新計量法とSI化の進め方

このコーナーは、通商産業省発行・SI単位等普及委員会編集による冊子「新計量法とSI化の進め方−重力単位系から国際単位系(SI)へ−」からの抜粋により作成しました。

目次
第1章 計量法の目的
第2章 計量法における単位の規制
第3章 7年の猶予期間の単位と移行の進め方
Q&A

第1章 計量法の目的

 計量法の目的は、@計量の基準を定め、A適正な計量の実施を確保し、もって経済の発展及び文化の向上に寄与することにある。

1.計量の基準

 世の中には「長さ」、「質量」、「時間」など、数値でその大きさを表すことができる事象や現象があるが、計量法ではこうしたものを「物象の状態の量」と呼称している。計量法では、対象とする「物象の状態の量」を、それらが取引又は証明、産業、学術、日常生活の分野での計量で重要な機能を期待されているという観点から規定しており、「物象の状態の量」として熟度の高いものを法律で72量(法第2条第1項第1号)、熟度の低いものは政令で17量(計量単位令第1条)を定めている。以下にそれらを示す。




長さ、質量、時間、電流、温度、物質量、光度、角度、立体角、面積、体積、角
速度、角加速度、速さ、加速度、周波数、回転速度、波数、密度、力、力のモー
メント、圧力、応力、粘度、動粘度、仕事、工率、質量流量、流量、熱量、熱伝
導率、比熱容量、エントロピー、電気量、電界の強さ、電圧、起電力、静電容量
、磁界の強さ、起磁力、磁束密度、磁束、インダクタンス、電気抵抗、電気のコ
ンダクタンス、インピーダンス、電力、無効電力、皮相電力、電力量、無効電力
量、皮相電力量、電磁波の減衰量、電磁波の電力密度、放射強度、光束、輝度、
照度、音響パワー、音圧レベル、振動加速度レベル、濃度、中性子放出率、放射
能、吸収線量、吸収線量率、カーマ、カーマ率、照射線量、照射線量率、線量当
量、線量当量率


繊度、比重、引張強さ、圧縮強さ、硬さ、衝撃値、粒度、耐火度、力率、屈折度
、湿度、粒子フルエンス、粒子フルエンス率、エネルギーフルエンス、エネルギ
ーフルエンス率、放射能面密度、放射能濃度

 計量法で「計量」とは、これら「物象の状態の量」を計ることと定義付けている。ここで「物象の状態の量」を計るためには、何らかの基準が必要となってくるが、「計量単位」はその基準となるものである。したがって、個々の「物象の状態の量」ごとに「計量単位」が与えられ、かつ、「計量単位」の内容を確定するためにその「定義」がなされる必要がある。計量法では、前述の72の物象の状態の量に対応する「計量単位」を「法定計量単位」として、国際度量衡総会*)で決議された国際的に合意された単位系である国際単位系(略称、SI又はSI単位)をもとに定めている。SI単位における基本単位である、長さ、質量、時間、電流、温度、物質量、光度の7量については表1.1のように定められている。

▼表1.1:計量法におけるSI基本単位の定義
物象の状態の量 計量単位 定義
 長さ メートル 真空中で1秒間の299,792,458分の1の時間に光が進む行程の長さ
 質量 キログラム 国際キログラム原器の質量
 時間 セシウム133の原子の基底状態の2つの超微細準位の間の遷移に対応する放射の周期の9,192,631,770倍に等しい時間
 電流 アンペア 真空中に1メートルの間隔で平行におかれた無限に小さい円形の断面を有する無限に長い2本の直線状導体のそれぞれを流れ、これらの導体の1メートルにつき千万分の2ニュートンの力を及ぼし合う直流の電流又はこれで定義したアンペアで表した瞬間値の2乗の1周期平均の平方根が1である交流の電流
 温度 ケルビン

セルシウス度又は度
水の3重点の熱力学温度の273.16分の1(ケルビンで表される温度は熱力学温度とし、セルシウス度又は度で表される温度はセルシウス温度(ケルビンで表した熱力学温度の値から273.15を減じたもの)とする。)
 物質量 モル 0.012キログラムの炭素12の中に存在する原子の数と等しい数の要素粒子または要素粒子の集合体(組成が明確にされたものに限る。)で構成された系の物質量
 光度 カンデラ放射強度683分の1ワット毎ステラジアンで540兆ヘルツの単光色を放射する光源のその放射の方向における光度(540兆ヘルツの単光色と異なる光については、通商産業省令で定める。)

<参考>国際度量衡総会
 単位と標準の国際的統一を目指すメートル条約の最高意志決定機関。メートル条約は1875年に締結され、日本は1885年に加盟した。

2.適正な計量の実施

2.1 適正な計量

 適正な計量を確保するために、取引又は証明における正確な計量を義務付け、計量証明事業者制度、自主的な計量管理の推進のための適正計量管理事業所制度、計量士制度などが計量法に規定されている。
 ここで「取引」とは、「有償であると無償であるとを問わず、物又は役務の給付を目的とする業務上の行為」(法第2条第2項)をいい、例えば、牛肉100 gを500円で売買するなどの行為である。
 また、「証明」とは、「公に又は業務上他人に一定の事実が真実である旨を表明すること」(法第2条第2項)をいい、例えば、宅地の登記や製品の品質性能証明などの行為である。
 計量法では第10条第1項で、計量を行う者に対し、正確な計量に努める義務を定め、第10条第2項で、適正な計量を実施しない者に対し、都道府県知事又は特定市町村の長が是正する旨の勧告ができることを定めている。それでも従わない場合は第10条第3項で、都道府県知事又は特定市町村の長が適正な計量を実施しない者として公表できることを定めている。
 これら一連の措置により、適正な計量を確保している。

2.2 特定計量器

 「適正な計量の実施」のためには、上記のような適正な計量の確保することが必要であるが、その計量に用いる計量器も適正であることが求められる。こういった観点から、計量法では規制すべき計量器として「特定計量器」を定めている。この「特定計量器」は、以下の2つの要件から定めている。

@取引又は証明における計量に使用される計量器のうち、適正な計量の実施を確保するためにその構造又は器差に係る基準を定める必要があるもの。
A主として一般消費者の生活の用に供される計量器のうち、適正な計量の実施を確保するためにその構造又は器差に係る基準を定める必要があるもの。

 このような要件から、大別して18種類の計量器が特定計量器として定められている。これら特定計量器は、性能検査及び器差検査を行う検定等の規制によって、計量器としての適正さ公平さが担保されている。
 計量法では、正確な計量を義務付けること、また「特定計量器」として正確な計量器を供給することの2つから適正な計量の実施を確保を行っている。

3.計量法改正の3本柱

 平成4年の計量法改正の3本柱は、計量単位のSI化、計量器規制の合理化、計量標準供給制度の発足である。

3.1 計量単位のSI化

 取引又は証明に使用しなければならない法定計量単位について、非SI単位を段階的(猶予期間が3年、5年及び7年のもの)に計量単位から削除されることにより、原則として、1999年9月30日までにSI単位に統一しなければならない。
 猶予期間が3年、5年の単位については、すでに法定計量単位から削除されている。残る7年の猶予期間の単位が最終の移行対象となっている。これらの単位は、産業界で多く使用されている重力単位系がほとんどであるため、その移行に時間を要するものであり、移行のための準備が必要となる。
 最終の猶予期間も残り少なくなり、1997年に産業界での移行目標年を調査した結果では、1998年から1999年に実施する企業が多かった。駆け込み的移行が予想される。
 しかしながら、SI単位への統一は、国際化の中で日本が果たさなければならない責務であり、世界全体で考えると大きな利益となる。

3.2 計量器の規制の合理化

 計量器の製造、修理、販売事業の登録制を届出制にするとともに、計量器の検定について、一定水準の製造・品質管理能力を有する製造事業者の製品については、検定を免除する制度(指定製造事業者制度)を導入するなど、計量器に関する規制の一層の合理化が図られた。

3.3 計量標準供給制度の創設

 先端技術分野を中心とした高精度の計量に対応するため、国家計量標準とつながりのある(トレーサビリティが確保された)計量器の使用が求められるようになり、計量標準供給制度(トレーサビリティ制度)が創設された。この制度は、公的な計量標準(特定標準器等)とのつながりのある計量標準(特定二次標準)を民間へ供給することを主なねらいとしている。
 計量標準の供給の流れを図1.1に示す。
 一般のユーザーは、認定事業者から国家計量標準とのつながりを示した証明書を受けることができる。

▲図1.1:計量標準供給制度の流れ

第2章 計量法における単位の規制

 計量法では、計量単位として国際単位系(略称SI単位)をもとに法定計量単位を定め、取引又は証明における非法定計量単位の使用の禁止、及び非法定計量単位の付した計量器の販売の禁止を定めている。これが、計量法における単位の規制の概要である。本章では、計量法における単位の規制について説明する。

1.法定計量単位

 計量法では、物象の状態の量として熟度の高い72量を規定しており(第1章参照)、それに対応する計量単位を法定計量単位として規定している。現時点(平成11年)において、この法定計量単位は以下の5つに分類される。
 これらの内、(1)〜(3)については、10の整数乗を表す接頭語(表2.6)と組合せて使用することができる(一部例外を除く。詳細は1.6参照)。

1.1 SI単位に係る計量単位(表2.1)

 計量法では、取引又は証明に使用する計量単位について、原則として国際単位系(SI単位)によることとしている。法の中では第3条でSI単位に係る計量単位を定めている。この中で定めているものは、72の物象の状態の量全てではなく、SI単位のある65量についての計量単位である。
 厳密に言うと、これらの単位のうち時間の“分(min)”、“時(h)”、質量の“トン(t)”などはSI単位ではないが、計量法ではこれらもSI単位に係る計量単位として定めている。

▼表2.1 SI単位に係る計量単位
 物象の状態の量計量単位(記号)


1.長さ
2.質量
3.時間
4.電流
5.温度
6.物質量
7.光度
1.メートル(m)
2.キログラム(kg),グラム(g),トン(t)
3.秒(s),分(min),時(h)
4.アンペア(A)
5.ケルビン(K),セルシウス度(℃)又は度(℃)
6.モル(mol)
7.カンデラ(cd)






8.角度
9.立体角
10.面積

11.体積
12.角速度
13.角加速度
14.速さ
15.加速度
16.周波数
17.回転速度
18.波数
8.ラジアン(rad),度(°),分(′),秒(″)
9.ステラジアン(sr)
10.平方メートル(m
11.立方メートル(m),リットル(l)
12.ラジアン毎秒(rad/s)
13.ラジアン毎秒毎秒(rad/s
14.メートル毎秒(m/s),メートル毎時(m/h)
15.メートル毎秒毎秒(m/s
16.ヘルツ(Hz)
17.毎秒(s−1),毎分(min−1),毎時(h−1
18.毎メートル(m−1



19.密度

20.力
21.力のモーメント
22.圧力
23.応力
24.粘度

25.動粘度
26.仕事
27.工率
28.質量流量


29.流量


61.振動加速度レベル*
19.キログラム毎立方メートル(kg/m),グラム毎立方メートル(g/m),
グラム毎リットル(g/l又はg/L)
20.ニュートン(N)
21.ニュートンメートル(N・m)
22.パスカル(Pa),ニュートン毎平方メートル(N/m),バール(bar)
23.パスカル(Pa),ニュートン毎平方メートル(N/m
24.パスカル秒(Pa・s),ニュートン秒毎平方メートル(N・s/m
25.平方メートル毎秒(u/s)
26.ジュール(J),ワット秒(W・S),ワット時(W・h)
27.ワット(W)
28.キログラム毎秒(kg/s),キログラム毎分(kg/min),キログラム毎時(kg/h),
グラム毎秒(g/s),グラム毎分(g/min),グラム毎時(g/h),
トン毎秒(t/s),トン毎分(t/min),トン毎時(t/h)
29.立方メートル毎秒(m/s),立方メートル毎分(m/min),立方メートル毎時(m/h),
リットル毎秒(l/s又はL/s),リットル毎分(l/min又はL/min),リットル毎時(l/h又はL/h)
61.-


30.熱量
31.熱伝導率
32.比熱容量

33.エントロピー
30.ジュール(J),ワット秒(W・s),ワット時(W・h)
31.ワット毎メートル毎ケルビン[W/(m・K)],ワット毎メートル毎度[W/(m・℃)]
32.ジュール毎キログラム毎ケルビン[J/(kg・K)],ジュール毎キログラム毎度[J/(kg)・℃)]
33.ジュール毎ケルビン(J/K)






34.電気量
35.電界の強さ
36.電圧
37.起電力
38.静電容量
39.磁界の強さ
40.起磁力
41.磁束密度
42.磁束
43.インダクタンス
44.電気抵抗
45.電気のコンダクタンス
46.インピーダンス
47.電力
48.無効電力*
49.皮相電力*
50.電力量
51.無効電力量*
52.皮相電力量
53.電磁波の減衰量
54.電磁波の電力密度
34.クーロン(C)
35.ボルト毎メートル(V/m)
36.ボルト(V)
37.ボルト(V)
38.ファラド(F)
39.アンペア毎メートル(A/m)
40.アンペア(A)
41.テスラ(T),ウェーバ毎平方メートル(Wb/m
42.ウェーバ(Wb)
43.ヘンリー(H)
44.オーム(Ω)
45.ジーメンス(S)
46.オーム(Ω)
47.ワット(W)
48.-
49.-
50.ジュール(J),ワット秒(W・s),ワット時(W・h)
51.-
52.-
53.-
54.ワット毎平方メートル(W/m









55.放射強度
56.光度
57.輝度
58.照度

63.中性子放出率
64.放射能
65.吸収線量
66.吸収線量率

67.カーマ
68.カーマ率
69.照射線量
70.照射線量率


71.線量当量
72.線量当量率

55.ワット毎ステラジアン(W/sr)
56.ルーメン(lm)
57.カンデラ毎平方メートル(cd/m
58.ルクス(lx)
63.毎秒(s−1),毎分(min−1
64.ベクレル(Bq),キュリー(Ci)
65.グレイ(Gy),ラド(rad)
66.グレイ毎秒(Gy/s),グレイ毎分(Gy/min),グレイ毎時(Gy/h),
ラド毎秒(rad/s),ラド毎分(rad/min),ラド毎時(rad/h)
67.グレイ(Gy)
68.グレイ毎秒(Gy/s),グレイ毎分(Gy/min),グレイ毎時(Gy/h)
69.クーロン毎キログラム(C/kg),レントゲン(R)
70.クーロン毎キログラム毎秒(C/(kg・s)),クーロン毎キログラム毎分(C/(kg・min)),クーロン毎キログラム毎時(C/(kg・h)),
レントゲン毎秒(R/s),レントゲン毎分(R/min),レントゲン毎時(R/h)
71.シーベルト(Sv)、レム(rem)
72.シーベルト毎秒(Sv/s)、シーベルト毎分(Sv/min)、シーベルト毎時(Sv/h)、
レム毎秒(rem/s),レム毎分(rem/min),レム毎時(rem/h)


59.音響パワー
60.音圧レベル*
62.濃度
59.ワット(W)
60.-
62.モル毎立方メートル(mol/m),モル毎立方リットル(mol/l又はmol/L),キログラム毎立方メートル(kg/m),グラム毎立方メートル(g/m),グラム毎リットル(g/l又はg/L)
備考1 *印の量についてはSI単位にないが、表2.2に示す非SI単位が法定計量単位として認められている。
備考2 物象の状態の量の左側に付されている番号は、計量法第2条に規定されている順番を示す。

1.2 SI単位のない量の非SI単位(表2.2)

 上述したように、SI単位では72の物象の状態の量のうち、65量についてしか定めがないため、SI単位のない7量に対して非SI単位で法定計量単位を定めている(法第4条第1項)。
▼表2.2 SI単位のない量の非SI単位
物象の状態の量計量単位(記号)
48.無効電力48.バール(var)
49.皮相電力49.ボルトアンペア(VA)
51.無効電力量51.バール秒(var・s)
52.皮相電力量52.ボルトアンペア秒(VA・s)、ボルトアンペア時(VA・h)
53.電磁波の減衰量53.デシベル(dB)
60.音圧レベル60.デシベル(dB)
61.振動加速度レベル61.デシベル(dB)

1.3 SI単位のある量の非SI単位(表2.3)

 計量法では、SI単位を基本として計量単位を定めているが、SI単位がある物象の状態の量についても、国内外で非SI単位が広く用いられている5つの物象の状態の量については、その使用を禁止することによって経済活動、国民生活に混乱を与えるおそれがあるため、非SI単位であっても、法定計量単位として定めている(法第4条第2項)。
▼表2.3 SI単位のある量の非SI単位
物象の状態の量計量単位(記号)
17.回転速度17.回毎分(r/min、rpm)、回毎時(r/h、rph)
22.圧力22.気圧(atm)
24.粘度24.ポアズ(P)
25.動粘度25.ストークス(St)
62.濃度 62.質量百分率(%)
質量千分率(‰)
質量百万分率(ppm)
質量十億分率(ppb)
体積百分率(vol%、%)
体積千分率(vol‰、‰)
体積百万分率(volppm、ppm)
体積十億分率(volppb、ppb)
ピーエッチ(pH)

1.4 用途を限定する非SI単位(表2.4)

 1.1〜1.3以外に、海面における長さの計量など特殊の計量に用いる「長さ、質量、角度、面積、体積、速さ、加速度、圧力、熱量」の計量単位についても、特定の使用分野に限って、法定計量単位として定めている(法第5条第2項)。
 これは、特定の分野において、表2.4の計量単位が国内外において広く用いられているため、非SI単位ではあるが、用途を限定して法定計量単位として認めているものである。したがって、定められた用途以外では非法定計量単位となる。例えば、真珠の質量を計るための「もんめ」単位の質量計は、一般の質量計として販売することはできない。
▼表2.4 用途を限定する非SI単位
物象の状態の量単位{用途の限定}
1.長さ1.海里(M,nm){海面又は空中における長さ}
オングストローム (Å){電磁波、膜圧、表面の粗さ、結晶格子}
2.質量2.カラット(ct){宝石の質量}
もんめ(mom){真珠の質量}
トロイオンス(oz){金貨の質量}
8.角度8.点(pt){航海、航空}
10.面積10.アール(a)、ヘクタール(ha){土地面積}
11.体積11.トン(T){船舶の体積}
14.速さ14.ノット(kt){航海、航空}
15.加速度15.ガル(Gal)、ミリガル(mGal){重力加速度、地震}
22.圧力22.トル(Torr)、ミリトル(mTorr)、マイクロトル(μTorr){生体内の圧力}
水銀柱メートル(mmHg){血圧測定}
30.熱量30.カロリー(cal)、キロカロリー(kcal)、メガカロリー(Mcal)、ギガカロリー(Gcal){栄養、代謝}

1.5 猶予期限を定めた非SI単位(表2.5)

 1.1〜1.4の計量単位は、平成5年の計量法改正時に定められたものであるが、改正前の計量法では上記計量単位以外にも非SI単位を法定計量単位として認めていた。これらの計量単位について、急激にSI単位に移行することは混乱を招くことが予想されるため、以下の考え方で猶予期間を定めた。
 @3年の猶予期間の単位(猶予期限は1995年9月30日)
  我が国において、わずかしか使用されていない比較的容易に変更できる計量単位。
 A5年の猶予期間の単位(猶予期限は1997年9月30日)
  法律改正内容の周知徹底や事務的な準備に要する期間が必要な計量単位。
 B7年の猶予期間の単位(猶予期限は1999年9月30日)
  保安上又は安全上の理由から、急速な単位の移行が困難であると認められる計量単位。

 これらの単位は猶予期間中は、法定計量単位として認められているが、猶予期限を過ぎると法定計量単位ではなくなる。一般にこれらの単位を削除対象単位と呼んでいる。これらの単位及びその猶予期限は計量法附則第3条に規定されている。
 @、Aの単位については、現時点において既に法定計量単位から削除されている。Bの単位についても、平成11年10月1日からは法定計量単位から削除される。
 本冊子において、このBの単位をSI単位にどう変更していくかがメインテーマであるが、これについては第3章において述べる。
▼表2.5 猶予期限を定めた非SI単位
注*1〜3に関しては表2.4に規定する分野を除く
物象の状態の量計量単位(記号)猶予
期限
SI単位(記号)二単位の換算関係
20.力
26.仕事
30.熱量


63.中性子放出率

64.放射能

20.ダイン(dyn)
26.エルグ(erg)
30.重量キログラムメートル
(kgf・m)
エルグ(erg)
63.中性子毎秒(n/s)
中性子毎分(h/min)
64.壊変毎秒(dps)
壊変毎分(dpm)






30

20.ニュートン(N)
26.ジュール(J)
30.ジュール(J)


63.毎秒(s-1

64.ベクレル(Bq)

1dyn=10μN
1erg=100nJ
1kgf・m≒9.8J

1erg=100nJ
1n/s=1s-1

1dps=1Bq

1.長さ
16.周波数

22.圧力
39.磁界の強さ


40.起磁力
41.磁束密度

42.磁束
60.音圧レベル
62.濃度

1.ミクロン(μ)
16.サイクル(c)
サイクル毎秒(c/s)
22.トル(Torr)*1
39.アンペア回数毎メートル
(AT/m)
エルステッド(Oe)
40.アンペア回数(AT)
41.ガンマ(γ)
ガウス(G)
42.マクスウエル(Mx)
60.ホン
62.規定(N)







30

1.メートル(m)
16.ヘルツ(Hz)

22.パスカル(Pa)
39.アンペア毎メートル
(A/m)

40.アンペア(A)
41.テスラ(T)

42.ウェーバ(Wb)
60.デシベル(dB)
62.モル毎立方メートル
(mol/m3
1μ=1μm
1c=1c/s=1Hz

1Torr≒133Pa
1AT・m=1A/m

1Oe≒79A/m
1AT=1A
1γ=1nT
1G=1μT
1Mx=10nWb
1ホン=1dB


20.力


21.力のモーメント

22.圧力



23.応力

26.仕事

27.工率

30.熱量
31.熱伝導率

32.比熱容量

20.重量キログラム(kgf)
重量グラム(gf)
重量トン(tf)
21.重量キログラムメートル
(kgw・m)
22.重量キログラム毎平方メートル
(kgw/u)
水銀柱メートル(mHg)*2
水柱メートル(mHO)
23.重量キログラム毎平方メートル
(kgw/u)
26.重量キログラムメートル
(kgw・m)
27.重量キログラムメートル毎秒
(kgf・m/s)
30.カロリー(cal)*3
31.カロリー毎秒毎メートル毎度
cal/(s・m・℃)
32.カロリー毎キログラム毎度
cal/(kg・℃)


11



30

20.ニュートン(N)


21.ニュートンメートル
(N・m)
22.パスカル(Pa)



23.パスカル(Pa)

26.ジュール(J)

27.ワット(W)

30.ジュール(J)
31.ワット毎メートル毎度
[W/(m・℃)]
32.ジュール毎キログラム毎度
[J/(kg・℃)]
1kgf≒9.8N
1gf≒9.8mN
1tf≒9.8kN
1kgf・m≒9.8N・m

1kgf/u≒9.8Pa

1mHg≒133kPa
1mHO≒9.8kPa
1kgf/u≒9.8Pa

1kgf・m≒9.8J

1kgf・m/s≒9.8W

1cal≒4.2J
1cal/(s・m・℃)
≒4.2W(m・℃)
1cal/(kg・℃)
≒4.2J(kg・℃)
備考 二単位の換算関係における換算係数は次の通り
9.89.80665
7979.5774
133133.322
4.24.18605

1.6 接頭語の使い方

 計量法では1.1〜1.3の単位について表2.6の接頭語と組み合わせて、使用することを認めている。
 しかしながら、次の単位について接頭語を付すことは認められていない。
 @接頭語が重複するもの
  単独及び組立単位中のキログラムに接頭語を付すことは認められていない。
質量(キログラム)、密度(キログラム毎立方メートル)、質量流量(キログラム毎秒、キログラム毎分、キログラム毎時)

 A慣習上接頭語を付さないもの
  10進法でないもの、比を表す単位等に接頭語を付すことは認められていない。
時間(分、時)、角度(度、秒、分)、電磁波の減衰量(デシベル)、音圧レベル (デシベル)、振動加速度レベル(デシベル)、回転速度(回毎分、回毎時)、圧力(気圧)、濃度(質量百分率、質量千分率、質量百万分率、質量十億分率、体積百分率、体積千分率、体積百万分率、体積十億分率、ピーエッチ)

▼表2.6:10の整数乗を表す接頭語
接頭語接頭語が示す乗数 接頭語接頭語が示す乗数
ヨタ(Y)1024 ヨクト(y)10−24
ゼタ(Z)1021 ゼプト(z)10−21
エクサ(E)1018 アト(a)10−18
ペタ(P)1015 フェムト(f)10−15
テラ(T)1012 ピコ(p)10−12
ギガ(G)10 ナノ(n)10−9
メガ(M)10 マイクロ(μ)10−6
キロ(k)10 ミリ(m)10−3
ヘクト(h)10 センチ(c)10−2
デカ(da)10デシ(d)10−1

1.7 単位記号について

 計量法では、上述の単位の記号について標準となるべきものを、通商産業省令(計量単位令)で定めている(法第7条)。標準となるべき単位記号については、表2.1〜表2.7のとおりである。
 単位記号は、計量法の中で標準となるべきものを示しており、例えば、筆記体で記号を表現すること等を制限するわけではなく、定められた記号以外のものの使用に罰則が伴う規制ではない。
 しかしながら、大文字と小文字の区別については大文字と小文字とで違う意味を持つもの(例えば、m(ミリ)、M(メガ))が存在するので、正しく区別して使用すべきである。

1.8 72量以外の物象の状態の量について

 上述してきたように、計量法では72の物象の状態の量について、法定計量単位として定めている。しかしながら、72量以外にも物象の状態の量は存在する。こういったもののうち、17の量については政令により単位等を定めているが、これらの単位については2.以降で後述する様な規制の対象にはならない。
 しかしながら、72量以外の物象の状態に使用する単位も、SI単位による組立単位あるいはJIS等の規格に定められている単位を使用することが適当である。

2.取引又は証明における規制

 計量法では第8条第1項において
法定計量単位以外の計量単位(非法定計量単位)は、第2条第1項第1号に掲げる物象の状態の量について、取引又は証明に用いてはならない。
 と、定めており、72の物象の状態の量(第1章参照)について、取引又は証明において非法定計量単位の使用を禁止している。
 計量法での取引及び証明の定義は法第2条第2項で下のように定めている。
この法律において「取引」とは、有償であると無償であるとを問わず、物又は役務の給付を目的とする業務上の行為をいい、「証明」とは、公に又は業務上他人に一定の事実が真実である旨を表明することをいう。

2.1 取引における計量

 平成6年7月に「計量法、計量法施行令、計量法施行規則の解釈及び運用について(機局290号)」の通達の中で、取引における計量について以下のような解釈が示されている。
 取引における計量とは、契約の両当事者が、その面前で、ある計量器を用いて一定の物象の状態の量の計量を行い、その計量の結果が契約の要件となる計量をいう。工程管理における計量等、内部的な行為にとどまり、計量の結果が外部に表明されない計量や契約の要件にならない計量は含まれない。
 計量した物に計量の結果を表示する場合については、その物が取引の対象となり、表示した結果が契約の要件となるときは、その表示をするための計量は、取引における計量に該当する。内部の工程管理における計量結果の表明であり、工程管理上その計量結果の表示を用いる場合は、その表示のための計量は取引における計量に該当しない。

2.2 証明における計量

 平成6年7月に「計量法、計量法施行令、計量法施行規則の解釈及び運用について(機局290号)」の通達の中で、証明における計量について以下のような解釈が示されている。
 法第2条第2項の「公に」、「業務上」、「一定の事実」、「真実である旨を表明すること」の解釈は以下のとおり。
・「公に」とは、公機関が、又は公機関に対し、であること。
・「業務上」とは、継続的、反復的であること。
・「一定の事実」とは、一定のものが一定の物象の状態の量を有するという事実。特定の数値までを必ず含むことを有するを要するものでなく、ある一定の水準に達したか、達していないかという事実も含まれる。
・「真実である旨を表明すること」とは、真実であることについて一定の法的責任等を伴って表明すること。参考値を示すなど、単なる事実の表明は該当しない。

2.3 文書類について

 生産活動や営業活動を行う上で、図面、仕様書、取扱説明書、カタログ等様々な文書類が使用されている。これらの文書類を取引又は証明にあたるもの、あたらないものを整理すると、以下のような整理になる。
取引又は証明にあたるもの 取引又は証明にあたらないもの
契約書
仕様書
性能証明書
官公庁への提出書類
カタログ類
取扱説明書
契約書に添付する参考資料
広告類

 取引又は証明にあたらないものはSI化しなくていいということではなく、随時SI化していくことが望ましい。

3.計量器に関する規制

 計量法第9条第1項において
第2条第1項第1号に掲げる物象の状態の量の計量に使用する計量器であって非法定計量単位による目盛又は表記を付したものは、販売し、又は販売の目的で陳列してはならない。第5条第2項の政令で定める計量単位による目盛又は表記を付した計量器であって、専ら同項の政令で定める特殊の計量に使用するものとして通商産業省令で定めるもの以外のものについても、同様とする。
 と、計量器に関する単位の規制が定められている。これは72の物象の状態の量を計量する計量器については、非法定計量単位による目盛又は表記を付したものの、販売及び販売のための陳列を禁止されていることを意味している。
 非法定計量単位による目盛又は表記が付されているものは、法定計量単位が併記されているものも含めて販売することができない。

第3章 7年の猶予期間の単位と移行の進め方

 保安上又は安全上の理由から、急速なSI化が困難な単位について、計量法改正時に7年の猶予期間が設けられた(猶予期限は、1999年9月30日)。これらの単位は、産業界で多く用いられている重力単位系(工学単位系)の9つの単位が該当し、計画的な移行が望まれる。
 7年の猶予期間の物象の状態の量は、力、力のモーメント、圧力、応力、仕事、工率、 熱量、熱伝導率、比熱容量であり、それぞれの単位は、順にN、N・m、Pa、Pa又はN/m、J、W、J、W/(m・℃)、J/(kg・℃)である。
 ここでは、いくつかの産業分野でSI化を実施しているので、その実施例から新計量法に沿った7年の猶予期間の単位の移行の進め方の参考となる事項について述べる。

1.力について

1.1 力の単位[kgf → N(ニュートン)]

 SI単位では力の単位はニュートン(N)で表す。力は質量と加速度の積であるという、物理学における運動の第二法則の力の定義より、質量m の物体に働く力F は、その物体に働く加速度をaとしたとき
  F = ma
で表される。ここで、質量、加速度のSI単位はそれぞれ、kg、m/sであるので、力の単位をSI基本単位で表すとkg・m/sとなる。SI単位ではこの力の単位を功績ある物理学者の名前をとって、ニュートン(N)と定めている。
 従来は力の単位として、質量と同じ単位の“kg”が使用されていた。日本では、20年ぐらい前から力の単位に質量と同じ単位の“kg”を使用することに問題があるとして、工学単位系では“kgf”を使用して表すことが多くなった。この表示は、質量と同じ単位の“kg”と区別するためであり、SI化ではなかった。
 SI化では“kgf”単位を“N”に切り換えていくことになる。従来単位(kgf)と、SI単位(N)との関係は、従来単位は地球上で働く重力加速度を基準に定めているので、標準重力加速度(9.80665 m/s2)を用いて
 1 kgf = 1 kg × 9.80665 m/s2 = 9.80665 N
となる。

1.2 SI化で注意すべき事項

 力に関する用語に重量がある。“重量”という用語には“質量”という意味と“力”という意味とがある。この場合、意味に対応した正しい単位を使用する必要があるが、質量との意味で重量を使用している場合は、できるだけ質量という用語を使用すべきである。
 参考 計量法は用語までを明確に規定していないが、SI化を機会に、なるべく正しく用語を使用するようにすべきである。

2. 力のモーメントについて

2.1 力のモーメントの単位[ kgf・m → N・m(ニュートンメートル)]

 力のモーメントやトルクの従来単位はkgf・mである。SIでは、これをN・mで表す。もちろん接頭語を用いてN・cmやkN・mも使用できる。接頭語を付す場合には、計量法による規制はないが、接頭語を一つだけ使用べきである。すなわち、kN・cmのような表記を行わない。接頭語については、JIS Z 8203で、接頭語の使用が標準化されているので、一般的にはこれに従うのがよい。
 単位記号と単位記号との間に中点を使用するかどうかについては、N・mのように簡単な場合には問題はないが、mNやmNmは誤読のおそれがあることから、中点を使用してN・mやmN・mと表記したほうがよい。一般的には、中点を使用することに統一したほうがよい。
 従来単位とSI単位との関係は、標準重力加速度(9.80665 m/s2)を用いて、
   1 kgf・m = 9.80665 N・m
となる。
 実際には、ボルトやナットの締付けトルクの場合だと、±10 %程度のバラツキが生じるが、1 kgf・m ≒ 10 N・m としても2 %の換算誤差しか生じない。

2.2 トルク計

 モーメントやトルクは、回転方向に加える力に支点から力点までの腕の長さを乗じたものであるから、機械要素部品の締付けトルクなどは、トルク計を使用して計量する。このトルク計は、機械式のものとして、腕のたわみ量からトルクを測定するもの(図3.1)と、あらかじめトルク値を設定して、その設定トルクに達したときに滑りを起こす構造のもの(図3.2)の2種類が市販されている。
 トルク計は、製造メーカーにおいて目盛板を張り替えたり、トルク設定値を変更して校正するなどしてSI目盛計器に再製できるので、計器のSI化は比較的に容易である。トルク値をデジタル表示するものは、回路基盤を取り替えるなどして、SI目盛に切替することができる。
 自動車の組立ラインや修理工場では、機械式トルク計が多く使用される。自動車工業は、モデルチェンジが3〜4年サイクルで行われ、組立ラインを更新時に、これまで使用した非SI単位のトルク計を全数引き上げ、製造メーカーでSI目盛のトルク計に改修・校正して、次の組立ラインで使用することができる。修理工場のトルク計は、数を必要としないので、SI化は容易であるといえる。
 重力単位系からSIへの変更は、今後急速に進展するが、製造メーカーは短期間の対応が困難と思われるので、なるべく早い時期からのSI移行準備が望まれる。
 自動車修理工場や町のガソリンスタンドのピットでは、トルク値が非SI単位のものとSI単位のものとが無差別に入ってくるため、新たにSI単位のトルク計を追加購入すればよいが、メカニックが非SI単位とSI単位との数値の違いをその都度使い分けをしなければならないという煩わしさがある。幸いにして、メカニックの多くは、自動車整備士の資格を所持しており、あまり問題視はされていない。しかし、SI化のための基礎教育は必要である。日本自動車整備振興会連合会がその任に当たっている。1)


▲図3.1:たわみ式トルク計



▲図3.2:滑り式トルク計


2.3 トルクチェッカ

 たわみ式トルク計は、使用頻度により、腕に永久ひずみが生じることがあるので、トルク計自体のチェックを行うトルクチェッカが必要となる。トルクチェッカの例を図3.3に示す。


▲図3.3:トルクチェッカの例

 図3.3のトルクチェッカは、非SI単位とSI単位のトルクをスイッチで切り替えができる方式のものである。
 SI化の過渡期には、このような新旧切り替え式のものも使用されている。kgf・mの猶予期限は、1999年9月30日である。そのため、このような新旧切り替え式のトルクチェッカは基本的に販売がされなくなる(販売されるものは猶予期限前に製造されたもののみ)。
 トルク計をSI化する際に、締付け精度をある範囲内に維持するために、トルクチェッカを常備することも大切なことである。

2.4 SI化で注意すべき事項

 設計において、モーメントの計算は重要である。重力単位系からSIに変更した場合、重力の加速度分だけ、すなわちSI化によって数値が約10倍となるため、注意が必要となる。また、ねじの締付けトルクも数値が約10倍になるため、理解が曖昧だと締付けトルク不足になることが懸念される。

3.圧力について

3.1 圧力の単位[kgf/cm2 → Pa(パスカル)、N/m2(ニュートン毎平方メートル)]

 圧力の定義は、単位面積にかかる力の大きさである。圧力のSI単位は、Pa又はN/m2であるが、SI単位と暫定的に維持される単位として"bar"が定められており、計量法においても法定計量単位として規定されている。また、計量法では、圧力の単位としてatmも法定計量単位として規定されている。
 従来単位で使用された圧力の単位の水銀柱ミリメートル(mmHg)、水柱ミリメートル(mmH2O)及び重量キログラム毎平方センチメートル(kgf/cm2)は、PaやN/m2あるいはbarに変更しなければならない。国内のSI化の状況を見ると、圧力の単位にはPaを使用する例が多くみられる。ISOの規格がbarを使用している場合には、barを使用している。
 また、気象通報は、航空気象の気圧の単位にhPaを使用することを決め、TVの天気予報などではすでにこの単位を使用している。
 これは、世界気象会議で1984年から、気圧の単位にmbarからhPaに移行することを採択し、我が国では1992年12月から計量法改正に先立って使用された。この場合、幸いにして単位がmbarからhPaに変わっただけで、数値そのものは変わらなかったので、混乱は生じなかった。hPaはすでに市民権を得ているようである。

3.2 圧力計

 ブルドン管式圧力計(図3.4)は、その構造上から、大気圧でブルドン管の伸縮がない状態であるから、この状態(大気圧)を基準にしての圧力が測定できる。大気圧は真空状態を0 Paとした絶対圧では98 kPa程度である。

▲図3.4:ブルドン管式圧力計の構造

 そのため、工業会ではkgf/cm2は大気圧基準で、Paを絶対圧で用いることが多かったが、猶予期間後は、Paに統一されるので、注意が必要である。例えば、圧力計において、真空基準か大気圧基準か判断ができないことが往々にしてあり、ISOでは、相対圧表示に“Pe”や“Gauge”を表示することを推奨している。(図3.5)

▲図3.5:Peを表示した圧力計の例

 その他に、JISでは絶対圧力計、微圧計、差圧計、精密圧力計、接点圧力計などを規定している。
 流体機械では、性能表示、仕様などに、圧力に水柱高さで表示する習慣がある。すなわち、圧力ヘッドである。この水柱メートル(mH2O)というのは、999.972 kg/m3の密度を有する1 mの高さの液柱が重力の加速度9.80665 m/s2のもとにおいて、その液柱の底面に及ぼす圧力である。
 このディメンジョンは、kg/m3× m × m/s2 =(kgm × m/s2)/m2 = N/m2 となる。すなわち、高さh [m]の関数として圧力を表示できる。
 ポンプの揚程、管の摩擦損失などでは、次の例のように圧力ヘッドを使用してきた。
 例:15 mの高さの所にあるの貯水槽に水を汲み上げるとき、入出管の直径を同一とし、管の摩擦損失を3 mとしたとき、ポンプの全揚程Hは、H = 15 + 3 = 18 mである。
 圧力ヘッド[m]は、長さのSI単位であり、今後も使用できる。しかし用語として、圧力ヘッドを単に“圧力 XX m”というべきではなく、“圧力ヘッドXX m”又は水頭“XX m”と表示する。
 SI化によって、ポンプの吸い込み側と吐き出し側との圧力を“kPa”で測定することになるが、これらを“圧力ヘッドXX m”又は“水頭XX m”で表示することもできる。
なお、最終段階の削除対象単位の内、血圧測定のmmHgは、引き続き使用することができる(第2章参照)。

3.3 圧力の換算関係

 多くの圧力に関する単位をSIに統一するためには、換算関係が必要になる。各種従来単位の換算関係を表3.1に示す。
表3.1 圧力の換算関係
Pa
bar
kgf/cm2
atm
mmH2O
mmHg及びTorr
1
1×105
9.80665×104
1.01325×105
9.80665
1.33322×105
1×10-5
1
9.80665×10-1
1.01325
9.80665×10-5
1.33322×10-3
1.01972×10-5
1.01972
1
1.03323
1×10-4
1.35951×10-3
9.86923×10-6
9.86923×10-1
9.67841×10-1
1
9.67841×10-5
1.31579×10-3
1.01972×10-1
1.01972×104
1×104
1.03323×104
1
1.35951×10
7.50062×10-3
7.50062×102
7.35559×102
7.60000×102
7.35559×10-2
1

3.4 SI化の事例

 圧力計は、機械、自動車、鉄鋼、造船、化学工業などで重力単位系に基づく計量単位が多く使用されてきた。装置に関連した圧力計のうち、取引や証明に該当する部分は主に高圧ガスの見なし証明や圧力容器の圧力証明に該当する部分がある。
 鉄道車両の運転室に設置されている圧力計は、 運転保安に関わるものであり、運輸省令により設置が義務付けられ、列車走行中は運転士が常時監視して運転操作しなければならない。その圧力計は、 従来単位“kgf/cm2 ”が長い歴史の中で業界に定着しいたが、“一挙に従来単位からSIを導入することとし”、SI単一目盛の圧力計に切り替えられた。
 従来の鉄道車両用圧力計の一目盛間隔は 0.2 kgf/cm2であり、実祭に車両で使用する圧力はその1/2の0.1 kgf/cm2単位で整備している。したがって、0.1 kgf/cm2をPa単位で換算すると、
0.1 kgf/cm2 ≒ 9.8 kPa =0.0098 MPa
となり、MPaでは少数点以下の桁数が多く覚えにくいことから、大部分が kPaを採用することにした。
 JRグループ及び相互乗り入れを行っている私鉄は“kPa”を採用しており、相互乗り入れを行っていない私鉄では“MPa”を採用しているところもある。
 この鉄道車両の運転保安上で重要なブレーキ圧を示す圧力計は、多くの人命に関わるものとして、SI化に慎重論があった。しかし、1993年にJIS E 4118(鉄道車両用ブルドン管圧力計)が改正され、非SI単位(kg/cm2)からSI単位(kPa又はMPa)に移行することとし、新旧単位の二重目盛は表示しないことにしているのが特徴である。これらから、新車両はもとより、現行車両も順次SI化されている。
 化学工業で用いられる圧力関係の計器で、新たにSI化する場合と計器の改造とが考えられる。対象設備を事前に充分調査し、SI化への対応計画を立てて推進する。
 猶予期間が終了すると、新たに製造する圧力計はすべてSI単位目盛の圧力計になる。現在のSI化が進んだ工場でも、装置の中の圧力計にSI単位表示と非SI単位表示の圧力計とが混在する状態が発生する。こうした混在状態は、計器の読み違えや判断ミスを起こすことが考えらえるが、実施工場では生産活動がスムーズに行われていることが多い。
 このためには、すでに猶予期間が1年余りとなっているので、SI化に対して十分なる計画をもつことが何よりも必要である。

3.5 SI化で注意すべき事項

 ヨーロッパでは、圧力の単位に“bar”を使用する例がある。これはkg/cm2と2%程度の差しかないので、数値を変えずに単位だけを変える利点がある。しかし、日本では圧力の単位に“Pa”を使用するように決めている産業団体が多い。計量法では、“bar”も使用できるようになっている。
 実務上では、規格や図面に“Pa”を使用した場合に、絶対圧なのか、ゲージ圧なのかが判断できないことがある。ゲージ圧である場合には、その旨(Pe又はGauge)を明示すべきである。98 kPaの違いは、無視できない。
 JISでは、圧力計に絶対圧のときにだけ“abs”を表示することにしている(図3.6)。

▲絶対圧を表示した圧力計


4.応力について

4.1 応力の単位[kgf/mm2 → Pa(パスカル)、N/mm2(ニュートン毎平方ミリメートル)]

 応力は、圧力の定義と同じである。この応力は、直接に測定できないので、この算出には試験片の横断面を長さ測定器で測定して求め、引張試験機で試験片に付加した力を読み取り、この力“kN”を断面“mm2”で除して求める。
 一般構造用鋼材のSS 41は、JISのSI化によってSS 400となった。これは、引張強さが400〜510 N/mm2以上であるようにJISで規定している材料記号である。41 kgf/mm2を換算すると、402 N/mm2(又はMPa)であるが、規格値はその下限が400 N/mm2としている。
 なお、鉄鋼製品のJISでは、応力の単位に“N/mm2”を使用しているが、これはISO/TC 17(鉄鋼)が規格に使用していることに起因している。機械学会では応力の単位に“MPa”や “GPa”を使用していることから、機械工業の分野ではMPaやGPaを多く使用する傾向にある。
 また、鉄鋼JISは、予告方式2)を採用し、予告日以降はSIによる規格値を採用し、鋼材検査証明書などにも適用された。この方式は、日本の産業界に大きな影響を与え、SI化の起爆剤となった。
 土木分野では、コンクリート関係が“N/mm2”を、土質関係が“N/m2”を、そして岩盤関係が“MPa”を使用する傾向にある。業界としては、統一したいという意見と、自然淘汰を待つのがよい、という意見が支配的である。
 応力の換算関係を表3.2に示す。
▼表3.2 応力の換算関係
Pa
MPa又はN/mm2
kgf/mm2
kgf/cm2
1
1×106
9.80665×106
9.80665×104
1×10-6
1
9.80665
9.80665×10-2
1.01972×10-7
1.01972×10-1
1
1×10-2
1.01972×10-5
1.01972×10
1×102
1

4.2 SI化で注意すべき事項

 土木建築分野では、引張強さや応力の単位にPa又はN/mm2を使用する例が見られる。鉄鋼JISの影響がある。一方、機械、自動車分野では、多くの場合に、Paを使用するようにし、力学計算の場合な、N/mm2を使用する例が多く見られる。

5.仕事について

5.1 仕事の単位[kg・m、kgf・m → J(ジュール)、W・s(ワット秒)]

 仕事の定義は、力の大きさ 1 Nが、その力の方向に物体を1 m動かすときにする仕事をいい、単位はジュールで表す。すなわち、
仕事 = 力 × 動いた距離
 仕事というのは、時間の概念が入っていないので、どれだけの力でどれだけの距離を移動させたかで決まる。時間の概念が入ると、仕事率になる。
 仕事のディメンジョンは、次のようになる。
力 × 動いた距離 = [kg×m] = J
 すなわち、SIでは仕事はN・mをジュール“J”という固有の名詞で与えられ、定義は1 Nの力で1 mの間を物体を移動させるときの仕事が1 Jである。
 従来単位とSI単位との関係は
1 kgf・m = 9.80665 N・m ≒ 9.8 J
となる。
 W・sやW・hは、電力量の単位として使用され、通常、kW・hで表す。このkW・hは電気エネルギーであるが、ほかに熱エネルギー、化学エネルギー、光エネルギー、力学エネルギー、弾性エネルギーなどがある。これらの単位は、ジュール(J)で表す。

5.2 SI化で注意すべき事項

 仕事は、本質的に熱と同じエネルギの一つである。この量に対する単位は、“力 × 動いた距離”を“J”で表すので、思考過程においてはN・mで表し、1 N・m = 1 Jとしたほうが現実的かもしれない。
 一般的には、仕事を直接に計量することはない。

6.仕事率、工率について

6.1 仕事率、工率の単位[kg・m/s、kgf・m/s → W(ワット)、J/s(ジュール毎秒)]

 仕事率、工率は、単位時間に行った仕事であるから、その単位はkgf・m/sをJ/sやWに変更しなければならない。電気の分野では、すでに仕事率はSI単位のワット(W)を使用していることから、その他の分野で使用する仕事率の単位はWやJ/sに変更することになる。
1 W = 1 J/s (毎秒1 Jの仕事率、工率)
 仕事率や工率の従来単位には、仏馬力(PS)がある。
1 PS = 75 kgf・m/s = 75 × 9.806 65 = 735.5 W
 また、英馬力(HP)がある。これは、毎秒550 ft・lb(フートポンド)の割合でなされる仕事であり、換算すると745.7 Wとなる。昨今では、あまり使用されていないようである。なお、1 HP = 1.014 PS の関係がある。
 仕事率、工率の換算関係を表3.3に示す。
▼表3.3 仕事率、工率の換算関係
kW
PS
kgfロ/s
kcal/k
1
7.355×10-1
9.80665×10-3
1.16279×10-3
1.35962
1
1.33333×10-2
1.50895×10-3
1.01972×10-7
7.5×10
1
1.18572×10-1
8.600×102
6.32529×102
8.43371
1
(注)1 W = 1 J/s
1 PS = 0.7335 kW
1 cal = 4.18605

6.2 SI化で注意すべき事項

 新計量法附則第6条に、仏馬力(PS)は内燃機関に関する取引又は証明等について、当分の間、工率の法定計量単位とみなす、ことが規定されている。しかしながら、一般的には力やトルクをSI化した場合には、工率の単位だけを従来単位で表示することは、繁雑さを導くものであるといえる。

7.熱量について

7.1 熱量の単位[cal → J(ジュール)]

 従来、熱量の単位は“cal”を用いてきたが、SIでは“J”に変更する必要がある。従来では仕事をカロリーで表すために、N・mで計算して求めた値を換算係数4.2で除していたが、ジュール(J)で表す場合は、4.2で除さない。
 従来単位(cal)と、SI単位(J)の関係は
 1 cal = 4.18605 J
である。
 熱力学の第1法則では、熱は本質上仕事と同じエネルギーであって、仕事を熱に変えることも又その逆も可能である、と述べている。単位も仕事と同じジュール(J)である。熱量(Q)と力学的エネルギー(Gh)とは、熱の仕事当量(A)によって関係付けられる(図3.7)。すなわち、Q = A Gh(t1-t0) (J)

▲図3.7:ジュールの実験

 製品の性能の発熱量を示すカタログ物性値や性能を表すのに、熱量の単位を使用することがままある。このカタログの記載値は、猶予期間後はSI単位のジュール(J)を使用することになる。

7.2 SI化で注意すべき事項

 熱量の“cal”を“J”に変更することで、熱量による組立量である熱容量(J/℃又はJ/K)、質量エントロピー[J/(kg・K)]、質量熱力学エネルギー(J/kg)なども変更しなければならない。これらの単位は法定計量単位として規定されているわけではないが、熱量に“J”することにより、変更することが合理的だと言える。
 熱伝導率や熱伝達係数の単位も“cal”に関係するが、8.に示すように、“W”を含む単位記号を使用することになる。

8.熱伝導率について

8.1 熱伝導率の単位[cal/(s・m・℃) → W/(m・℃)(ワット毎メートル毎度)、W/(m・K)( ワット毎メートル毎ケルビン)]

 熱伝導率は、物体内部の等温面の単位面積を通って単位時間に垂直に流れる熱量と、この方向における温度こう配(温度差/距離)との比であり、一般に熱の伝わりやすさを表す量である。熱伝導率の定義は、その煤質の長さが1 mにつき1度の温度こう配があるとき、その温度こう配の方向に垂直な 1 m2の断面を通過して、1秒につき1 Jの熱量が伝導されることをいう。
 熱伝導率の単位は、kcal/(s・m・℃)が使用されてきたが、 SIでは、W /(m・℃)又はW/(m・K)を使用する。
 熱伝導率の単位は、機械、電気、自動車、化学装置の熱交換器などの伝熱計算でよく用いられる。例えば、熱交換器メーカー又はプラントメーカーとその機器を発注した企業との間での取り交わされる図面、設計計算書などの中で用いられる。現在では、まだ従来単位のcalが使われている場合が多いように見受けられるが、取引、証明行為などには必ずSI単位の使用が必要となる。
 伝熱計算のソフトは、SI単位と非SI単位のどちらでも選択できる内容になっている場合が多く、単位への慣れが浸透するのも時間の問題であると思われる。

8.2 SI化で注意すべき事項

 熱伝導率の単位は、“cal”を含んでいるので、これをSI単位に変更する。“cal”と“W”の関係は、J/s = W の関係から、J = W・s を使用すると、
 1 cal/(s・m・℃) = 4.18605 W/(m・℃)
が得られる。また、温度については、℃又はKを使用する。一般的には、温度に℃を使用するので、敢えてKを使用する必要はない。

9.比熱容量について

9.1 比熱容量の単位[cal/(kg・℃) → J/(kg・℃)(ジュール毎キログラム毎度)、J/(kg・K)(ジュール毎キログラム毎ケルビン)]

 比熱容量は、物質1 kgの温度を1 度だけ上げるのに必要な熱量を示すものである。その単位は、熱量のcalを含んだ組立単位kcal/(kg・℃)が使用されてきたが、SIではJ/(kg・℃)又はJ/(kg・K)を使用する。
 比熱容量は化学工業の分野で比較的多く使用されているが、取引又は証明に関して、猶予期限後に比熱容量の単位を使用する場合は、SI単位を使用する必要がある。

9.2 SI化で注意すべき事項

 比熱容量の単位は、“cal”を含んでいるので、これを“J”に変更する。

参考文献
1)日本自動車整備振興会連合会教科書編集委員会:自動車整備のSI化、(社)日本自動車整備振興会連合会
2)渡辺武夫:JIS鉄鋼規格のSI単位移行計画、標準化ジャーナル1986、 2、 p.116、(財)日本規格協会

Q&A


1. 取引・証明について

Q 1:取引・証明に該当するか否かの判断ポイントは何か。

A 1:取引や証明に該当するか否かは、 次のとおりです。
取引:有償であると無償であるとを問わず、物又は役務の給付を目的とする業務上の 行為をいいます。一連の行為の中に物象の状態の量があれば、その単位に法定計量単位を使用しなければなりません。
証明:公に又は業務上他人に一定の事実が真実である旨を表明することをいいます。したがって、当事者間以外の第三者へ表明する行為が計量法上の「証明」行為です。一定の事実が現に存在することなく、ある計画を実施することについて、許諾を求める許認可申請などは、「証明」には該当しません。
なお、取引・証明に該当しない具体的な例については、以下のとおりです。

Q 2:関係会社、協力会社などグループ会社とが一体となって業務を行う場合でも、取引・証明行為はあるのか。

A 2:関係会社、協力会社を問わず、 他社又は他法人などとの、“有償であると無償であるとを問わず、物又は役務の給付を目的とする業務上の行為”は、すべて取引に該当します。

Q 3:非SI単位で表示された文書情報は、猶予期間終了後も取引に使用することは可能か。

A 3:猶予期間内に非SI単位を使用した文書情報は、記載事項に変更がない限り、猶予期間後も継続して使用することができます。なお、猶予期間内に作成された非SI単位で表示された文書情報でも、猶予期間終了後に記載事項に変更や再発注を行う場合には、法定計量単位への変更をしなければなりません。

Q 4:非SI単位で交した契約書は、猶予期間内にSI単位に差し替える必要があるか。

A 4:SI単位に差し替える必要はありません。ただし、猶予期間終了後に契約変更を行う場合には、法定計量単位への変更が必要となります。

Q 5:猶予期間終了後に、取引・証明事項に非SI単位を併記することは認められるのか。

A 5:非法定計量単位の併記は、法定計量単位及び非法定計量単位を同等に扱うことになりますので、認められていません。しかしながら、非法定計量単位を参考値として付すことは可能です。参考値として付す場合には、参考値であることが分かるよう、括弧等を用いる必要があります。ただし、SI単記が望ましいことは言うまでもありません。

Q 6:各省庁へ申請する書類は、SI単位、非SI単位のどちらでも使用可能か

。 A 6:猶予期間終了後は、SI単位を使用することになります。猶予期間終了前後には、各省庁の窓口でよく確認をして、対処して下さい。

Q 7:公的文書類に添付する参考書類又は自主的添付については、非SI単位を使用したものでもよいか。

A 7:参考書類又は自主的添付書類については、証明そのものではありませんので、規制はありません。

Q 8:ユーザーへ提出する製品に関する技術文書(例えば、分析結果)に記載する単位は、SI単位でなくてはならないのか。

A 8:取引や証明行為の一環で提出する技術文書類は、SI単位の使用が義務付けられます。単なる情報のやり取りである場合には、その規制はありません。

Q 9:保安監査、使用前検査などにおいて、測定記録等文書類を閲覧のために求められることがある。提示するという行為は、証明とは異なるのではないか。

A 9:単に管理が十分に行われているかどうかを確認するために、いわば無作為にチェックする書類等は、ご指摘のように証明ではありません。

Q10:猶予期間終了後は、既存の図面をSI化しなければならないのか。

A10:取引に使用するための仕様が示されている既存の図面は、SI化が必要となります。

2. 計量器について

Q11:従来単位目盛の計量器は、SI単位目盛の計量器に交換しなければならないのか。

A11:計量法上は従来単位目盛の計量器を使用しても問題ありません。しかしながら、従来単位の計量器を用いて証明等を行う場合では、法定計量単位に換算して行う必要がありますので、換算は十分注意して行って下さい。ただし、計量法は、法定計量単位以外の計量器の販売を規制していますので、猶予期間終了後は従来単位目盛の計量器が在庫品以外は入手できなくなりますので、注意が必要です。

Q12:現在、SI目盛に従来単位目盛を併記した二重目盛の計量器を使用しているが、猶予期間終了後も補給用として、二重目盛の計量器を購入できるのか。

A12:猶予期間終了後は、法定計量単位以外の単位を付した計量器の販売を規制していますので、このような二重目盛の計量器は在庫品を除き販売できません。

Q13:計器類は、買い換える必要があるのか。

A13:計量法では非法定計量単位を付した計量器の販売を規制しています。したがって、非法定計量単位を付した計量器を買い換える必要はありません。

Q14:社内で使用している重量キログラム毎平方センチメートル(kgf/cm) の目盛をもつブルドン管式圧力計を使用単位の猶予期間終了後修理して、kgf/cmの目盛のままで使用してもよいか。

A14:従来の計量器を修理することは計量法上問題ありませんが、修理事業者が行う業務には証明行為が伴う場合があります。すなわち、修理の時点で非SI単位をSI単位のものに付け替えなければならないという義務はありませんが、発行する修理証明書等取引・証明に該当する書面上では、SI単位に換算しなければなりません。なお、SI化の推進という観点からは、修理の際にSI単位の目盛に替えることが望ましいことは言うまでもありません。

Q15:SI単位の計量器を非SI単位のままで修理を行うことは可能か。

A15:猶予期間終了後も猶予期間終了前に製造された計量器であれば非SI単位のままで修理・検定はできます。しかしながら、修理の際の検査成績書は法定計量単位で発行されます。

Q16:kgf/cmの圧力計について、kPa表示の記録紙を使用してもよいか。

A16:SI化によって、圧力の本質が変わるわけではありません。内部で使用するものは、kPa表示の記録紙を使用しても単位の換算の対応が付いていれば問題はありません。

Q17:現在、非SI単位とSI単位との二重目盛の計量器を使用しているが、猶予期間終了後に、補給用に購入できるのか。

A17:猶予期限後は、猶予期間前に製造された在庫品を除き、法定計量単位以外の目盛を付した計量器を販売することはできません。したがいまして、二重目盛の計量器も基本的に販売されません。なお、既設の二重目盛の計量器は使用できます。

Q18:ガソリンをポリタンク一杯いくらで販売することは計量法上違反になるか。

A18:ポリタンクはおおよその体積は分かりますが、計量器ではありません。取引・証明における計量には、計量器でないものは使用してはいけませんので、ポリタンクでガソリンを計量して販売することはできません。

3. 罰則について

Q19:猶予期間終了後に削除単位を用いて取引・証明を行った場合、罰則があるのか。

A19:このような行為に対しては、計量法第8条第1項に違反するため、50万円以下の罰金に処されることになります。

Q20:猶予期間終了後に削除単位の目盛を付した計量器を製造し、それを販売した場合、どのような罰則があるのか。

A20:このような行為に対しては、計量法第9条第1項に違反するため、50万円以下の罰金に処されることになります。

4. 用語について

Q21:重量という用語は、今後とも使用することができるか

A21:重力単位系では重量という用語は、質量と荷重(力)の意味に使用されてきました。単位記号も、kg、kgw又はkg重を使用してきました。計量法では、用語の使用を明確には規定していませんが、SI化を機会に単位記号、接頭語などと同様に、用語も正しく使用することをお奨めいたします。重量を質量の概念で使用する場合にはその単位にkgを、力の概念で使用する場合にはその単位にNを使用します。

Q22:重量のように用語が変わるものがほかにあるのか。単位同様に、猶予期限後は用語が問題となるか。

A22:回転速度は、これまでに回転数や回転速さという用語が一般的に使用されてきました。しかし、これらは時間の概念が入ったものではありませんので、SI化を機会に修正使用すべきです。対応英語も number of rotation からrotational frequencyに変えています。

Q23:負圧という用語は、絶対圧では使用できるのか。

A23:大気圧基準の重力単位系では、大気圧よりも低い圧力の場合には、負圧という用語を使用しましたが、絶対圧では真空が基準ですから、負圧は存在しません。負圧260 mmHgは、真空(0 Pa)から500 mmHgのところを67 kPaのように表します。

24:これまでモータやエンジンの回転数という用語を使用したが、回転速度としなければならないのか。

Q A24:従来、回転数、回転速度、回転速さなどが使用されてきましたが。新計量法では回転速度という用語を使用しています。回転数ですと、時間の概念が入っていませんので、単位時間当りの回転数を回転速度としています。なお、新計量法では用語の厳密な使用規定はありませんが、SI化の趣旨に沿って、用語もなるべく正しく使用すべきです。

5.単位について

Q25:温度の単位の使い分けはどうなっていますか。

A25:SIの基本量の一つである熱力学温度の単位はケルビン(K)ですが、計量法では温度としてケルビンのほかにセルシウス度(℃又は度)が法定計量単位として認められています。セルシウス度(℃又は度)は、生活に密接な単位で、ケルビンは熱力学温度です。すべての温度にKを使用するのではなく、この区別で温度の単位を使用するのが一般的です。

Q26:CGS単位系の粘度(P)及び動粘度(St)は、使用可能か。

A26:計量法では、SI単位のある量の非SI単位として、粘度(P)及び動粘度(St)が使用できます。これらの単位に基づく数値は、潤滑油の粘度及び動粘度に10W-30のような表示をしますが、当分の間、流体の粘度及び動粘度に使用できます。

Q27:SI単位では、熱量の単位はジュール(J)であるが、ガス機器の消費量の単位がワット(W)になった経緯は何か。また、ガス消費流量を算出するにはどうすればよいのか。

A27:国内の関連業界(都市ガス、LPG、石油など)がSI化を機に、家電製品で使用するワット(W)を表示することで足並みを揃えようとの動きがあり、また、国際的にも主要国がW を指向していたことから、都市ガスの機器もキロワット(kW)表示することが国内でも採用されました(例えば、ガス用品の検定等に関する省令)。
次に、ガス消費流量(m/h)を算出する場合、ガスの発熱量が10 MJ/mであることから、kWをMJ/hに直す必要があります。1 kW = 1 kJ/s = 3600 kJ/h = 3.6 MJ/hですから、例えぱ、30 kWの湯沸器は30×3.6 MJ/h、すなわち、108 MJ/hとなります。これをガス発熱量で除せぱ、m/hとしてガス消費流量が算出できます。例えば、46 MJ/mのガスの場合には、108/46 ≒ 2.3 m/hとなります。ガスの発熱量が定まっている場合には、最初から換算係数を乗ずることで算出できます。
上記の例では、換算係数が3.5/46 ≒ 0.078ですから、30×0.078 ≒ 2.3 m/hとなります。

6. 単位記号について

Q28:圧力単位表示Paで、絶対圧とゲージ圧との表示方法はあるのか。

A28:Paは、真空時に0 Paですから、大気圧基準のゲージ圧をPaに変換して表示しますと、その区別が付かない場合があります。ISOでは、ゲージ圧にPe又はGaugeを表示することを推奨しています。

Q29:容器やタンクにKGと表示している場合がある。これは正しいか。

A29:計量法では、標準となる単位記号を示していますので、法を違反しているわけではありませんが、標準として定められているものはkgです。大文字Kは、温度ケルビンの単位記号として、また大文字Gは10を表す接頭語の記号として定められていますので誤解を生じる可能性もあります。

Q30:kJ/kgという表示は、SI接頭語が二つ使用されているが正しいか。

A30:SI接頭語は一つだけ使用するようにISOやJISに規定されています。kgはSI基本単位でもあり、これは一つの単位として数える例外中の例外です。

Q31:3.5インチフロッピーディスクというのは、ヤードポンド系単位であるが、今だに使用されている。計量法違反ではないか。

A31:3.5型フロッピーディスクと表示されて販売されていますので、計量法違反ではありません。テレビ画面のサイズも29インチではなく29型と表示しています。消費者がインチで言うことには、計量法は規制の対象にはなりません。しかし、SI化への切り換えが望まれます。

Q32:気体(ガス)の標準状態は、どのように表すのか。

A32:単位記号にはその意味を表すために、添字を使用しないようにすべきです、標準状態又はnormalは、量記号か単位記号の後に括弧付けで表すのが一般的です。

Q33:標準状態(NTP)の気体(ガス)の表示をする場合、「5 Nm(5ノルマルmの意)」の表示は許されるか。「5 m(N.T.P)」と表示すべきか。

A33:NmのNは、力の単位のニュートンと間違えることが考えられますので、単位の後に5 m(Normal)又は5 m(標準状態)のように表示するか、量記号に添字として付ける方法、VNormal = 5 m又はVN = 5 mのように表示します。

7. 換算について

Q34:猶予期間終了後は、既設の非SI単位目盛の計量器の数値をSI単位に換算して取引・証明に使用してもよいか。

A34:法定計量単位に換算して取引・証明に用いることは計量法上許されています。しかしながら、測定する際に誤読する恐れがありますので、換算表を設置するなどの措置を行うことをお奨めします。

8. その他

Q35:小学校、中学校、高等学校など、学校教育でのSI単位についての対応はどのようになっているのか。

A35:小学校全学年は平成4年度から、中学校全学年は平成5年度から、高等学校1学年は平成6年度から、高等学校2学年は平成7年度から、そして高等学校3学年は平成8年度からSIを教科書採用して教育が行われています。

Q36:製品を国内商社へ販売し、その商社が海外へそのまま輸出する場合、国内商社とは国内取引となるが、製品への単位記載は相手国の計量単位としてよいか。

A36:計量法は、国内法ですから、国内商社へ販売する場合には計量法の適用を受けますが、仕向け地が明確な場合には、その国の計量単位表示ができます。

Q37:現在、コンピューターシステムは、従来単位をベースにしており、対外文章出力時にSI単位に変換している。猶予期間終了後に何か間題があるか。

A37:情報伝達、流通等において使用する単位は、SI化の対象になります。情報の入力時からSI化すればよいのですが、結果的には、出力時にSI化されていればよいことになります。


− おわり −