オカメインコ
六月九日の深夜、妙にパタパタと音がすると思って、部屋に置いてある鳥かごのふろしきを開けてみると、
愛鳥が止まり木ではなく、床にうずくまってじっとしている姿がありました。
様子がおかしいと思い、あわてて平たい空き箱を用意して、かごから鳥を出し、
そこに移し変えようとしました。ところが出した途端、私の肩に登ってきたので
どうするのかと思ったら、いつものように頬ずりしながら「なでて」のポーズ。
反射的に頭をなでてやりましたが、弱っているはずなのに好きな場所で好きなことを
してもらいたがるものなのかと妙に感心してしまいました。
この愛鳥はオカメインコ。我が家にやってきてほぼ二十三年になりますが、
既に当時成鳥だったので推定二十五年の長老です。
この半年ほど夜だけでなく、朝でも昼でもよく寝るようになり、
さすがにその姿をみては、いいおじいさんになったな、と思ってはいました。
さて、その頬ずりの後、どうしたかといえば、何とか肩から降ろして
箱の中で寝るようにさせ私の枕元に置き、私も自分の布団に落ち着いたのですが
小一時間した頃に箱から抜け出してきて、寝ている私の肩によじ登ってきてしまいました。
その上やっぱり「なでて」ほしかったらしく、私の手を探して胸の辺りまでやってきて
催促されてしまったので、今度は身体ごとなでてやると気持ちがよかったのか
そのまままた寝てしまう始末。
おかげで当然私も身動きできず、鳥を抱いたまま結局朝まで一緒に眠ってしまいました。
そんなことがあって、一時はハラハラしましたが、とりあえずはそれ以上のことは何もなく、
再び止まり木に居る、といういつもの風景が戻ってきました。
ですが、若い頃と比べると食も細くなり、元気よく鳴くことも今ではほとんどなく、
本当に静かに余生を送っているという感じなので、そろそろこちらも覚悟をしないと
いけないかもしれないと思い知ることになりました。
ただ、なでてやりながら、自分では守っているつもりでも、実は逆に守られているような
気がするという不思議な感覚を覚えたのは確かです。
どうか少しでも長く生きて、我が家を見守っていてほしいと願うばかりです。
<2010.06.15 vol.119>