上原彩子 ピアノ・リサイタル
2010年1月23日(土) 14:00開演 サントリーホール



以前、彼女のピアノ協奏曲(モーツァルトだった)の演奏を聴いて、一度ソロコンサートを聴いてみたいと思っていた。その期待に違わない演奏会だったと思う。

ハンガリー狂詩曲やラ・カンパネラといったいわばピアニストのキラー・コンテンツを最後に並べるプログラムは、自信なのか、気負いなのか、ショーマンシップなのかなどと思っていたが、そのどれでもないように感じた。
「ピアノの申し子」というと少し大げさかも知れないが、ピアノを弾くということが人生そのもの、息をしているのとそれほど変わらないという感じだろうか。
大きなリサイタルでは聴く機会の少ないYAMAHAのピアノだったということもあるのかも知れないが、リリカルで清潔感のある演奏はとても良かったと思う。出だしのバッハでさえ、いつも聞く音とは随分違うものだなと感じた。
滅多にピアノのソロコンサートなどは聴かないので、適切なコメントを書く自信は全くないが、こういうコンサートを聴いていると、ピアノが好きという人の気持ちがよくわかるような気がした。そして、私も、もう少しこういうコンサートを来てみたいなと思った。

ロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団演奏会
2010年3月2日(火) 19:00開演 ミューザ川崎シンフォニーホール



北欧のオーケストラは初めて聴く。
まるで「名曲コンサート」のようなプログラムということもあってか、ホールはほぼ満席。我々は、このホールで初めてP席(真後ろ側)で聴く。サントリーホールのP席は慣れているが、それに比べるとずっとステージに近い感じ。まるで、オケに一員になったような感じだ。(ちょっと落ち着かない。)
当オケは、「ノーベル賞のオーケストラ」として大変有名だが、そう思って聴くからかも知れないが、いかにも北欧の名門という感じがする。メンバーは、ほとんどスウェーデンの人のように見える。

チャイコフスキーのコンチェルトは、なんだか妙に作為的で、感情移入しきれなかった。その原因の一つに、聴く場所があるのかも知れない。大屋根の開く方向もあって、P席側はピアノを聴くにはふさわしくないとあらためて思った。ということで、アリス=紗良・オットさんの真価のほどはよくわからなかったが、それでも大変な美人ピアニストというのはよくわかった。(美人演奏家が多いのは偶然ではないだろう。)
「新世界」は、特に過不足ないオーソドックスな演奏。これはこれでよいが、せっかくだから、もう少し北欧の音楽を聴いてみたかった気がする。

紀尾井シンフォニエッタ東京第73回定期演奏会
2010年3月6日(土) 14:00開演 紀尾井ホール



当オケの生みの親ともいうべき尾高さんの指揮を久しぶりに聴く。これまで何回か聴いた印象は、私にとっては必ずしも良くはなかったのだが、それは当方の誤解だったあらためて感じた。コンマス(最初の曲はソロ)がご当地の人ということもあって、オール「スラブもの」のプログラムだったが、紀尾井の弦の音色に良く合っていたと思う。いつも同じ感想になってしまうが、聞き慣れたホールと聞き慣れたオーケストラは、とても安心感があって良い。
尾高さんも、最後のスピーチでこのホールのすばらしさを絶賛していたが、その通りだと思う。

東京ニューシティー管弦楽団第67回定期演奏会<創立20周年記念オープニングコンサート>
2010年4月9日(金) 19:00開演 東京芸術劇場大ホール



演奏家は、音楽は音楽をして語らしむのがマナーだと私は思う。そういう意味で、演奏前のくだらない長広舌は最低のマナー違反だと私は考える。
また、その演説の中身においても、楽譜の記法の背景にある「暗黙知」を、「伝統」と考えるか「手あか」と考えるかという陳腐な論争の蒸し返しだと思うし、さらに、テンポの問題にしても、奏法の問題にしても、既に語り尽くされたテーマだと思う。

小生は、いずれかの立場も否定するほど心は狭くないし、確たる信念も持たないが、いずれの立場に立つにせよ、まず、音楽として人の心に届くのが最低限の条件だろう。「ノンビブラート」でいくのなら(私はノンビブラートは好きだが)、ユニゾンが美しいのが絶対条件だろう。パーヴォ・ヤルヴィの演奏が人の心を打つのは、その演奏理念が美しいからでは決してない。演奏が、美しいからだ。
そういう意味で、本日の演奏会は、(理念ばかりで技量は伴わない)「アマチュアの前衛劇団」並の水準だと思う。(謙虚でない分、それ以下かも知れない。)どんな理念も、音に化体してこそ意味があるのが音楽であろう。

「今まで一度もピアニシモで弾いたことがありません」或いは、「今まで一度も弦楽器や管楽器で『歌』を奏でたことがありません」としか思えないオーケストラはひどいと思うが、それも、指揮者の珍奇な要求に対応するのが精一杯だったからでは無かろうか。

あんなに退屈で平板な第九を演奏できるのは、いずれにせよただならぬ能力だ。この指揮者は(カミさんの知り合いなので誠に申し訳ないが、)二度と聞かないつもりだ。

こんな演奏にブラボーをいう客も客だ。伝統を「壊す」のと「汚す」のは全く違う。こんな演奏にブラボーといえば、東洋の田舎者と笑われるだけだと思う。

森山良子 コンサートツアー2010〜2011 「Bunkamuraオーチャードホール」
2010年4月10日(土) 18:00開演 オーチャードホール



楽しくて、気持ちの良いコンサートだった。

初めて、森山良子さんのライブを聴いたが、寸分の隙のない、恐ろしくきちんとしたコンサートだった。普段CDなどで聞き慣れている、あの清んで透明な声はライブでも全く同じ。あのように美しい声で、「愛の賛歌」を歌うのは、かえって大変難しいと思うのだが、声の特質を良く活かした、心にしみる演奏だった。もちろん、他の曲も、それぞれに、素晴らしかった。

60歳を過ぎてもなおたくさんのファンを持ち、長く第一線で活躍をしているだけのことはあるとあらためて感心した。(観客の大半が我々の世代の、しかも夫婦連れが多かった。この世代を代表する歌い手の一人だと思う。)

BBC交響楽団演奏会
2010年5月12日(水) 19:00開演 NHKホール



さすが、「コモン・センス」と「ユーモア」の国のオーケストラ。中庸を得たとてもバランスの良い音楽だったと思う。大変な名人芸というわけではないが、どのパートも必要にして十分。(特に金管楽器のバランスがとても良い。管楽器のパートに女性が多いのも特徴か。)

久しぶりに、イギリスのオケを聞いたが、さすがに世界最高の「音楽消費国」だけあると思う。コンサートとはかくあるべしという見本のようなコンサートだった。

さらに、神尾真由子が素晴らしかった。こんなに遅いテンポで大丈夫かなと思ったのは出足の一瞬だけで、あとは、完全に彼女の奏でる音楽に引き込まれてしまった。今まで聞いたたくさんのヴァイオリン協奏曲の中でも白眉だと思う。特に、音色のすばらしさに驚いた。ヴァイオリンたった1本であれだけのことができるのだとあらためて感じた。さらに、弾き姿や動作までもが一体となって音楽を作っていることにも感心した。彼女には、このままもっともっと大成して欲しいと思う。

聴衆の熱狂に応えてアンコールが3曲。スラブ舞曲中心だったが、そのノリの良さはまさに「プロムス」だった。一度本物のプロムス・ラストナイトを聞いてみたいものである。

スウェーデン放送交響楽団演奏会
2010年6月15日(火) 19:00開演 東京オペラシティ コンサートホール



2006年10月に同じ会場、同じ指揮者別のオケで同じ曲(モーツァルトのト短調交響曲)を聴いた。(その時のオケは、マーラーチェンバーオーケストラだった。)こういうケースは初めてのような気がする。
時間の経過とオケの違いとどちらが大きいのかはわからないが、その時の印象に比べれば、とても自然になったような気がする。2006年も熱演だったが、いささか強引ではないかと思ったが、それに比べれば、とても素直に聴けるような気がした。もちろん、独特の個性はあるが、これならハーディング流として十分理解できると思う。
「世界最高の合唱団」などというキャッチコピーがついたりしていたコーラスは、聴く位置のせい(ほとんど真横だった)か、タイミングが微妙に合わない直接音が耳についたような気がする。このタケミツホールも残響は長めのホールだと思うが、やはりこういうコーラスは教会のような長いホールトーンの会場で聴きたいと思った。(それに、レクイエムの後半は、曲そのものにどうしてもちょっと違和感がある。)
先日、ロイヤル・ストックホルムを聴いたところなので、スウェーデンづいているが、オケとしては、ロイヤル・ストックホルムの方が少し上かもしれない。放送局のオケとしては、先日聴いたBBCの方が遙かに洗練されているように思った。
ということで、充実したコンサートではあったが、ちょっと不完全燃焼という感じも残った。

紀尾井シンフォニエッタ東京第75回定期演奏会
2010年6月25日(金) 19:00開演 紀尾井ホール



とても意欲的なプログラムで、なかなか良かったと思うのだが・・・。

現代音楽を聴くといつも思うのだが、こういう音楽を私が余り聴きたいと思わない理由は。

.私の鑑賞力が不十分で、こういう音楽の良さを理解できないだけなのか?
.そもそも、音楽はほとんど20世紀前半までに極め尽くされて、それ以後あまり「名曲」を書く余地が残っていないのか?(すなわち、たった12音しかなくて、しかも「演奏」という中間的な媒体を必要とし、ロジックよりは快不快(昔流にいう右脳)に大きく左右される「音楽」という表現手法そのものの持つ限界か)
.たまたま、まだ時代の選択を経ていないだけで、あと何年もすればこの時代にもたくさんの名曲が生まれたということになるのか?

私は、いつもだと思っているのだが、こういう演奏会を聴くとなのかも知れないなと感じることもある。(でも、やはり、わざわざこれらの曲を聴きに行くことはきっとないが。)

最後の「ジュピター」は、カミさんに言わせれば「平凡」ということなのだが、(まあ確かにその通りだが)それはそれで一つのスタイルだとは思う。

最後に弦楽器のピツィカートだけの洒落た曲がアンコールされたが、こういう曲を聴いていると紀尾井ホールの響きはきれいだなとあらためて思った。

サイトウ・キネン・フェスティバル松本 2010 オーケストラコンサート Aプログラム
2010年8月23日(月) 19:00開演 松本文化会館



小澤さんの復帰コンサートとなるはずだった公演のチケットは、瞬間蒸発して取ることができず(もし聴けたとしても7分間になってしまったわけだが)、それならばと、若い指揮者の公演を聴くことにした。
前半の4番のピアノ協奏曲は、大人しいというか、無難な演奏だったが、7番の交響曲の方は、いやはや大変な盛り上がりで、ちょっと驚いた。「振りたいように振りなさい、私たちがついっていってあげるから・・・。」とそんな感じで、何とも勢いのいい演奏だった。ただでさえノリのいい曲なので、ちょっと今まで聞いたことのない演奏だ。まあ、悪くはないと思うが、いささか行き過ぎかなという感もなきにしもあらずである。ただ、若い才能を暖かく歓迎しているというのはよく分かったし、その仲間意識もとても気持ちのいいものだったので、まあよしとしよう。この指揮者(ブザンソン優勝という輝かしいキャリアの持ち主だが)、将来どうなるのか、大変楽しみでもあり、興味もある。
「彼の指揮は、まだデビュー間もない頃松本で聴いたんだよ。」と、いつか人に自慢できることを願っている。

サイトウ・キネン・フェスティバル松本 2010 ふれあいコンサート II
2010年8月24日(火) 19:00開演 ザ・ハーモニーホール



いつも一泊で忙しいので、今回は、松本に二泊することにしたので、この公演を聴けることになった。
落ち着いたプログラムだし、演奏者たちも腕利きの人たちばかりなので、とてもいいコンサートだったと思う。この、ハーモニーホールというのには初めて行ったが、郊外の木々の緑の美しいホールだった。
特に、趙靜という人のチェロは目立っていたように思う。(端正な容姿のせいもあるのだろうが。)
中国からは、これからどんどん素晴らしい演奏家が出てくるのだろうなとあらためて思った。

東芝フィルハーモニー管弦楽団 第31回定期演奏会
2010年10月30日(土) 14:00開演 ミューザ川崎シンフォニーホール



気象予報士の仲間が、このオケのヴァイオリンの中心メンバーということで、お誘いを頂いたのだが、(今までも、アマチュアのオーケストラを聴く機会はたくさんあったが、)企業内のアマチュアオケというのは初めてである。(以前、ボッシュのオケを聴いたが、これはドイツのオケなので別格として。)
普通のアマチュアのオケに比べて、練習時間も限られるだろうし、何よりメンバー集めがとても大変だと思うが、それを感じさせない立派な演奏だった。「東芝」という企業の伝統と文化が為せるワザなのだろうと思う。うらやましい限りだと思った。
東芝にゆかりのある川崎での開催ということもあるだろうが、あの大きなホールをほぼ満席にする力も大したものだと思う。

NHK音楽祭2010(NHK交響楽団)
2010年11月6日(土) 16:00開演 NHKホール



ずっと昔定期会員だったのだが、その後、かなりご無沙汰をしているN響を、久しぶりにちゃんと聴いてみようと思って、今回は、NHK音楽祭でこの公演を聴くことにしてみた。
日本を代表するオーケストラだけあって、演奏は、とてもよかったと思う。特に管楽器のソリストたちは、日本の他のオケに比べても際だってうまいと思う。
が、何となく、心に響かない気がするのは何故だろうか。カミさんが「華がない」といっていたが、確かに中年男性中心のメンバーを見ているとそんな気がする。男性であろうが、女性であろうが、若かろうが、そうでなかろうが音楽には関係ないといえばそれまでだが、良く言えば完成度中心、悪く言えば権威主義的な文化を感じるのは気のせいだろうか。
それと、毎回書くが、私は、NHKホールの音と、NHK音楽祭の観客との相性が悪い。今回は奮発してSS席だったのでとても良い席だったのだが、それでも、前週のミューザ川崎の音の方がずっとよかった。とにかく、音が安っぽい。それに、例えばブラームスの3番のシンフォニーが静かに終わったその静寂を切り裂くような「ブラボー」は、どうしても許すことができない。
プレヴィンもいい指揮者だと思うが(以前はウィーンフィルを率いて来日したときに聴いた)、歩くのにも不自由そうなご老体をわざわざ「主席客演指揮者」などというポジションでお招きしなければならないほど、指揮者は払底しているのか。何度も客席に呼び戻すのが気の毒で、拍手を思わず手控えてしまいながらそう思った。
日本のこれからの音楽界のためにも、指揮者も、団員も、もっともっと若くて多様なメンバーを加えたらいいと思うのだが、如何でしょうか。
(今回は、1階席中央前よりなので、席は申し分なかったのだが・・・・。)

NHK音楽祭2010(イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団)
2010年11月10日(水) 19:00開演 NHKホール



大変残念なことに、仕事の都合で遅刻して、前半の「田園」を聴き逃した。家内曰く「とてもきれいだった。」とのこと。確かにその通りだっただろうと思う。「田園」が終わったところで会場をのぞいたのだが、前半は、普通の2管編成だったようだ。
後半の7番は、木管は複2管(倍管)編成。正確に記憶しているわけではないが、これだけ何回もベト7を聴く機会があるが、複2管編成は初めてのような気がする。弦も、16、14、10、10、8と少しユニークな構成。配置も、外声が左の両翼配置。また、ユダヤ教の帽子をかぶったプレイヤーもたくさんいて、色々と思いのこめられたスタイルなのだろうという気がした。
演奏も、今まで聞いたベト7とはがらりと変わった、端正でありながら、大変に豊麗で実に聞き応えのあるものだった。「世界一の弦」などというキャッチフレーズがついているが、確かにその響きは独特で、ヨーロッパのどのオーケストラとも異なっているような気がした。一番近い形容詞は、「美麗」だろうか。このつややかな音色は、一度聴くと忘れられないような気がする。団員は、どちらかといえば若い人が多いし、女性もたくさんいるので、伝統がきちんと継承されているのだろうなと感じた。メータの指揮も、実にそのオケの特長をうまく引き出したもののように思う。全体として、妙にテンポを揺らさず、第2楽章のテンポも「アレグレット」らしく適度に早く、それでも、豊かな情感を失わない、さすが一流という感じの指揮だった。
3日前に聴いたN響が、妙に没個性、没多様性という印象だったのと対照的である。クラシック音楽の原産国ヨーロッパ以外のオーケストラのあり方としとても良い見本のような気がする。
(3階席左側最前列だったが、このよく響くオーケストラなら、この席でも、十分だった。)

紀尾井シンフォニエッタ東京第77回定期演奏会
2010年11月27日(土) 14:00開演 紀尾井ホール



KSTのベートーベンシリーズ。残念ながら、1回目は義父の一周忌と重なり聴けなかったので、今日が初めて。
今回は、いつも以上に、小さな編成。弦は、低い方から、2、3、4、6、6。管も、ホルンも含めて2管。しかも完全なノンビブラート。先日のイスラエル・フィルと正に対照的だが、こちらはこちらで素晴らしかった。田園は管楽器が活躍する曲だが、それもとても良かった。
ほとんど一人一人の音が聞き分けられるのではないかと思うくらいの澄んだ音色で、ビブラートがかからないオケの音が、とてもベートーベンにふさわしいというのもよく分かった。コープマンの指揮は、例によって棒は使わず、全身を使って表現する躍動感にあふれるもので、見ていて楽しい。これも、先日のメータの端正な指揮ぶりと対照的。(もっといえば、その前の、ほとんど身体を使わない(使えない)プレヴィンとも対照的。)しかし、ベートーベンは、さすがに奥行きが深い。どのようにやっても、素晴らしいものは素晴らしいし、美しいものは美しいと、当たり前のことに、あらためて感心した。

ドレスデン聖十字架合唱団&ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団
2010年11月30日(火) 18:30開演 東京オペラシティ コンサートホール



素晴らしかった。
少年合唱というのは、ここまでできるのかと驚いた、というより、感激した。800年の歴史と伝統の為せるワザといえばそうかもしれないが、それにしてもすごい。3時間にならんとする大曲を、一糸乱れず歌いきってしまった。
このホールのホールトーンのは美しいと思う。今回は、3階席正面の最後列だったが、ひとかたまりになった音が、ホール全体に響くのがよく聞き取れたように思う。このホールと合唱の響きはとても良くあう。
森さんをはじめとする、ソリストたちもとても気持ちよさそうだった。ややドラマティックな指揮振りだったが、これはこれで「メサイア」らしいということだと思う。
アンコールがもう一度ハレルヤコーラスという大サービスで、特に3階席は総立ちの拍手だった。(ということは、3階席の音はやはり良いのかも知れない。)

ドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団
【生誕200年記念】 シューマン交響曲全曲演奏会
2010年12月3日(金) 19:00開演 東京オペラシティ コンサートホール



         

もう音楽を聴き始めて40年以上になるが、シューマンのシンフォニーを生で聴いた記憶がない。どちらかといえば、好きな曲が多いので、避けてきたわけでは決してないのだが・・・。
ということで、記憶に残る限り、初の生シューマン・シンフォニーということになるが、これが素晴らしかった。特に前半の4番のシンフォニーは、こんなに素晴らしい曲だったのかと驚いた。聴衆の熱狂からして、そう思ったのは私だけではないと思う。(もちろん「春」も素晴らしかった。)
ヤルヴィを聴くのは多分3回目だと思うが、聴く度に素晴らしいと思う。やりたいことがはっきりしていて、それがきちんとオーケストラに伝わって、そしてオケも、それを一丸となって全身全霊でやる。当たり前のことといえば、それまでだが、それをこんなにもきちんとできるのは、指揮者の力だと思う。例によって、テンポもリズム感も実に快適で説得力がある。そして、歌うところは本当に美しく歌う。まさに、これが「音楽を聴くよろこび」だと思う。
今週2回目のこのホールだが、今回は、1階席10列目のやや右より。前回と違って、位相特性の整った高級オーディオセットで聴いているような席だ。どの楽器がどこからなったか、手に取るように分かる。3階席とは、全く違った音でとても面白いと思った。どちらも素晴らしいが、値段を考えれば、3階席でも良いかなと思ってしまった。
低い方から3、6、6、8、10という弦の編成は、「カンマーフィル」の名にふさわしい。外声が左の両翼配置は、最近よく見かけるが、シューマンのシンフォニーは、弦楽器の掛け合いのようなところが多く、この配置は効果的だと思う。管はもちろん2管だが、なぜか、ホルンは5人いたように思った。全体が若くて、皆音楽を楽しんでいるのがよく分かる感じだった。最初と最後に、全員で客席に向かって一礼するのを初めて見たが、わざとらしくはなくて、とても気持ち良かった。

         
ブルーメンフィルハーモニー第34回定期演奏会
2010年12月12日(日) 14:00開演 第一生命ホール



ブルーメンフィルを聴くのは、前々回の定期演奏会以来、ほぼ1年ぶり。アマチュアとはとても思えないといつも思うが、今回は特にそう感じた。
指揮者は、今を時めく山田和樹さん。ちょうど、サイトウキネンでこの夏聴いたところだが、彼の力は、このオケの方がよく分かったように思う。サイトウキネンのときは、大変な熱演ではあったが、やはり、ちょっと位負けしていた感があるが、今回は、実に決まっていた。その棒の力で、ブルーメンフィルは実力以上のものを引き出されていたように思う。オケと指揮者は、プログラムによれば「相思相愛」とのことだが、聴くとその意味がとても良く分かる。ブルーメンフィルにとっても一世一代の名演奏だったのではないだろうか。
マーラーは、アマチュアのオケにとっては、メンバーの数といった面でも大変な難曲と思うが、そのハンディを感じさせない演奏だった。指揮者とオケのパートナーシップという面では、アバドとルツェルンにも負けないのではないかとそんな感じがした。
圧巻はシューベルト。この曲は他でも何回か聴いた記憶があるが、今まで聞いた中で一番良かったように思う。歌にあふれ、若々しい情熱のこもったとても心に響く名演奏だった。
それぞれ、本職を持ちながら、この演奏レベルを維持していることに頭が下がる。

第一生命ホールというのははじめてだが、ホールトーンがとても心地良いと感じた。

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