アンの愛情の言葉 第50回
尊いものはすべてのちに見つかる
探し求めるものよ、前へ出(いで)よ
なぜなら愛が運命とともにたえまなく働きかけるとき
ヴェイルがひかれ、隠れていた価値があらわれるのだから
テニスン
All precious things discovered late
To those that seek them issue forth,
For Love in sequel works with Fate,
And draws the veil from hidden worth.
--TENNYSON
モンゴメリ作『アンの愛情』
冒頭の題辞より
"Anne of the Island" by L.M.Montgomery
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心の同類のみなさま、こんにちは!
街はクリスマスの装いで、きれいですね。
先月は、メルマガをお送りできず、本当にすみませんでした。
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さて、今日の言葉は、『アンの愛情』の冒頭に、モンゴメリがつけた詩の4行です。
もとになったのは、19世紀の英国詩人テニスンの詩「白昼夢」。
「白昼夢」は、欧州のおとぎ話「眠り姫」をモチーフにした物語詩です。
魔法にかけられた眠れる森のお城に、美しいお姫さまが眠っている。
そこへ色々な若者がやってきますが、茨にとらえられて、城に近づくことができない。
けれど最後に、真実の王子が訪れると、城に入ることができ、
眠っている姫を、キスで目覚めさせて、二人は幸せな結婚をする……。
このロマンチックなおとぎ話にもとづいた詩の4行が、
『アンの愛情』の始めに、引用されているのです。
この4行は、テニスンの詩の「王子の到着」という部分から、引用されています。
つまり、真実の王子が訪れて、姫が目覚めるところです。
『赤毛のアン』も『アンの青春』も、冒頭に、詩が書かれていますす。
いずれも、その物語におけるアンの意味を象徴する詩です。
『アンの愛情』の場合は、詩の4行が、次のことを象徴しています。
物語のなかで、アンには、色々な若者がやって来ますが、
アンの心というお城に入ることはできません。
けれど最後になって、真実の王子があらわれ、
愛によって、アンは、少女という「眠り」の季節から、大人の女性へと目覚る。
そしてアンと王子の二人は、幸せに結ばれる……。
甘い予感をもたらす、モンゴメリらしいロマンチックな詩の引用です。
さて、詩の意味ですが、深い示唆があると思います。
尊いものはすべてのちに見つかる
探し求めるものよ、前へ出(いで)よ
なぜなら愛が運命とともにたえまなく働きかけるとき
ヴェイルがひかれ、隠れていた価値があらわれるのだから
テニスン
1行めにあるように、
「価値のあるものはすべてのちに見つかる」のだと思います。
最初から、やすやすと見つかることは、決してありません。
さまざまな試行錯誤や失敗、といった、ほろ苦い経験を重ねてこそ、
本当に大切なものに、私たちは気がつくのです。
また、その大切なものを見つけるには、詩の3行めに書かれているように、
「愛」と、「たえまない働きかけ」、つまり努力と、「運」も必要なのだと、
この詩は、教えてくれます。
あなたの大切なもの、価値あるものは、きっとあなたのまわりにあります。
人は、はるか遠くの彼方から、幸福を見つけることはありません。
日常の暮らしにこそ、大切なもの、尊いもの、価値あるものが隠されているのです……。それを教えてくれることが、『アン』シリーズの魅力なのだと思います。
あわただしい12月ですが、どうぞ暖かくなさって、おすこやかに、
楽しく、丁寧に、良き毎日をおすごしくださいますように……。
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