アンの愛情の言葉 第53回

「……私、略してフィルよ。フィルと呼んでね。あなたたちの名前は?」
「こちらは、プリシラ・グラント」アンが指さした。
「こっちが、アン・シャーリー」今度はプリシラがさした。
「私たち、プリンスエドワード島から来たの」二人はそろって言った。
「私はノヴァスコシア州のボーリングブローク出身よ」
「ボーリングブロークですって!」アンが叫んだ。「私の生まれたところよ」

『アンの愛情』(モンゴメリ作、松本侑子訳)より
集英社文庫 第4章 49頁

東京では、桜の花の季節となりました。
いよいよ4月がはじまりますね。
今日の言葉は、カナダ本土の大学に入ったばかりのアンが、初めて友だちを作る場面です。
大学に入ったアンは、自分と同じプリンスエドワード島出身のプリシラ・グラントと2人で、大学へ入学手続きに出かけましたが、誰ひとりとして、知り合いがいませんでした。
アンとプリシラは、見知らぬ人たちばかりの中で、居心地の悪さ、疎外感をおぼえて、寂しく下宿に帰っていきます。
その午後、下宿前の美しい墓地を散歩していると、きれいな女子に出会います。
それがアンの親友となる同級生のフィル・ゴードンです。
やがてアンとフィルは、一緒に一軒家を借りて共同生活をするほどの仲良しとなるのです。

さて、友だちを作ること……。最初は、勇気がいります。
アンに話しかけてきたフィルも、はじめは声をかける決心がつかず、何度もあたりをうろうろしました。
でも、勇気を出して話しかけたからこそ、アンとフィルは知り合い、親しい友となったのです。
まずは、自分から名乗ること。
さらには、出身地、住んでいるところなど、おたがいに親しみが持てるような事柄を分かちあうこと。
たとえばアンとフィルは、どちらもノヴァスコシア州ボーリングブロークの出身だとわかり、たがいに親近感を持ちます。
あなたの春、出逢いの季節です。
新しい職場、新しい学校、新しい習い事、新しいサークル、新しい暮らし……。
さまざまな場所で、あなたにの未来につながる、新しい出逢いが待っています。
すてきな人を見つけたら、フィルのように勇気を出して、話しかけてみてください。
私も新しい心の友を作りたいと思っています。

☆参考情報
松本侑子さんと行くカナダ『赤毛のアン』ツアー(今年6/5日〜6/11・5泊7日)では、アンシリーズ第3巻『アンの愛情』の舞台もご案内します。
今日の言葉のアンが入学した大学キャンパスとレンガの校舎、アンの下宿前の美しい墓地公園など、『アンの愛情』に描かれるほとんどすべての場所を旅します。
現在31名のお申し込みです(定員35名)。
ご興味がおありの方は、主催者・株式会社ケイライントラベルにお問い合せください。
電話 03-3506-3466 担当・森部
ツアーの公式サイト
http://www.klinetravel.co.jp/anne/quilt_tour_ann2009.htm
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お知らせを4つです。
1)連載小説『恋の蛍 山崎富栄と太宰治』第2回花嫁 「小説宝石」4月号
2)講演『赤毛のアンへの旅〜秘められた愛と謎』@北九州市 5/23(土)
3)松本侑子さんと行く「イギリス物語紀行」 7/9(木)〜7/15(水)5泊7日
4)3月のサイン本プレゼント 〆切は明日3月31日(火)
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1)太宰治生誕100周年記念連載
『恋の蛍 山崎富栄と太宰治』第2回「花嫁」
掲載誌は、「小説宝石」4月号(光文社・780円)
現在、全国の書店の文芸誌コーナーで、好評発売中です。
4月号の特集は、官能小説! 渡辺淳一さんなどの短編が満載です。
目次は以下。
http://www.kobunsha.com/shelf/magazine/current?seriesid=104001
☆「恋の蛍」前号のあらすじ
「昭和二十三年、太宰治と入水した山崎富栄は、お茶の水美容洋裁学校校長の山崎晴弘の娘として大正八年に生まれた。学校は繁栄して全国から生徒が集まり、富栄は富裕な家庭に育ったが、大正十二年、関東大震災後の火災で本郷の校舎と自宅は全焼する。」
最新号の連載2回では、昭和10年代の戦時下、銀座で美容室を経営する一人前の美容師になっていく富栄の成長、そして三井物産社員とのお見合い結婚までを、当時の世相を交えて描きます。(次へ)
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