中島みゆき「縁会」2012〜3
2013年1月16日(水) 18:30開演 東京国際フォーラム ホールA



2011年に続いて2年ぶり、年初のコンサートが中島みゆき。

今回は、年末年始の休養空け初日ということで、さすがの中島さんも出足は、きちんと声が出ていなくてちょっと心配したが、時間が経つにつれ本調子に。
定番ともいえる不朽の名曲と新しいアルバムに入っている曲とが半分半分くらいという一風変わったセットリスト。ツアーの選曲は難しいと思うが、もうちょっとその「間」くらいの曲を入れてくれてもと思う。などというのは、勿論贅沢で、歌の魅力にいささかの衰えもない。
「3.11」後初のコンサートツアーということで、演奏曲に「時代」が入っていることでも感じられるとおり、全体としてそのことを意識した作りになっている。要所要所で、そういう趣旨の「メッセージソング」が入る。メッセージソングにかけては、この人の右に出る人はいなということを、あらためて強く感じさせるコンサートとなった。

ほとんど同い年の彼女が活躍を続けてくれるのはうれしい限りであり、是非、歌の力で我々の心を動かし続けて欲しいものだと思った。

紀尾井シンフォニエッタ東京第88回定期演奏会
2013年2月23日(土) 14:00開演 紀尾井ホール



さすがに半年近く前のコンサートの感想を書くのは少し難しい。「ジークフリート牧歌」を紀尾井がやるととてもいいなと思った記憶が残っているが、ブラ4のほうは、きちんとした記憶が無い。だから、ここには書かない。
でも、紀尾井のコンサートに行ってがっかりした記憶は一度も無く、この日も、帰路、充実した思いで歩いたことは覚えている。きっと、いつものように、落ち着いたいい演奏会だったのだろうと思う。

マリア・ジョアン・ピリス&アントニオ・メネセス デュオ・リサイタル
2013年3月18日(月) 19:00開演 すみだトリフォニーホール 大ホール



ピリスは、私にとって最もたくさん聴いた(CDで)ピアニストであり、最も安心して聴けるピアニストでもある。特に、彼女のモーツァルトは、私にとっては、リファレンスとなっている。
その彼女のロンドン響とのコンサートのチケットを持っていたのだが、ちょっとした事情で行けず、慌ててこちらのチケットを買った次第。でも、その方がよかったのかも知れない。余り高い席ではなかったが、結果的に、二階舞台袖で、ピリスと向かい合って音楽を聴くような場所だった。それがとても、親密感があってよかった。
一緒に弾いたチェロのメネセスは、初めてだったが、きちんと折り目正しい、実に気持ちのいい音楽をする人だ。ピリスにとてもよく合うと思う。
ピリスのピアノについては、特にいうことは勿論何もない。妙に居丈高にはならない、誠実でまじめで、しかし情感豊かなこういう音楽を大切にしなければいけないと思う。

フランス・ブリュッヘン指揮 18世紀オーケストラ演奏会
2013年4月4日(木) 19:00開演 すみだトリフォニーホール 大ホール



いつの間にか、ブリュッヘンも、そんな年齢になってしまったということか。初めてブリュッヘンのリコーダーを(レコードで)聴いたときの新鮮な驚きを、ついこの間のことのように覚えている。にもかかわらず、これが最後の来日公演とのことである。実際に車いすで登場するのを見ると、確かにそうなんだろうと思う。とても残念だ。

演奏は、そういう想いを割り引いても値打ちのあるものだった。オケと指揮者が、寄り添うように音楽を奏で、聴衆が、それをいとおしむように聴く。そう書くとなんだか、勢いのない演奏会のようだが、勿論そうではない。ただ、音楽を奏で、また、それを聴くということに関しては色々なスタイルがあるということだと思う。
対向配置(チェロ右)、7-7-5-5-3というこぢんまりした編成とは思えない豊かな音楽。ベートーベンの時代はこうだったんだろうという説得力のある演奏だったと思う。良いコンサートだった。前回のピリスの時といい、すみだトリフォニーホールは、こういうコンサートにむいていると思う。

サンクトペテルブルク交響楽団演奏会
2013年4月15日(月) 19:00開演 サントリーホール



今年に入って、忙しさにかまけて、コンサート記録を書くのをサボっていたので、3ヶ月ほど経って、思い出しながら書いている。
井上さんという指揮者は、私にとっては必ずしも相性はよくなくて、いつもその「わざとらしさ」のようなものが少し気になる。(といっても、まだ3回目だが…。そのうちの1回、去年京大のオケを振ったときは、すごくきちんとした指揮者だなと思ったのだが、アマチュアのオケを振るときとは、当然ながら、スタンスが全く違うのだろう。)
今回の演奏会でもそう思ったことは記憶にあるのだが、それ以上には、記憶に残っていない。オケも、これくらいのオケならあちらこちらにあるなと感じた記憶が強い。
ということで、忙しいさなかだったということはあるのだろうが、やはり、どこか物足らない演奏会だったのだろうと思う。(Facebookにも、「今一歩」という感想を記している。)

チョン・キョンファ ヴァイオリン・リサイタル
2013年6月11日(火) 19:00開演 サントリーホール



久しぶりにチョン・キョンファのヴァイオリンを聴く。もうあきらめていただけに、本当にうれしい。韓国の英雄だけあって、ホールも超満員。

そのチョン・キョンファのヴァイオリンであるが、はまるで武器のようだ。その鋭さは、初めて日本に来たとき(大阪国際フェスティバルのチャイコンをFM放送で聴いて衝撃を受けた覚えがあるのだが、今検索してもその記録は出てこない。記憶違いか?)から、いささかも衰えていない。プロコフィエフなど、まるで、決闘を挑まれているよう。
でも、それは人の心を打つ強力な武器でもある。フランクのソナタのあの素晴らしさ。楽器と演奏者は、あんなにも一体になるものか。たった一丁のヴァイオリンがあれほど高らかに歌うものか…。

それにしても、サントリーホールの沈黙と静寂の質は高い。だからこそ、あのような素晴らしい演奏が導き出されるのだと思う。演奏が終わったあとの必要にして十分な静寂。そして、心からのスタンディングオベイション。

ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団
(江戸川区総合文化センター開館30周年記念シリーズ)
2013年6月22日(土) 15:00開演 江戸川区総合文化センター 大ホール



江戸川総合文化センター開館30周年記念ということで、その大ホールへ。随分遠くまで来たが、ホールの周りはとてもきれい。さすがに、普段こういうコンサートはやらないホールだけに、独特の雰囲気がある。ホールの響きにもにもややクセがあるような気がする。

演奏はなかなか良い。
まず、上原さんのピアノ、とにかく音がきれい。ときおり見せる挑むようなフレージングにオケも精一杯応えていた。上原さんのピアノのリリシズムとダイナミズムのバランスも私は好きだ。
勢いに任せて突っ走る感じだったが、ベト7も好感が持てる。オケは、14型の対向配置。勢いのいい音がして気持ちがいい。フルートもオーボエも一番は女性(ベト7の時だけ)。二人の息のあったチャーミングなやりとりも印象に残った。

問題は、雰囲気。どういう集客をしたのか分からないが、何だか地元の演歌歌手のコンサートみたい。音楽を聞く人が広がるのはいいことだと思うし、そのために色々なやり方はあると思う。しかし、私は、どんなコンサートでも、一定の沈黙の質が確保できるようなレベルは維持して欲しいと思う。(それが、演奏者や他の聴衆に対しての礼儀ではないだろうか。)

合唱団ノヴァ・ヴォーチェ 第4回演奏会
2013年7月5日(金) 19:00開演 みなとみらい大ホール



カミさんが久しぶりに始めた合唱。その合唱団のコンサートを聴く。カミさんの歌うのを聴くのは40年ぶりということになるのだろうか。思えば長く生きてきたと思うし、その間色々なこともあったが、そこそこの人生でもあったとふと思う。
本題のコンサートだが、細かいことをいえばキリがないとしても、アマチュアの合唱団のコンサートとしてはとても高い水準と言えるのではないだろうか。オケもきちんとしているし、BCJの青木さんの指揮も、ソリストの皆さん方もとても良い。日本のアマチュアの合唱団(オケもかな)の水準は高いとよく聞くが、まさにそうだと思う。
あえて言えば、ソプラノ勢は、数が多いだけにもう少し揃った方がいいかなということと、男性陣が少ないなということか。

紀尾井シンフォニエッタ東京第90回定期演奏会
2013年7月27日(土) 14:00開演 紀尾井ホール



素晴らしい演奏会だったと思う。何度も聴いたKSTのコンサートの中でもベスト3に入る演奏ではなかったかと思う。(後半のロッシーニに関して)

ケルビーニのシンフォニーは、いくらきれいな旋律が多いといってもここまで形式感が乏しいとどうしても聞いていて散漫な感じがする。紀尾井の緊密なアンサンブルも、こういう曲には力が発揮しきれないように思う。(勿論これは私見です。)
後半のロッシーニは素晴らしかった。ペルゴレージのスターバトマーテルはよく聴くが、ロッシーニは余りきちんと聴いたことがなかったように思う。(探してみると我が家にも1枚CDがあったので、聴いたことはあったのだろうけど。)オペラみたいな宗教曲という先入観があったのだが、聴いてみるとまさにその通り。それが、この日の歌い手達と紀尾井の演奏にまさにぴったりはまったと思う。そして、それを引き出したのは、勿論指揮者の力だろう。歌の力と美しさが、あの小さい(この日はちょっと小さすぎたかも知れない)ホールに朗々と響き渡るのは素晴らしい経験だった。合唱団も素晴らしかったし、ソプラノのお二方をはじめとしてソリスト達も素晴らしかった。その歌を支えたKSTも素晴らしかった。
結果として、オペラではなく宗教曲になっていたと私は思う。余り聴く機会のない曲だけに、こういう素晴らしい演奏に巡り会えてよかった。

小澤国際室内楽アカデミー奥志賀
2013年7月31日(水) 19:00開演 東京オペラシティ コンサートホール



前半は、オーディションで選ばれた若手俊英達6組24人のクァルテット演奏。コンクールウィナーもたくさんいる腕自慢の若者達だが、やはり合わせものは難しい。臨時の組み合わせで練習時間も限られていただろうが、何かを表現するというところまではなかなか達していないと思ってしまう。クァルテットは、その点特に難しいと思った。勿論演奏者達が一番それを感じているだろうから、彼らには素晴らしい経験になっただろうと思う。印象に残る演奏者も何人かいたが、会田莉凡さんが断然光っていたように思う。彼女は、ソロでもやっていける逸材のような気がした。(去年の日本音コンの優勝者、各賞も総なめにしたと思う。)
後半は、24人揃っての弦楽アンサンブル。小澤さんの指揮の下、素晴らしい演奏となった。指揮者の力とはこういうものなのか、あらためて実感した。一人一人の持っている表現の幅を遙かに超える素晴らしい音楽が展開されたと思う。(チャイコフスキーファンの方には申し訳ないが)チャイコの弦楽セレナーデごときでちょっと目頭が熱くなったのにはまいった。各パート6人という編成(チェロの一人がコントラバスに回っていたが)で、どちらかといえば、内声部や低音部が良く響き、いつもとちょっと違うバランスなのも(チェロやヴィオラのパートも美しいので)新鮮でよかったと思う。学生達への指導ということもあるのだろうが、指揮をしながら小澤さんの声があんなに聞こえるというのも初めての経験だった。
終わるや否や、満場総立ち。通常のカーテンコールが終わり演奏者達が引き上げても拍手鳴り止まず、結局5回もステージに呼び戻されることになった。聴き手の小澤さんに対する思いがあったにせよ、確かにそれだけの値打ちのある演奏会だったと思う。演奏者達も、一生の想い出に残る演奏となったと思う。

サイトウ・キネン・フェスティバル松本2013
 ストラヴィンスキー:「兵士の物語」
 ふれあいコンサート II
 ラヴェル:オペラ「こどもと魔法」「スペインの時」
2013年8月27日(火) 14:00開演 まつもと市民芸術館・実験劇場
2013年8月27日(火) 19:00開演 ザ・ハーモニーホール
2013年8月28日(水) 19:00開演 まつもと市民芸術館 主ホール



追加発売でオペラ公演のチケットが取れたりしたので、2日間で3公演と今年は盛りだくさんのサイトウキネンとなった。夏の終わりの信州らしい快適な気候にも恵まれ、小澤さんも復活して、全体としても例年以上の盛り上がりで充実した2日間となった。やはり、小澤さんの力は大きい。ずっと先のことを考えると、少し心配と思うが、松本の人たちも皆同じようなことを仰っていた。

「兵士の物語」を見る(聴く)のは2年ぶり2回目だが、前回とはすっかり演出が変わりずっと劇的になった。石丸さん、首藤さんといった一流のキャストと若手気鋭の演奏家にも恵まれ演劇と音楽の融合という松本らしいコンセプトに沿ったとても楽しい催し物となった。今年の最終公演ということもあって、小澤さんと串田さんもご覧になっていたのが印象に残った。

ふれあいコンサートは復活した「ハーモニーホール」での演奏会。瀬戸内寂聴さんが来場されていてちょっとした注目を集めていた。一流の演奏家達による普段なかなか聴くことのできないプログラムの室内楽の演奏会。SKFならではと思う。どれも素晴らしかったが、私はドビュッシーのトリオが印象に残った。特に、フルートはいかにもフランスという感じで聴いていて本当に気持ちよかった。ドボルザークの弦楽五重奏も、東京カルテットの主力メンバーが加わった充実したものだと思うが、後半後半聴き疲れしたのは曲のせいかもしれない。

メインのラヴェルの二つのオペラは、「子供向き」とかなりの「大人向き」な好対照のオペラを一人の主役が歌いきるという大変な企画だった。また、グラインドボーン音楽祭と提携したという舞台装置も素晴らしく、これも松本らしい「舞台」と「音楽」が融合した見応えのあるものだった。小澤さん得意のラヴェルということもあり、精妙さにあふれたサイトウ・キネン・オーケストラの演奏も見事だったと思う。ただ、個人的には、「スペインの時」の楽しい音楽の方が心に響いたような気がする。(大人向きだったから?)前日からの瀬戸内さんに加えて、コシノジュンコさんの姿も見えたりして、会場も例年以上に華やかだった。

ほかではなかなか聴くことのできない音楽を一流の演奏家達でふんだんに聴くことができるのは松本ならではと思う。日本を代表する音楽祭としてずっと続いて欲しいと思う。(なんといっても松本の食べ物と飲み物は美味しい。)

〜NHK音楽祭2013 輝くオペラの巨星たち〜
ミラノ・スカラ座管弦楽団  〜ヴェルディ  ガラ・コンサート〜
2013年9月16日(月) 19:00開演 NHKホール



素晴らしい演奏会だったと思う。
私の思い込みかも知れないが、日本ではなかなか条件が整ったイタリアオペラを聴くのは難しいという気がしていて、普段はほとんど聴かないのだが、スカラ座のオケにドゥダメルという組合せに心惹かれて足を運んだ。
最前列ど真ん中という席が、音楽を聴く条件としてベストだったかどうかは別として、眼前すぐのところで歌う歌手の息づかいまで聞き取ることができるのは貴重な経験だった。また、左から第1、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、右にチェロという配置(多分14型)だったが、ヴァイオリンとチェロが掛け合うと顔を左と右に動かさなければならないほどの臨場感もこれまで聴いた演奏会で一番だったように思う。
それにしても、人間の声の力はすごい。(すぐ目の前だから特にそう感じたとも思うが、)とても人間業とは思えない声量で、しかも美しく、また、精妙。イタリアオペラだから「楷書」の演奏というよりは、自由で流れるように人の情感に訴えかける。言葉が分からなくてもあれだけ心を打つのだからすごい。まさに人間の作った最高の「娯楽」の一つだと思う。
それに寄り添うスカラ座のオケもまた素晴らしかった。「伴奏」という言葉の意味をこれほど高い意味で実現しているのを初めて見た。(METの時もすごいなと思ったけれど、ちょっと桁が違う感じ。)どう演奏すれば歌の力を引き出すことができるのか、一人一人の演奏者の身体に刻み込まれているのだろうと思う。まさにスカラ座の伝統の力だとも思う。一糸乱れぬアンサンブルというわけでは無いのだが、それが、また素晴らしい。オケだけで演奏された何曲かヴェルディのオペラの序曲、アンコールのカヴァレリア・ルスティカーナ間奏曲もまた素晴らしかった。歌うオーケストラとしてはウィーンのオケと(全くタイプの違う)両翼の最高峰なのだとあらためて実感した。
また、それを気持ちよく引き出すドゥダメルの指揮も素晴らしかった。30才を過ぎたばかりとは思えない練達の指揮振りは間違いなく次代を担う指揮者の一人だと思う。
ということで、こんなに素晴らしいのであれば、同じスカラ座で木曜日に行われる演奏会形式の「アイーダ」のチケットも取ればよかったと大いに後悔した。最初に書いたように、なかなか日本ではイタリアオペラの醍醐味を味わうことは難しいが、これを機会にもう少し聴いてみようと思った。次の機会はいつだろうか。

New Chamber Soloists演奏会
2013年11月2日(土) 14:00開演 大田アプリコ 大ホール



初めてこのオケを聴く。「ソロイスツ」を名乗るだけあってアマチュアとは思えない高い水準の演奏に驚く。すごいなと思って聴いていた。
それで十分と思うのだが、要所にプロのメンバーを配置するスタイルはどうなんだろうなとも思った。多分メンバーはとても勉強になるのだろうが、アマチュアらしいどこか自由な演奏の方がいいような気もちょっとする。私の余り贔屓にしていない「N響」のメンバーが入ったということもあるのだが、彼らなしの演奏を聴いてみたいとも思った。指揮は、「無難」なのだろうが、全体に演奏の楽しみのようなものが伝わりにくい感じがした。
演奏水準が高いので、思わず一言言いたくなってしまったが、勿論、素晴らしい演奏であることは間違いありません。

パリ管弦楽団演奏会
2013年11月5日(火) 19:00開演 サントリーホール



2年ぶりにパリ管を聴く。前回の「幻想」はこれまでに聴いた幻想の中でも最高の演奏だったと思うが、今回も素晴らしい演奏会だった。特になかなか聴く機会の無い「オルガン付き」は、おそらく生涯の想い出に残ると思う。
このオケは、なんと言っても楽しそうなのがいい。定評のある管は勿論、弦も含めてオケの性能も超一流と思うが、「音楽の楽しみ」が表に出るという意味ではこのオケが一番なのではないだろうか。先のスカラ座のオケも素晴らしかったが、ラテン系のオケには心から音楽を楽しみ、音楽に寄り添うというスタイルを特徴としているような気がする。日本のオケとは、その点が違うなといつも思う。このあと、オーストリア、そして、オランダとそれぞれの国を代表するオケを聴けるのがとても楽しみである。

日本総研グリークラブ 第18回定期演奏会
2013年11月9日(土) 13:30開演 東部フレンドホール



久しぶりにこの合唱団のコンサートにお招き頂いた。前回(10年近く前かな)に比べてとても進歩していたと思う。一つの会社に属する演奏チームは、忙しい社業の合間を縫っての練習だけでも大変だと思うが、更に加えて、年々進歩していくのは素晴らしいと思う。
演奏会のコンセプトやメッセージがハッキリしているのは、日頃のコミュニケーションの賜なのだろうとも思った。来年以降を楽しみにしています。

<ベートーヴェンピアノ協奏曲チクルス>
ウィーン・フィルハーモニー ウィーク イン ジャパン 2013
2013年11月12日(火) 19:00開演 サントリーホール



世界三大オケの東京集結シリーズ第一弾ということになるか。まずは、ウィーンフィルを聴く。
前回のドレスデンの時のティーレマンがどうもしっくりこず、今回はブッフビンダーにしたのだが、さてどうだっただろうか。
勿論、ピアノも含めて素晴らしい演奏とは思うが、一方で、「私たちはこれくらいの演奏は目をつぶっていてもできますよ」みたいな感じが終始漂う演奏会でもあった。聴衆は熱狂していたが、これであんなに騒いだら、ますます足下を見られるのではないかと、ふとそんな気がするコンサートだった。
この秋も、世界を代表する演奏家が大挙して来日しているが、この値段でこれだけ人が入るのは、そしてこの程度の演奏でこれだけ聴衆が熱狂するのは、どこか違うのではないかという気がしてならない。

ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団演奏会
2013年11月18日(月) 19:00開演 東京文化会館大ホール



世界三大オケシリーズ第二弾。(私は、どうしてもサイモン・ラトルが好きになれないのでBPOはパスしてこちらなのだが、)これは文句なし。順番をつけても仕方ないと思うが、RCOは世界一のオケだと私は思う。
ここまで来れば、もう演奏技術がどうこうということはなく、音楽で何ができるかということだと思うが、「至福の時」という言葉があるとすれば、まさにこのときだと思う。
「よく歌う」と言えばあまりに月並みになってしまうが、まさにこれが「音楽」なのだと、聴いていてしみじみ思う。弦も、木管も、金管も特別なことをするわけではないのだが、本当に自然で、本当にバランス良く音が一つに溶ける。家内が「この演奏を聴けば、この曲はもう他の演奏を聴かなくてもいいね」と言っていたが、まさにそんな感じである。
なお、本コンサートは皇太子ご夫妻が臨席された。席が真上だったのでお姿は拝見できなかったのが少し残念。(同日のBPOのコンサートは両陛下が臨席されたとのこと。)

この秋もたくさんのオーケストラを聴いた。特にイタリア、フランス、オーストリア、オランダと普段よく聴くドイツのオケ以外をたくさん聴いたが、いずれもそれぞれのお国柄を現して素晴らしかった。そして、同時に日本のオケはどうなのだろうとふと思った。
(ザルツブルクのN響の演奏を聴いたが、音楽への情熱で同時に招かれた、ドゥダメルのベネズエラの若いオケに随分負けていたように思う。常設のフルオケで世界に通用する日本のオケを育てなければ、こうやって、いつまでも高いお金を払って外国のオケを聞き続けなければならない。ニワトリタマゴ問題だが、何とか糸口をつかまないと…。)

中島みゆき 夜会工場 Vol.1
2013年11月25日(月) 19:00開演 赤坂ACTシアター



これまでの「夜会」全17回のいわばアンソロジーだが、その洗練された舞台といい、本当に気持ちよく音楽を奏でるその演奏者達といいこれ以上のコンサートがあるだろうかというくらいなのだが、なんと言っても中島みゆきさんが素晴らしい。コンサートや夜会を、もう何年も聞き続けているが、(多分)還暦を迎えてなお衰えを知らないというか、むしろますます凄みを増してくる彼女の歌の力には本当に圧倒される。歌が好きで、まるで歌の伝道師のような潔癖なスタイルは、おそらく誰にもまねができないと思う。
メッセージソング、ストーリーソング、ラブソング…本当に様々な歌があるが、どれをとっても人の心を打つ。その「打ち方」が時を降るにつれて優しく、しかし強くなっているような気がする。
中島みゆきのデビューアルバムからもう40年以上聴き続けているが、すごい人だなと改めて思った。

何十枚のアルバム、そして17回の夜会。これらの歌がどれも全く古びることなく蓄積されていくのはすごいことだと思う。そして、その集大成としてこの「夜会工場」の試みがあると思う。今回は、時間順のアンソロジーだったが(「初心者コース」とのことだった)次はどうなるのだろうか。

JVC25周年記念東京公演 ヘンデル 『メサイア』(初稿に基づく)
2013年12月14日(土) 15:00開演 昭和女子大人見記念講堂



カミさんの合唱団の公演を聴く。(これが2回目)
今回は、JVC他いくつかの合唱団とのジョイントなので大変な大編成の合唱団。身びいきもあるかも知れないが、とても良かったと思う。また、オケが真摯で清澄で透明でとても良かった。勿論、青木さんのBCJ直伝のきちんとした指揮もよかった。
この曲を聴くといつも思うのだが、ベースとなっているテキストが何とも難しく(キリスト教信者でない我々にとってということだと思うが)、結局宗教曲を聴くというよりは壮大合唱曲を聴くという感じになるのだが、この演奏は(良くも悪くも)まさにそういう感じにぴったりだと思う。(皮肉ではなく)おそらくテキストの意味をほとんど理解していないと思われる合唱大好きなメンバーの演奏会だから当然そうなると思うのだが、これが、まさに、日本の年末の風物詩そのものと思った。
出足は少しハラハラしたが、進むにつれてアンサンブルもそろい、ハレルヤコーラスが終わったところで「ブラボー」の声。終わったところでスタンディングオベイションもあったりして、なかなか聴き応えのある演奏会だった。

サントリーホール クリスマスコンサート 2013 バッハ・コレギウム・ジャパン『メサイア』
2013年12月23日(月) 15:00開演 サントリーホール



ほとんど2週連続で「メサイア」を聞く。あらためて、第九と並んで年末の風物詩となったと思う。
先週のカミさんのコンサートの先生達による演奏会だから、また、なんといっても日本が世界に誇るBCJの演奏会だから悪かろうはずはないのだが、何となく、少しお互いに「狎れている」感じがするのは気のせいか。
連続ということもあり、今回は、特にPart2以降は、きちんと英語のテキストに目を通しながら聴いた。全部が分かったとはとても言えないが、今までよりは少しは理解しながら聴いたと思う。それでも、「超あらすじ」みたいなテキストなので、これに気持ちを寄り添わせるのはやはり難しいと思う。
詰まるところ、我々日本人がこういう宗教曲を聴くのは、少し無理があるのだろう。勿論単に音楽として聴けばいいと思うのだが、それでは、筋書きを理解していないオペラを見るようなところもあるので、そのスタンスには迷うところである。仏教には、こういう「宗教曲」といえるようなジャンルはないし、他の宗教でも余り知らない。キリスト教の力の根源にこういうすぐれた音楽があるのではといつも思いながら聞いている。
これで、今年のコンサートも聴き納め。数えてみれば22回。去年の27回に比べれば少ないが、それでも大変な数。来年はさすがに減らさないといけないと思うが、行きたい音楽会に行けるよう、もう少し頑張ろうと思う。

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