ひとり暮らしのプログラム
元気なシングルライフの心構えとテクニック
三宅菊子
じゃこめてい出版 1987.11.6

1982年から1984にかけて「チームワーク」(東京出版販売刊)という小冊子で本屋さんで働いているかなり若い人に向けに書いたものが元原稿、とのこと。
「以前に一人暮らしの本を出してからの数年間で、ひとり暮らしということが全く特別なことではなくなった」そうです。内容は・・・当時の女性誌っぽいかな?
私にとっては、古本ではなく新品で買った唯一のミヤケ本であり最初に読んだミヤケ本でもあります。当時、やっとお小遣いでこういう本が買える年齢になったのです。それまでは図書館で「じゃこめてい出版」の本を探しては読み、巻末の本の紹介だけで三宅さんの本に強烈な憧れを持っていたのでした。しかし買えるようになったらほとんど売っていなかった。あのころ田舎の本屋というのはたいへん不自由なものでした。
* * *
(「頑張ることはイイコトか?」より)
何かをしなければ、という義務感は、ほんとに疲れてしまう。けど、しなくてもいいという解放感は、疲れを吹き飛ばす以上に素敵な効能を持っていると思いません?
(略)
それで、ほらストライキでも、指名ストとか拠点ストとかあるじゃない。あれみたいに、部分的休み方式というのを考案したのでした。
たとえば今週は、整理&片づけを一切しなかった。週の半ばくらいになると、読みかけの雑誌、脱ぎ捨てたセーター、お菓子の空箱、いろんなモノが部屋いっぱいに散らばります。いつもなら、あー片づけなくちゃ、と思うのだけど---何しろ今週はその部門がお休みなので。セーターを踏み越え、雑誌を蹴っ飛ばして、カブの高山式漬け物と、オックステールのシチューなど、つまりやたら料理に励んだりして。
で、来週は料理部門のストなのね。掃除には力を入れ、ふだんはほったらかしの棚の中とか全部ゾーキンがけしたりして、部屋じゅうキレイに片づけて。でも台所にはほとんど立ちません。食事はなるべく外食、あとは先週のシチューを暖めて食べるかカブの漬け物でお茶漬け。
こんな具合に、やたら美容に凝る週、お化粧全然しない週、プールと体操に力を入れる週、体を動かすことを一切拒否して出かけるにもタクシーに乗ってばかりの週・・・どこかを休んでどこかに偏って暮らす。
いけないコトかもしれないけれど、気持ちも時間も体力も、だいぶ楽になるのです。どこかの部分、「休み」ときめてしまってあると、たとえば洗濯でも山のように溜めて、それを罪悪に感じない、むしろ解放感で眺める。こういう、「頑張らない」精神が、生活&人生にゆとりをもたらすような気がします。
どこかを怠けると、必然的に、どこかに力が集中する。と、私は考えてるのだけれど、そうはうまくいかないかしら。
(「興味本位のベンキョーが一番」より)
大人が行く学校や教室、カルチャー講座などが大流行の昨今。でも、あれは月謝もかかるし時間の制約もある。(だからこそ一生懸命になって、何かを覚える、というメリットはありますけどね)
”自分学校”なら休みたいときに休めるし(これはほんとうは非常に困る点でもありますが)月謝が安いことが嬉しいではありませんか!TVとか本、雑誌を先生にして、ひとりでのんびり、何年でも在学できる点も嬉しいし。
(略)
”自分学校”のもうひとつのメリットは、教科カリキュラムを自分で組めることだ。英語でも、インド哲学でも、まくら目編みでも、フランス料理でも・・・好きな課目だけを選んで時間割も勝手気まま。その上、たとえば語学とか手芸とか、誰が考えても「役に立ちそう」な課目に限定する必要もないのだ。
(略)
見た映画の話、面白く読んだ本、他人の噂ばなし・・・何か自分の気に入りテーマを、ノートにどんどん書きつけていく。そのテーマに関する情報収集に努力する。これを単なる遊びとしてバラバラに行うのでなく、”学校”なんだ、という意識を持って継続してやっていく。
そういう”自分学校”を創立して、教育委員会やPTAの役割も自分でやってしまう。よく偉い人が「人生すべて勉強です」とか「死ぬまで修行でございます」などとおっしゃるけれど---そんなたいそうな心構えはしなくたって、”自分学校”はかなり面白く通学できそうな気がする。
そして、最終的には、(続けてさえいれば)何かトクもあるだろう。
(「不安定は自然の摂理です」より)
けど、孤独の反省地獄におちいるのもよくありません。反省は自己嫌悪を生み、罪悪感や厭世感さえ生み出しかねないので。
それよりも、人間は誰でも、原因不明の鬱状態やイライラ病にかかるものなんだ、それが自然でフツーのこと---としっかり自分に言いきかせる。自然なら、つまり健康ということでしょう?反省なんかする必要ない。
(略)
不安定状態をコントロールできない自分を、ある程度は反省してみる必要もあるでしょう。でも、コントロールと言ったって、相手は自然なんですよ、不可思議な生きものなんですよ。100%思いどおりにコントロールしようと考えるのは無理だし、不遜でさえある。
やっぱり、モノやコトでどうにかするのがいいんです。10種類ぐらいの花をわーっと買ってきて、大きなホーローバケツに入れて部屋のまん中に(床にじかに)置いてみたり。
そしてスーッと落ちついた精神状態に戻ってみると、誰かにウジウジ喋ったりしないでよかった、と思うのです。
もくじ
まえがき
1 気持ちのいい人生をつかみたい
とりあえず手持ちのものをフルに活かす
- ひとり暮らしのスタート
- 志の立て方を変えてみる法
- 132万円トクした気分の友達の場合
「頑張らない」精神のおすすめ
- 自分に「できる」こと、「したい」こと
- 頑張ることはイイコトか?
- 怠け好き女のスペイン旅行
- マイヨール広場の幸福!
”生き方カタログ”なんてつまらない
- 何を買うかはその人のテツガクだ
- 人間も人生も”謎”が面白い
マネッコ人生から抜け出るショック療法
- 書を捨ててみれば
- 個性、自立、オリジナリティ?
- 手さぐりの生き方が魅力的です
馴れたり、らしくなったら美しくない
- 見過ごしている沢山のこと
- 習慣や馴れをサッと洗い流したい
2 楽しいプログラムを作ろう
時間を好きにつかう自分式プログラム
- ”自由になる時間”について
- 貯金もムダも集めてみると大!
時間の使い方=ドロボー&強盗システム
- 「イヤイヤながら」は卑怯です
- 「したいこと」のための私流の術
すてきな退屈こそ最高の贅沢です
- 17歳のセシルのように
- 積極的ひとり遊びも面白い
年中行事カレンダーを作る
- ふだんとちがうことをしてみる精神
- 日記手帳を予定表に使ってる友達
”自分学校”で面白く勉強する
- 中学の数学の本でポツポツ
- 興味本位のベンキョーが一番
怠けていたことのリストとチェック
- たまには「生活の場」の見直し
- 小さなテーマは無数にあります
3 贅沢に欲ばっておしゃれに
情報の求め方・つき合い方
- 素直に信じることは危険
- 情報源を区分けする
- 好きな人や友達、そして知的な人々
情報源としての「いい友達」について
- いい友達・わるい友達
- 女だから特に気をつけたいこと
ベーシックな生活用品で贅沢する
- 覚えてしまうとトクなこと
- 「いい物」を知るために必要なこと
あなたのハダカは素敵ですか?
- 世の中の迷信に惑わされないで
- なぜハダカが大切かということ
わがままに贈りものを楽しむ
- すてきなプレゼントの例
- 「そのときの自分の気持ち」を表現して
おしゃれに夢中になることのステキ
- センスを磨く重要なトレーニング
- スリリングな大問題
- おしゃれな生き方、したい
4 良い気構えと良いモノを持つ
あった方が楽しい道具、ない方がいいモノ
- すりこぎ&すり鉢やかつお節削りetc
- 現代風か昔型か
「1日3回、必ず食べる」ために
- ひとり暮らしの恐ろしいワナ
- 「好きなものを食べる」という原則
小さな空間の利用法---「床で暮らす」
- 見かけが悪くても大きな空間
- 場所をとらない方法でセンスを発揮
日用雑貨から下着までの総点検
- 惰性的習慣はつまらない
- 買い替えは意識して思い切りよく
書く喜び、そのための道具のこと
- 文房具のコーナーを作る
- メモ用紙やポストカードなど
- 手で書く、描くことの面白さ
5 自分をゆったり解き放す
あなたは自分の性格が好きですか?
- 自分をバラバラにして虫干し
- いつも自信と疑問を持つ
「声を出す」と気分も変わる、本当に
- 植物を育てるコツの話
- ネクラにならない法
- 私と半ノラ黒猫とのつき合い
ゴローンとボンヤリの休日が必要です
- 急行の停まらない駅で降りて
- 心と体の本当のお休み
頭と心のシェイプアップは重要なテーマ
- 毎日の仕事をこなすだけでなく
- 精神のシェイプアップの道具は?
おすすめ体験プログラム123
- 「ひとりだからこそできる」実験
- お休みの日には時計を止めて
6 自分をはげます、上手な手当法
気分の落ちつかない日のために
- 抽象的に考え込むとロクなことない
- 体力を出し切ってやってみること
- 不安定は自然の摂理です
頭、冷房、低気圧とのつき合い方
- 冷房対策を十分に
- レイン・ファッションを楽しむ
風邪のひき方、治し方ABC
- ひきたいからひく風邪
- 実践的風邪の治し方教えます
お風呂、その効用と楽しみ方のコツ
- シャワーつきの部屋でも銭湯でも
- ”オリジナル湯”の楽しみ
何かを始めましょう!気まぐれに
- 中年の女友達に言われたこと
- 「今が始め時」思いつきでも
7 プライヴァシーということ
”私のお城”と他人の目の関係
- ダラシのない穴ぐらにしないために
- 暮らしぶりのチェック係がほしい
プライヴァシーを守る合鍵のルール
- ”完全プライヴァシー”と二つの危険
- 鍵は誰にも渡さないこと
ひとり暮しの最大のメリットとは?
- 私の結論
- 家族とつき合うチャンス
ひとり暮らしには最低限、何と何が必要?