に掲載) オリーブのスタッフ以外の方も大勢来られていて、約25人入れる教室はほぼ満員、みなさんの熱心さに驚かされました。


第4回 2010年11月28日
 第4回講座は中上級者に対する指導方法ということで、まずはほとんどの中上級者の人が関わってくる日本語能力試験について京都外国語大学の中川先生に詳しく 説明していただきました。今年度から試験内容やレベル設定が大きく変わり、教える側もその変更に対応していく必要性が生じているので、とてもいい勉強になりました。  
 また、中上級は漢字の語彙力の有無が非常に重要であり、初級のときのように、「とりあえず漢字はおいといて・・」と考えるわけにはいかないこともわかりました。  
 さらに、会話においても初級からもう一歩踏み込んで、日本人的な言い方(はっきりNOと言わない等)を駆使し、円滑なコミュニケーションを図る能力を育てる必要があること、 丁寧な言い方と友達同士の気楽な会話、標準語と方言などを「使い分ける」能力を育てる必要があることなどがわかりました。
 最後にOPI(Oral proficiency Interview)という、会話能力を調べる面接テストのDVDを見せていただきました。しかし、そこで一見して饒舌によく話す人がまだ中級レベルで、 のんびり、訥々と話す人の方が実は上級者レベルであったことに驚かされました。よく話す人は一見日本語が上手そうに見えるのですが、自分の言いたいことばかり一方的に話すのは 実はそんなに困難なことではないそうです。上級者の人は相手の話をよく聞いて、会話の流れを読みながら、自分の言いたいことを適切な語彙できちんと説明できる人なのだそうです。      


第5回 2010年12月5日
 第5回講座は、受講者が3つの模擬授業を行い、それを元に中川先生からコメントをいただきました。テーマは中級生徒を対象にした「誘う、断る」。 任意に分けられたグループで授業の進め方を考えます。 フリートーク形式の楽しい授業設定や、フラッシュカードを使った授業、会場全員に生徒役をしてもらった一斉授業、と3種3様で、授業の形や進め方にもいろいろあるんだなぁと改めて感じました。
 受講者のみなさんからは、「日本人が外国語を学ぶのと同じくらい、それ以上に(日本語を教えるのは難しい気がします」「日本語を教えることを初めて体験しました。ポイントが少しわかり、 自分にもできるかも、と少し先が見えた気がしました」「OPIテストのビデオは興味があった」「普段、あまり関わることがない中上級者の人への対応の仕方が勉強できて、とてもよかったです」と感想をいただきました。 多くは、「中川先生の講義内容は整理されていて、とてもわかりやすい」という反響でした。

全5回にわたる学習会。今回の講義は、限りなくある日本語指導の中のほんの一部の内容でしたが、その講義内容は濃く、初めて日本語指導に携わろうとする方、また長年指導を続けている方、それぞれに新たな発見と得たものがあったのではないでしょうか。      

3つのタイプの模擬授業風景
前の週に、グループで授業を考えてくる、という宿題を出された。各グループの特徴があり、どれ1つとして同じ形式の授業はなかった。
先生と生徒のフリートーク形式の授業 テキストを原型に文法説明・会話練習の
授業
会場全員を生徒として巻き込んだ
一斉指導方式
     

レポート 第4回:坂元郁子 第5回:小春京子