中島みゆきコンサートツアー 2007
2007年12月16日(日) 17:30開演 東京国際フォーラム(ホールA)



中島みゆきのコンサートも、2005年のツアー、2006年の「夜会」、そして2007年のこれと3年連続になる。
3年続けて生身の中島みゆきの歌を聴いて感じたことは、いまだにすごい勢いで「進化」しているということだ。「心」・「技」・「体」いずれの面でも、どんどん進化をしているのではないだろうか。何より、歌を伝えようとする「心」の確かさ、そして、それを可能とする「技」と「体力」。昔よりずっと声域も広いし、声の変化も幅広い。なんといっても「表現する力」が聞く度に力強くなっていく。ほとんど同い年の私からすると、これは驚異以外の何者でもない。
(CDも悪くはないが、生とは全く違う。これだけ生で聞くほうがすごいという人も少ないのでは無かろうか。この天性の表現者(というよりむしろ「伝道者」に近いか)は、とにかく、舞台が好きなのだとあらためて今回思った。)

一方で、デビュー曲とほとんど最新の曲をメドレーで歌っても何の違和感もないスタイルの変わらなさ。75年のポプコン以来のファンだからもう30年以上になる。ほぼ、発売と同時に全てのアルバムを買い続けてきたが、その間一度も失望させられたことがないというのはすごいことだと思う。

熱心なファンだから、ついつい熱烈なほめ言葉が並んでしまうが、ファンの目ならずとも、共感を頂けるのではないかと思う。

休憩なしで、ほぼ3時間。8,400円でこれ以上充実した時間を過ごすのは不可能ではないかと思う。(もっとも、同じ8,400円ならもう少し前で聞きたかったが・・・。)メットやウィーンのオペラももちろん素晴らしいが、概ねその十分の一の値段で、これだけの感動を味わえるコンサートは他にはないと思う。

彼女とて生身の人間、是非、いつまでも、この調子で頑張って欲しいと願うのみである。

紀尾井シンフォニエッタ東京 第62回定期演奏会
2007年12月8日(土) 14:00開演 紀尾井ホール



紀尾井シンフォニエッタ東京の定期公演は前回飛ばしてしまったので、今シーズン(07−08)は初めてとなる。

例によって過不足のない整った演奏だが、何となく物足りない感じも残った。ハイドンのシンフォニーは、初めて聞く曲だから、余りコメントできないが、いかにもハイドンといった長いメロディーラインが良く聞こえる紀尾井らしい演奏のように思った。とはいえ、いくら曲にちなんだものとはいえ、あの手の「趣向」は、紀尾井の定期のような親密な雰囲気を持ってしても、やはりちょっと苦しいか。(日本では、ユーモアは難しい。)
モーツァルトは、それこそ何回聞いたか分からない曲なので、いささか聴き方に迷う。どうしても、聞く度に新しい驚きや感動を求めてしまうが、それは聞き手のわがままかもしれない。そういう観点からは、やや残念な演奏だった。いつも思うが、管楽器が霊感に乏しいように感じられ、少し平凡に聞こえる。
「弦チェレ」は、紀尾井向きの曲だと思うし、「まずまず」という感じでもあった。しかし、いつもこの曲を聴くともう少し心が動かされるように思うのだが、そういう感じはなかったのが残念。

当方の体調の万全ではなかったのかもしれないが、この指揮者と(私となのか、オケとなのかはよく分からないが、)相性が良くないと思った。

バイエルン放送交響楽団演奏会
2007年11月17日(土) 18:00開演 ミューザ川崎シンフォニーホール



紀尾井シンフォニエッタ東京の定期公演を何回か続けてさぼったので、久しぶりのコンサート。

ヤンソンスの指揮を聴くのは、これで3年連続となる。日本では大変人気のある指揮者だが、毎年聴いているとその理由がよく分かる。バイエルンにせよ、ロイヤルコンセルトヘボウにせよ、もちろん世界に冠たるオーケストラだが、ヤンソンスの棒のもと、いつも新鮮で真剣な演奏を聴かせてくれる。何か、特別なことをするわけでもなく、実にオーソドックスな演奏だと思うが、聴いていて実に楽しい。「音楽を聴く歓び」などと言うとありきたりすぎるが、まさにそうだと思う。

サラ・チャンを生で聴くのは初めてであったが、情熱が表にそのまま出てくるような演奏振りである。彼女の演奏する半径1mか2mには、何も置けない。良く動き回るし、弦を振り回したりするので近くにはうかつに寄れない。オーケストラを時に睨み、また煽るような仕草は、実に迫力がある。ブルッフ(この曲は好きだ)だから、なおさらかも知れない。同じ東洋系でも、日本人とは随分タイプが違うような気がした。

メインのマーラーは、実にバランスの整った良い演奏だったと思う。特に、管楽器の見事さ、弦の美しさは、このオーケストラならではだろう。マーラーを没頭して聴くという嗜好は持ち合わせていないので、少し頼りない観客で申し訳ないが、それでも、十分堪能できた。(率直に言って、他の曲2曲の方が私にはうれしいが・・・。)

紀尾井シンフォニエッタ東京 第60回定期演奏会
2007年7月21日(土) 15:00開演 紀尾井ホール



紀尾井シンフォニエッタ東京の定期公演。毎回書くが、なんといっても、一番安心して聴けるコンサートである。
演奏が終わった後の、拍手までの適切な間。落ち着いて演奏に聴き入る聴衆達。(会場が静か。)暖かい(ときには厳しめ)の拍手。ブラーヴィと複数形で声がかかるところは、少しスノッブかという気もしないでもないが・・・。
定期会員も1000人を超えているという。会場の規模から言ったら、もう満杯に近いのではないか。さもありなんという感じである。

今回の演奏も、どこといって衒うことなくオーソドックスできちんとした演奏。下野さんという指揮者は初めて聞くが、すっきりしていてとても良い。
このオーケストラは、この規模としては、日本でも指折りなのは間違いないが、指揮者に適切に反応するという点では、ナンバーワンと思う。(そんなにたくさんの日本のオーケストラを知っているわけではないが。)以前は気になっていた管楽器とのバランスも、今回はとても良かった。(特に木管)

今回のお目当ての清水さんのヴィオラは、やはり素晴らしかった。少しおどろおどろしい表題のついた音楽だったが、実にきれいな曲である。アンコールも含めて、ヴィオラというのはこういう風に弾けるのかと感心してしまった。さすが、ベルリンフィルの主席だ。清水さんは、自身の出番の後、客席でプログラムの最後まで(拍手が終わってオーケストラが解散するまで)聞いていた。自身がオーケストラの奏者だからということもあるのだろうが、私としては、好感が持てると感じた。

一時は、女性が入ったというだけで大騒ぎになったベルリンフィルの主席を務めるというのは、大変なことなんだろうなと、ふと感じたりもした。

ドイツ・カンマー・フィルハーモニー管弦楽団演奏会
2007年7月16日(月) 16:00開演 東京オペラシティーコンサートホール



昨年来日時に絶賛を浴びた組み合わせ。2年続けてオールベートーベンプログラムというのはちょっと気の毒な気もするが、「マーケットニーズ」なのだから仕方ないのだろう。アンコールの時、ヤルヴィ氏が一言「ベートーベン」とだけ言ったのは、皮肉と聞こえなくもなかったが・・・。

2回続けて諏訪内さんを聴くことになった。別に諏訪内さんを追っかけている訳ではないのだが、彼女をおいてなかなか適切なソリストは少ないのかも知れない。もちろん、今回も全く堂々たる演奏振り。今年のチャイコフスキーコンクールで、諏訪内さん以来となるヴァイオリン部門の日本人優勝者が出たが、17年ぶりという。ということは、もう諏訪内さんは17年も活躍していることになるが、(外見の評は彼女にとっては不本意かも知れないが、)その立ち姿の美しさにはますます磨きがかかっているように見える。指揮者、オーケストラの演奏スタイルと諏訪内さんのそれとはかなり異なっているような気もしたが、それはそれとしておもしろかった。彼女の端正な演奏スタイルと嫋々たる音色は、ヤルヴィのスタイリッシュな演奏に思ったよりうまくとけ込んでいたように思う。

もちろん、この演奏会の最大の聞き物は「エロイカ」である。久しぶりに生のエロイカを聴いたが、前評判通り実に素晴らしかった。このオーケストラは、もちろんベルリンフィルのような名人オーケストラではないと思うのだが、あのテンポで颯爽と弾きこなすのを聴いていると実に気持ちがいい。快速なだけではなく、歌うところは歌い、弾むところは弾む。演奏には、例えばフルトヴェングラーのように妙な思い入れは全く加わっていないが、それでもというか、それだからこそ曲の魅力は十二分に発揮される。我々が聞き慣れていたエロイカはいったい何だったのだろうとふと思ったりもする。
完全に統一された意志のもと、一糸乱れぬ体育会系の演奏であるが、だからといって必要以上にインテンポというわけでもなく、無味乾燥でもない。鋭いティンパニの音、ほとんどヴィヴラートをかけない澄んだ音色の弦、的確に歌う木管、難しい3楽章を苦もなく弾きこなしたホルン。若い育ち盛りのオーケストラを堪能したという感じで、実に後味の良い演奏会であった。

ハンブルク北ドイツ放送交響楽団演奏会
2007年5月20日(日) 14:00開演 ミューザ川崎シンフォニーホール



オーケストラも指揮者も高名だが聴くのは初めて。
「北ドイツらしい重厚な」というふれこみであるが、ごく普通の(といっても当然ながら一流の)ドイツのオーケストラという感じではあった。(場所が、ステージの右側ヴィオラの奥なので、正面から聞くのと少し違うかもしれないが。)

諏訪内さんのメンコンはさすが。普通のテンポで出たオーケストラを、最初の一弾きでぐっと押さえてしまう貫禄はすごい。「天は二物を与えた」代表選手だが、(一昨年の暮れ以来1年半ぶりに聴くと、)その「二物」両方にますます磨きがかかっているようだ。加えて、名器ドルフィンの魅力が加わり、その妖艶さは、ちょっとすさまじい感じさえする。(完全とも思われる整った運弓から生み出されるのが不思議なくらいの)嫋々たるその響きは、誰も敵わないのではないかと思う。昨日のメンコンと同じ曲とは思えない。(どちらが良いというものではないと思うが。)さすがにオケも途中から真剣勝負であった。惜しむらくは、指揮台がきしむ音が興ざめであった。(ホールの人に聞いたところ、オーケストラが持ち込んだ指揮台とのことだが、ステージとの相性が悪いのか、或いは、ドホナーニさんがいささか重すぎたのか・・・。)

最後のチャイコフスキーは、曲が曲だけにまあこんなものかなという感じがした。指揮台はホール備え付けのものに変更になった。あの音は、指揮している本人が一番気になったと思う。とはいえ、(席のせいもあるのかもしれないが、)管楽器のバランスやアンサンブルが微妙に乱れるような気がしたのだが・・・。
アンコールもスラブ舞曲ということで、どうして純正ドイツのオケと指揮者の組み合わせで、プログラムがこうスラブ風になるのだろうといささか疑問。こんな名曲コンサートのようなプログラムでない方がいいような気もする。

紀尾井シンフォニエッタ東京 第59回定期演奏会
2007年5月19日(土) 15:00開演 紀尾井ホール



KSTの定期演奏会。明日のハンブルクと連チャンになるが、プログラムも「メンコン」がかぶっている。2日続けて同じ曲を聴くのは初めてのような気がする。

指揮者ストルゴードはフィンランド出身。ヴァイオリンソロのチュマチェンコは名教授の誉れ高い女流。いかにも、KSTらしいキャストとプログラムである。

メンコンは、実に「端正」。メンデルスゾーンは、元々とても形の整った作曲家なのだということをあらためて思う。きちんと演奏するとこの曲はこうなんだと納得させられる演奏であった。
シベリウスの3番は初めて聴いた。(CDは持っているが、多分一度も音を出していない。)ご当地出身の指揮者の手になるだけあって、いかにもシベリウスらしい魅力的な部分が満載のとてもいい曲だと思った。ただ、たくさん形の合わない積み木が組み合わされているような感じは否めない。もう少し整頓すれば、ポリフォニックな宗教曲風のずっといい曲になるのに惜しいと思ってしまった。

「熱狂の日」音楽祭2007(La Folle Journee)〜民族のハーモニー〜
2007年5月5日(土) 東京国際フォーラム



昨年に引き続き「熱狂の日」に参加。
今年は3公演と少し控えめにしたが、これでは少し物足りない・・・朝から一日中ゆっくりとここで過ごすのが、正しい参加の仕方のような気がする。

聴いた3つの公演はどれも良かった。

一つめのウラルフィルハーモニーというオーケストラは全く知らなかったが、なかなかどうして立派なものだった。ウラル山脈の東側、もう少しでシベリアに足がかかるという辺りにあるオーケストラのようだが、さすがロシア、なかなか懐が深い。ベレゾフスキーの熱演もあり、お国ものということもあって小気味よい演奏だった。

二つめは、何といっても仲道さんのピアノが良かった。生は初めて聞くが、小柄な体のどこにあんなエネルギーがあるのであろうか。オーケストラも途中からすっかり本気で掛け合いを演じていた。北欧ものばかりのプログラムであるが、選曲もお祭り気分によくあっていたと思う。

何といっても本日の圧巻はミシェル・コルボ、ローザンヌ声楽アンサンブルによるフォーレのレクイエム。去年のモーツァルトでもこの組み合わせで聞いたが、今回の方がずっと良かったような気がする。元々好きな曲ということもあるが、とても地上の音楽とは思えない。永遠に続いて欲しいと思う至福の時だった。客席も熱狂していたが、さもありなんと思う。この演奏が3,000円で聴けるのは、実に素晴らしい。前から6列目の真ん中辺りという席に恵まれたこともあるが、このCホールは音が意外といいのにいつも驚く。Cホールで聴けて良かった。(この組み合わせによる同じプログラムは期間中5回あるが、Cホールはこの回限り。夜遅い公演ということもあってこうなったのであろうが、客席も実に静謐な雰囲気で申し分なし。小編成のアンサンブルでもあり、大きなAホールでは少し無理があるのではと思う。)

ということで、今年も大満足の1日だった。

libera Angel Voices Tour 2007
2007年4月14日(土) 17:00開演 オーチャードホール



ずっと前に、渋谷のHMVでふと耳にしてアルバムを買ってきたのがきかっけで、その後、NHKのドラマのテーマソングになって以来、うちの奥さんがすっかりファンになって、苦労してこのコンサートのチケットを手に入れた。(プレオーダーも、当日売りも瞬間蒸発して、仕方なくオークションで若干のプレミア付きで入手。そのおかげで、前から6列目という絶好の席。)
カミさんは、大満足していたから、これ以上小生がとやかく言うことはないのだが、以下は、小姑の独り言のようなもの・・・。

ラテン語のテキストを多用した宗教的な雰囲気を意図的に売りにしているので、教会風の長い残響とクラシカルなオルガン演奏が必要ということもあり、基本的には全てスピーカー経由のコンサート。そういう意味では、ポピュラーコンサートと同じである。ただ、(席が、若干右より前方ということもあって、右のスピーカーに近い位置にいたこともあり、特に気になったのだろうが、)とにかく、スピーカー音がいただけない。日本の心あるタレントたちの音響装置の方が数等ましだと思う。これなら、我が家でCDを聴いていた方がよっぽど音はきれい。
悪意のない、一生懸命な子供たちを使い、(それが悪いとはいわないが)商魂の固まりの上に作られた見せ物なのだが、仮に、そういう「ショー・ビジネス」であるとしても、それなりの志や誠意が必要ではないかと私は思ったのだが・・・。せめて1曲くらい、生の声を聴きたかった。

紀尾井シンフォニエッタ東京 第58回定期演奏会
2007年2月10日(土) 15:00開演 紀尾井ホール



モーツァルトで忙しかった2006年が終わって久しぶりにコンサート。
例によって、紀尾井シンフォニエッタ東京。モーツァルト・イヤーの余韻を少し残したかのようなプログラムであるが、いつものように安定した演奏を聴いて、いつものようにくつろぐ。
昨年何回聴いたかと思うフィガロの序曲も、「ホームグラウンド」であらためて聴くのはなかなか良いものである。

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