紀尾井シンフォニエッタ東京第68回定期演奏会
2009年2月14日(土) 14:00開演 紀尾井ホール



今年も、KSTが最初のコンサートとなった。

今回は、タクトが紀尾井ゆかりのヘンヒェン、曲目が、今年メモリアル・イヤーのメンデルスゾーンの大曲「エリア」となれば、気合いが入るであろう事は予想できたが、その期待に違わない力演であった。

メンデルスゾーンの代表曲の一つでありながら、なかなか聞く機会のない曲で、小生ももちろん生で聞くのは初めてだが、字幕付きということもあり、また、いかにもメンデルスゾーンらしくハーモニーもメロディーもシンプルで美しいということもあり、2時間を超える大曲ながら、片時も退屈せずに聞くことができた。
(とはいえ、この排他的な宗教観が中心の曲の内容にはどうしても違和感があるが・・・。)

オケはいつにも増して小編成(舞台も合唱の大人数が入って狭いからか)だが、弦はもちろん、1管だけの木管、特にオーボエがとても良かった。独唱者(人数を節約して4人)も過不足の無い実に整った演奏でとても良かったが、何といっても合唱の実力が素晴らしかったように思う。(途中で少しだけ歌ったボーイソプラノもきれいだった。)合唱のパートリーダー達は、時に、人数の足りない独唱陣のサポートに回ったりしていたが、ソロでも十分聞くに堪える人たちだということがよく分かった。

今年は、生誕200年ということで、あちらこちらでメンデルスゾーン関連のプログラムが作られると思うが、この年に、この曲を聴くことができたのは、とても良かったと思う。
調べてみると、ベルリン・フィルもメンデルスゾーン関連のプログラムを組んでいるが、5月には、3日間小沢の指揮でこの曲をやるらしい。こちらも聞いてみたいものである。(最近は「デジタル・コンサート」という仕掛けで、コンサート・ライブがネットでも聴ける。)

ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン(La Folle Journee au Japon)
「熱狂の日」音楽祭2009 〜バッハとヨーロッパ〜
2009年5月4日(月)〜5日(火) 東京国際フォーラム



ゴールデンウィーク恒例のラ・フォル・ジュルネ。今年は、2日間9公演の強行軍となった。今回は「バッハ」がテーマだが、バッハの音楽というのは、一部を除いて余り聴く機会が多くはない。そこで、この機会にと思ったために、こんなスケジュールとなった。(かみさんには、2日目の午後だけ付き合ってもらった。)全体としては、良い演奏が多かったと思う。(少し長くなりますが、個別に感想を書きます。)

まず、最初の村治佳織さんのギター協奏曲(チェンバロ協奏曲の編曲)。村治さん用に特別にアレンジしたものらしい。弦(Vn、Vla)が弱音機をつけていたり、村治さんの後ろにスピーカーが隠れていたり(多分音を補強していたと思うのだが)でギターの音量を補う工夫がされていたし、また、テンポも、早い楽章でも感覚的にはアレグレット止まりで、やはり、指使いのハンディを補っていた。だから、原曲との比較は難しいが、自分の指で音を出す楽器なので、はるかにニュアンスは多様になる。まるで、「息をする」チェンバロ協奏曲という感じで、良かったと思う。バックは、定評のあるポーランドの弦で安心感があった。デビュー当時の「美少女演奏家」から、今や「きれいなお姉さん演奏家」になった村治さんの演奏に聴き惚れつつ、こういうポジションというのは、きっと気苦労が大変なのだろうなと、思わずよけいなことを考えてしまった。

ゴールドベルクは、2日間で3回聴く。私にとってこの曲は、(いささか大げさに言えば)運命の曲であり、だから、聴くのに力が入る。
シャオメイのピアノは、音を聴くというよりも沈黙を聴くという感じ。虚空に消えていく音が見えるような魂のこもった演奏だった。25変奏など絶品で、これは人類が今までに書いた最高の音楽の一つであり、「孤独」を音にするとこうなると思えるほどだった。文化大革命に翻弄された彼女の運命を重ねて聴くからよけいにそう思うのかもしれない。(NHKテレビでたまたま彼女が語っているのを聴いたが、ゴールドベルクは、彼女にとっても運命の曲なのだ。)だから、26変奏からが和解と許しの音楽のように聞こえたりもする。
次の弦楽三重奏によるゴールドベルクは、シトコヴェツキ版。このバージョンはCDで聞き慣れてはいるが、生で聴く(見る)とさらによい。3つの楽器で弾きわけると、とても曲の形がよくわかる。15変奏で一段落して、25変奏まで階段を上って、そして解決して着地する感じがとても良かった。
ところが、最後のベレゾフスキは最悪。こういう表現は余り使いたくないが、「金を返せ」という感じ。色々な演奏があってもいいとは思うが、それでも、これはないと思う。何より、こういう曲を弾くなら楽譜など見ずに弾けと思うのだが、如何だろうか。いずれにしても、あんな退屈な演奏は、観客も、音楽も愚弄していると思う。(テクニックを見せるというほど切れがあるわけではなく、内面は恐ろしく空虚で、忠実に繰り返しを弾いているが、曲の構造はさっぱり伝わらず、表現の意図もわからず、ペダルで飾り付けられた「できの悪いリストの曲」のようだった。どんな曲であれ、彼の演奏はもう二度と聴きたくない。)

寺神戸さんの珍しい楽器は、これもNHKのテレビで少し見て、面白そうなので聴きにいった。たしかに、指使いはとても楽そうだし(ほとんどが第一ポジションで弾けるみたい)、弦の数が一本多いので、ダブルなんかも楽そうで、なるほどと思った。でもやはり、チェロにはとてもかなわない。(比べる方が無理なのだと思う。)

バッハのカンタータは、フランスのアンサンブル。手間をかける独特の調弦方法がなるほどと思わせる透き通ったアンサンブル。弦は、ほぼ1本に聞こえる。聴いた瞬間にフランスだな思わせる柔らかなメロディーラインも独特で、心にしみるような演奏だった。

スターバトマーテルは、期待通りきれいな曲だった。バーバラ・ヘンドリクスの少し独特の声がうまくアンサンブルするのかと心配したが、実にうまくとけ込んでいた。アンコールで、最後の一番きれいなところをやったが、これがまた良かった。(アンコールの方がずっといいということが時々あるように思う。力が抜けるせいだろうか。)コンサートの直前に、「エマージェンシー」と誰かが叫び少し驚いた。(3階席の出来事なので見えなかったが)誰かが具合悪くなったらしい。始まりは遅れたものの落ち着いた対応で良かった。

4台のヴァイオリンと4台のピアノの協奏曲の連続演奏は、こういう音楽祭ならではだろう。これは、理屈抜きで楽しかった。ただ、プログラムが変更され(「春」が追加になった)、その分、ヴァイオリンの独奏者変わったのは、きっと何かあったのだろうと思う。(あの一人は、折り合いが悪そうだ。)何らかの説明が欲しかった。(僕が見落としているだけなのかもしれないが。)

最後は、BCJのヨハネ。これは、何も言うことはない。こういう曲の演奏をを評価する力は僕にはないが、個人的には、世界最高のバッハの一つだと思う。鈴木さんの音楽に対する志と努力には、心から敬意を表したい。(CD聴いていたり、テレビで見たものよりずっと迫力があった。)

紀尾井シンフォニエッタ東京第69回定期演奏会
2009年5月16日(土) 14:00開演 紀尾井ホール



指揮者がヴァレーズということもあり、全曲フランスゆかり(アンコールはシベリウスの「悲しきワルツ」だったが)のもの。ハイドンを除いて初めて聞く曲ばかりなので、コメントは難しいが、何とも優雅なコンサートだったと思う。

以前は、KSTの木管の音に少し納得いかなかったときもあったが、最近はほとんどそういう感想は抱かなくなった。が、それにしても、今日は素晴らしかったと思う。指揮者の力もあるのだろうが、いかにもフランスものらしい粋な響きだった。ということもあり、聴いた曲はどれも素晴らしかった。

コンサートのあと、メンバーとの交歓会なる催しに参加した。毎年案内を頂いても、一度も参加していなかった
のだが、たまたま小生の誕生日ということもあって参加してみた。
当日のコンサートミストレスの玉井菜採さんやハープの篠崎史子さんを始めとして団員の方々と随分お話しした。皆さん、とても気さくに話しに応じてくださり、驚いた。KSTの暖かい雰囲気もよくわかった。(それは演奏にも顕れていると思う。)町田事務局長からも、直接、色々とお話しを承った。機会があれば、是非また参加したい。

モスクワ放送交響楽団演奏会
2009年6月4日(木) 19:00開演 サントリーホール



久しぶりのサントリーホールP席。4000円という申し訳ないようなお値段の席だが、とてもよかった。(私はこの席が結構好きだ。)
特に1階席は「冠コンサート」らしい雰囲気で、拍手のタイミングがおかしかったりしたが、そのおかげで、このコンサートがあるわけだから、贅沢は言わない。

演奏は、さすがに正式名称に「チャイコフスキー」の名を冠するオーケストラだけあって、他の追随を許さないという感じの演奏だった。私なら(というか大抵の指揮者は)こうは振らないという独特の演奏で、言ってみれば、美空ひばりの演歌のようなところがあるのだが、しかし、血で結ばれたオーケストラの凄さというか、全く一糸乱れず、この纏綿たる演奏をやり遂げてしまう。
聞き慣れた「白鳥」も、(編曲のせいはあるにせよ)独特の緩急で一瞬違う曲かと思ったりする。フェドセーエフは、私が音楽を聞き始めてしばらくしてこのオーケストラの指揮者になったと思うのだが、ロシアのオーケストラは、結構指揮者を変えないところが多い。それが、また、こういう演奏を生み出すのだと思う。どのオーケストラも均質化する中、こういうオーケストラには頑張ってもらいたい。
両翼配置で内声が右というのは、昨年のサンクトペテルブルクとよく似た配置(コントラバスの一番奥一列も確か同じ)。この二つのオーケストラは、ライバルだと思うが、違いより、似ている点の方が目立ったような気がする。(配置然り、楽員がほとんど全員ロシア系と思われる点も然り。ただし、平均年令は、モスクワの方がずっと若そうだ。)

ロシア音楽の伝統を強く感じさせる演奏会だったが、ずっとこういうものを守り続けているロシアの力は侮れないと思う。

サイトウ・キネン・フェスティバル松本2009
2009年8月28日(金) 19:00開演 長野県松本文化会館



今年も、サイトウキネンを聴く。今年は、メインの「戦争レクイエム」。オーケストラコンサートとこちらと少し迷ったが、こういう曲を聴く機会はもう無いかも知れないと思ったので、こちらにした。

特にコメントをつける必要のない素晴らしい演奏だった。これほど心のこもったこの曲の演奏は、この地球上で今までそう何回もなかったのではないかと、そんな気がする。

この曲は特別な曲で、作曲者自身の指揮による演奏が鮮明に残されているのみならず、リハーサルの風景まで克明に記録されている。この曲を指揮する以上、この作曲者の意図をふまえないわけにはいかないのだと思う。にもかかわらず、作曲者の残した演奏とは全く違った素晴らしい演奏だったと思う。(もちろん、録音と生演奏を比較するのに無理があるのだが。)一つ言葉を挙げるとすれば「透明な」或いは「清澄な」という言葉だろうか。作曲者も指示しているように、「常に整っている」ことは必ずしも必要とされないのだが、だから、コーラスはときに荒々しくさえあるのだが、それでもしかし、心が一つになるとこういう演奏になるのだろうと思う。

例によって、松本の街のホスピタリティは今年も素晴らしかった。事情が許す限り毎年参加したいと思う。だから、小澤さんには、くれぐれも健康に留意して欲しいと願う。

ブルーメンフィルハーモニー第32回定期演奏会
2009年9月22日(火) 14:00開演 杉並公会堂



久しぶりにブルーメンフィルハーモニーの演奏会を聴く。

相変わらず、とてもアマチュアとは思えない見事な演奏だ。しばらく聴かなかった間にますます進化しているようだ。ボッシュさんの指揮は、KSTで3年ほど前に聴いた(「モツレク」をラクリモーサの8小節目でやめるというこだわりの演奏会だった)が、いかにも「東ドイツ」という感じのオーセンティックな演奏はここでも健在だ。特に、最後のシューベルトの2番は素晴らしかった。(この曲をプログラムの最後に持ってきた理由がよく分かった。シューベルトの若い番号の交響曲は好きで、この曲も時々CDで聴くが、こんな良い曲とは思わなかった。大ハ長調のシンフォニーをずっと若々しくしたような曲だ。)
ボッセさんの指揮振りは、分かりやすいとはとても思えないが、それでも一糸乱れぬ演奏だった。多分指揮者なしでも弾けるのではないかという一体感のある演奏だ。仲間意識の強いアマチュアオーケストラならではと思う。

このオーケストラのますますの発展を期待します。

NHK音楽祭2009(パーヴォ・ヤルヴィ/シンシナティ交響楽団)
2009年10月23日(月) 19:00開演 NHKホール



楽しいコンサートだった。

「新世界」も広い意味での「アメリカ音楽」といえなくもないわけで、そう考えれば、これは、オールアメリカ音楽プログラムといえる。今回のNHK音楽祭は、「ふるさとの音楽」というテーマなので、ぴったりのプログラムである。
実は、アメリカ音楽を生で聴くのは、ほとんど初めて、さらに、シンシナティ交響楽団も初めてなので少し心配していたのだが、実にきちんとしたすてきなコンサートだった。目下売り出し中のヤルヴィの指揮振りもさすがにとてもスマートだった。

このオケは、いわゆる「超一流」ではないのかも知れないが、聞かせどころを心得た実に暖かい、しかし、スマートでリズムのきちんと整った小粋なオケだった。(このしゃれた演奏は、ほとんど「一心同体」のシンシナティポップスオーケストラとしても培われたものなのだろう。)
例えば、新世界の「アメリカの旋律」の部分などいずれも心持ちテンポを落とし、心にしみるような歌わせ方をするのがなかなか良かった。(作為的に聞こえないところがいい。)また、バーンスタインの演奏に至っては、「これぞアメリカンミュージック」ともいうべき爽快感が漂った。

今まで、少し心の中でアメリカ製のクラシックを軽んじていたのだが、これは大間違いであることも、恥ずかしながらよく分かった。

NHK音楽祭2009(リッカルド・シャイー/ライプチヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団)
2009年11月4日(水) 19:00開演 NHKホール



これは評価の分かれるコンサートかも知れない。演奏が終わったとたん、熱狂的なブラボーコールが起こったが、私には、それは、「巨人」が人を熱狂させるために作られたような結びを持っているからであって、演奏が素晴らしかったからではないように思えた。(後記 注)

もちろん、天下のゲヴァントハウスだからうまいと思う。天下のシャイーだからうまいとは思う。

アームストロング少年は、17才という年齢を考えれば、大したものなのかも知れない。しかし、色々な意味で難しいと思われるバッハのコンチェルトをなぜわざわざ彼を連れてきて弾かせるのか・・・。(アンコールのシューベルトも含めて、結局力のほどはよく分からなかったように思う。)

例によってNHKホールの響きが悪かったのかも知れない。(席は、左側の方の前から5列目で、直接音中心となるが、先日のシンシナティと左右対称でそれほど悪い席ではないと思うのだが・・・。)それにしても、どうして、こんなに音楽がバラバラに聞こえるのか・・・等々。

皮肉なことに、あらためて、マーラーのシンフォニーがどういう複雑な構造をしているのか、よく分かった。そして、これが、交響曲という分野の「終わりの始まり」の曲であることも。また、「世紀末」がどういう世の中であったのかさえもが分かるような曲であり、演奏であった。
カミさんが、「楽譜を見ながら指揮をするのはうっとうしい」と言っていた。指揮者には酷だと思うが、僕もそう思った。そういうことに気が散るということは、とにかく、曲も演奏も全体に作為が目立ち、心に響かなかったということだと思う。

華やかで近代的なオケとなったゲヴァントハウスを聞きながら、ずっと昔、まだ「東ドイツ」だった頃のこのオケを聞いたときにとても感激した、あの重厚で伝統の重さに満ちていた響きはどこへ行ってしまったのだろうかと思っていた。これが時代の変化ということだとしたら少し悲しい気がする。

(注)その後ハイビジョンでこの演奏を聴いたが、どうして、どうして立派な演奏だと思った。オーケストラも素晴らしい。名演と言ってもいいと思う。では、なぜ、上記のような感想を持ったのか。一つは、NHKホールの響きの悪さ。音がどうしてもバラバラに聞こえる。それから、前の方の席だったこともあって、指揮者の動きが全部見えるのだが、それがとにかくうっとうしい。ウィンクしたり、個々の楽器に一つ一つのフレーズで何らかの意味ありげな指示を出したり・・・。それが「指揮」なのかも知れないが、シャイーの場合は、スタンドプレーに見えてとにかく集中を妨げる。これは、好き嫌いの分かれるところだろうが、この指揮者を聞くときは、動きの見えない場所の方が良さそうである。

バイエルン放送交響楽団演奏会
2009年11月14日(土) 18:00開演 ミューザ川崎シンフォニーホール



相変わらずヤンソンスのコンサートは楽しい。聴衆を乗せるのがうまいのだと思う。もちろん、ミュンヘンのオケもとてもいいのだが、とにかく、いつもプラスアルファがあるように感じられる。そしてよく歌う。これも日本の観衆に受ける理由だと思う。

そしてさらに今日は、ヨー・ヨー・マ。極めつけのドボルザークのチェロコンチェルトだから、悪かろうはずはないのだが、それでも、文句のつけようがない。名曲名演というところだ。
そして、アンコールのバッハの無伴奏チェロの1番のプレリュードも極めつけだったが・・・・。
ブラームスの2番のシンフォニーの段になって、チェロの人数が奇数なのに気付いた。(何しろ安い席なので、後ろからしか見えない。)そういうこともあるのかなと思ったが、一人で弾いているチェロ奏者の後ろ姿を見ているとどう見てもヨー・ヨー・マさんである。
そして、アンコールで、バイエルンのトップのメンバーとまたまた何曲かのアンコール。サービス精神なのか、ヤンソンスと気が合うのか、ただチェロを弾くのが好きなのか分からないが、とにかく楽しくて充実したコンサートだった。

ただ、気になることは・・・。東京のコンサートに比べれば一回りは安いと思うのだが、それでも、2、3階席などはまとまって空席があった。やはり、不景気なのだろうか。11月は、とにかくコンサートが多くて、我々も大忙しだから、過当競争ということもあるのかも知れないが、こういうコンサートで、あんなに空席ができるのはとてももったいない。前から思っていることだが、こういうコンサートの価格を少し考えた方がいいのではないだろうか。我々の安い席はともかく(それでも高いが)、いい席だと2万円以上というのは、やはりどうかと思う。

それから、ミューザ川崎シンフォニーホールは、いいホールだと思う。NHKホールは、何とかして欲しいとあらためて思う。

フェスティバル・ストリングス・ルツェルン with 神尾真由子
2009年11月20日(金) 19:00開演 サントリーホール



神尾さんが聴きたい一心で出かけたコンサート。

今を時めく彼女の演奏だから悪かろうはずはないのだが、でも、やはり演目が「四季」というのは少し物足りない気がした。もう少しロマンティックな曲を聴きたかったと思う。
それに、フェスティバル・ストリングス・ルツェルンというのは結構有名な弦楽オーケストラだと思うのだが、何となく地味という感じだった。それと、出だしのモーツァルトは少し音が濁って聞こえたような気がしたのだが・・・。

だから、アンコールの24のカプリースは(CDでも聴いていたが、)良かったと思う。次は、ソロの演奏会を聞きに行こうと思った。

やはり、3階席には今日も空席がたくさんあった。(あのあたりは売り出していないのかも知れないが。)
そして、「四季」の演奏が終わったあと拍手までの結構長い間。超有名曲だから、曲の終わりを知らない人ばかりのはずはないのだが、ノリが悪かったのかと思ったら、そのあとは万雷の嵐で、アンコール2曲。何となくよく分からない。サントリーホールというのも、なかなか難しいホールだといつも思う。(お客さん層の幅が広い。)

チェコ・フィルハーモニー管弦楽団演奏会
2009年11月25日(水) 19:00開演 東京文化会館大ホール



チェコフィルでドボルザークの8番と新世界といえば「極めつき」と言ってもいいくらいの組み合わせだが、こういうときは、結構期待通りにならないことも多く、ちょっと、心配だったが、このコンサートに限っては大丈夫だったようだ。

上野でオペラ以外を聴くのは初めて、しかも5階席という条件で、こちらも心配だったが、これも杞憂だった。高所恐怖症の人には少しつらい席だと思うが、なかなかどうして、どの音もバランスよく聞こえるいい席だった。

ただ、最近のホールに比べれば響きは直接的で、オケも最初はやや戸惑ったのではないかという気がする。8番の前半は全般に少しアンサンブルが悪かったように思う。ブロムシュテットの指揮は、いかにもきちんとしていて、「いかにもチェコフィルがやってます」という感じにならないところも良かったと思う。

ただ、それぞれの曲を最初に聴いて覚えたときの印象というのはどうしても拭えないもので、私にとってドボ8といえば、セル、クリーブランド。すり切れるくらい聴いたので、それ以外の演奏だとどうしても少し違和感が残ってしまう。新世界は、最初にターリッヒ、チェコフィルとトスカニーニ、NBCというちょっと両極端のしかも古い演奏を聴いたので、結構どんな演奏を聴いても大丈夫だ。音楽体験というのもなかなかやっかいなものだと、この2曲を聞きながら考えてしまった。

紀尾井シンフォニエッタ東京第72回定期演奏会
2009年12月18日(金) 19:00開演 紀尾井ホール



このままだと3回続けて欠席になりそうだったので、曜日を代わってもらって小生だけ金曜日の公演を聴く。
土曜日とは少し雰囲気が違うが、こちらも満員の盛況。

最初は何となく盛り上がらなかったし、コンチェルトでソリストが入りを間違いかけたり、運命の第二楽章の頭で客席前方に何かアクシデントがあり、なかなか始まらなかったりと、やや散漫になりかけたが、そこは、KSTと聴衆の力で持ちこたえたという感じ。

バイオリンのチュマチェンコは、なかなか雰囲気のあるスタイル。もう少しやると行き過ぎなのだろうが、この程度なら、ロマンティックで小粋ということだと思う。音も良くて、心地よい演奏だった。

「運命」は、とても良かったと思う。特段、どこをどうということのない極めて正統的な演奏だったが、紀尾井の良さをよく引き出していたと思う。バイオリンからビオラまで3つのパートはいずれも6人と、いつもに増して小編成だったが、十分良く鳴っていた。これくらい人数が少ないとアンサンブルはさすがにきれいだ。

最後は、指揮者が「ふるさとの音楽を」ということで、珍しくアンコール。弦だけだったが、確かに、スラブの響き(スロベニアの音楽らしい)だった。

こういう暖かい雰囲気は、紀尾井ならではと今回も納得。

ミューザ川崎シンフォニーホール5周年記念公演『メサイア』
2009年12月19日(土) 15:00開演 ミューザ川崎シンフォニーホール



ミューザ川崎のホールの5周年ということで、BCJのメサイア。年末にふさわしい曲目といい、演奏の質といい、また、良心的な価格といいどう考えてもお得なコンサートだと思うのだが、満席にはほど遠い。これが、サントリーホールならもう少し一杯になるのではと思う。例のハレルヤコーラスで立ち上がった人も(見える範囲では)一人と、何となく、地味な感じが残るが、これもサントリーホールなら、もう少したくさんの人が立つのだろうか。

今回は、大変良心的なお値段だったこともあり、1階席で聞く。このホールで、1階席に座るのは初めて。どこで聞いても割に響きの良いホールだと思っていたが、1階は、特に良く響くと思う。ほどよい残響や、美しいホールトーンは、さすがに新しいホールならではと思った。

演奏は、さすがBCJ。日本人を中核とする演奏グループとしては、十分「世界基準」だとあらためて思った。(こういう曲だから、細かいことを言い出せばキリはないが。)

わかっていても、「ハレルヤコーラス」や「アーメンコーラス」などの見せ場では、ちょっと感動してしまったほどだ。
だからこそ、もう少しだくさんの人に聴いてもらいたいと思うのだが・・・・。

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