『オペレーション・アームピット』


 ――――クレアは、なぜ今自分が軍服を着た女性たちに囲まれているのか分からなかった。
いつものように、村の近くの川に水浴びをしに来ただけだったのに。

 クレアは全裸で水浴びをしている最中に、軍服の女性たちと遭遇した。その軍服を着た女性たちは、人の通り道になっていないジャングルの密林から突然現われ、彼女に気がつくと、ゲリラとかなんとか彼女自身には全く訳の分からないことを言って彼女を捕まえ、拘束してしまった。
 銃をつきつけられたものの、グループのリーダーらしき黒髪の女性はクレアに乱暴なことはせず、とりあえず彼女は、布を体に巻きつけた格好で後ろ手に縛られ、手ごろな岩に腰掛けさせられた。

 軍服の女性たちは6人で、男性はいなかった。彼女たちは、拘束されたクレアを横目に、彼女をどう扱うかについて話し合っている様子だった。

「――……だが、あの村の情報を持っていることがほぼ確実である以上、見逃してやる理由はない」
 いくつかのやり取りのあと、ストレートで黒髪のロングヘアーを持った女性がぴしりと言い放った。会話から、彼女はどうやらチームのサブ・リーダーだと思われた。

「……そうね」
 彼女たちの意見を聞いていたリーダーは、迷いを振り切るように軽く頭を振り、クレアを自分たちの作戦に巻き込むことを決めたのだった。


 隊長と呼ばれていた女性は、軽くウェーブがかった艶やかな長い黒髪と黒い瞳、さらに同性のクレアが息をのむほどに素晴らしいボディラインをしていた。
 彼女は自らを「マリー・ローズバンク」と名乗り、クレアに尋問を始めた。

「あなたの名前は?」
「……クレア……。い、いったいあなたたちは何なの?なんで私を縛ったりするの!?」

「ごめんなさい、ミス・クレア。あたしたちは、あなたが村からここまで来た道のことを教えてほしいの。素直に話してくれると助かるんだけど……ダメかしら?」
彼女の口調は優しく、柔らかではあったが、クレアの質問への答えは無かった。

「……だめよ……それは言っちゃいけないことだもん……」
「そう……、でも、あたしたちも知らなきゃいけないの。あなたが自分から教えてくれないようだと、無理にでも聞き出さなければいけなくなるわ。お願い。教えて」
「でも……言えないよ」クレアは両親の言いつけを守らなくてはならない、と思っていた。

その返答を予想していたのだろう、美しいリーダーはぞくりとする微笑を浮かべて繰り返した。
「どうしても、話してくれないの?」

クレアは何かひやりとするものを感じたような気がしたが、拒否するしかなかった。思わず、まとわりつくものを振りほどくように強い口調で答える。
「ダメだったら!」

「そう……それじゃ、仕方ないけどあれをやるしかないわね」
彼女は立ち上がると、他の女性兵たちを呼び集めた。

「やっぱりね。そうなると思ってたのよ」
「リン、手伝って」
「了解ある」

チャイナ系の小柄な女性が返答したかと思うと瞬く間に、クレアは幼い手足を木の幹にバンザイする格好で縛り付けられた。
身にまとっていた布切れは剥ぎ取られ、彼女は再び全裸にされた。

「じゃ、最初はリンからいく?」隊員の一人がラフな口調で隊長に問い掛けた。
「時間がないわ。最初から全員でいくわよ」
「うわー、きっつー」
「な、何をするつもりなの?イヤっ!さわらないで!!!」クレアは拘束された身体をよじって叫んだ。

「何って、尋問に決まってるよな」
「喋るなら止めてやるよ」

口々に迫り来る女性兵士たちの声に恐慌を起こし、目をギュッとつぶってしまったクレアは、次の瞬間、身体を襲った感覚にその裸身を弾かせ、目を大きく見開いた。

「うふふ、あーっははは!!!くくく、あはははっはははっはああぁぁ!!!!!」
「あひゃひゃひゃひゃ!!!ひひひひひひ!!!あははははははっ!!!!」

その「尋問」はくすぐり尋問だった。
突然始まった猛烈なくすぐり責めに、少女の精神力は5秒と持たなかった。

「白状するあるか?」
「あははははははははっっ!!!いっ!!あははは、ゆっ!!うぁはははは!!!」

最初の問いを聞く間もなく、完全に屈服していたクレアであったが、肯定の意思を表したくとも、猛烈なくすぐったさに笑い声しか出せず、首を必死で縦に振った。
……しかしながら、彼女たちはくすぐる手を止めようとはしなかった。

「早く言えよ」
「言ったら止めてあげる☆」

「あははははは!!!!!あはっ、…はははっ、ぁあははははははははっっ!!!!!やめ!!ゆうっ!!ゆ!!あははははっ、……からっぁぁぁあああああ!!!!」

「まだ降参しない?結構がんばるねぇ♪」
「これでも言わないのぉ?しょうがないなぁ、こちょこちょこちょ…………」

バンザイの状態で手首から吊り下げられて無防備な少女の身体の上を、6人の女性兵士たちの意外なほどにしなやかな指が縦横無尽に踊りまわり、可哀想なクレアの口から狂ったような笑い声と、途切れ途切れの懇願と、涎の糸をとどまることなく紡ぎだす。
彼女たちは明らかに、この尋問に手馴れていた。

「ん……もぅ、みんなイジワルなんだから。壊しちゃったら元も子もないのよ?」
「隊長、言われなくてもわかってますよ」
「そうある、手は抜いているあるよ」

手を抜いていると言ったチャイナ系の彼女であったが、ちょっと退屈そうな顔で何気なく動かしている彼女の10本の指がクレアの肌の上を滑るたびに、少女は身体をビクビクと跳ね上げて笑い狂った。
彼女にとって、感じやすい年頃の少女のカラダを責め狂わすことは造作もないことだと想像できた。

「あははははは!!あーっはははっ、はははは!!!」
「くはっ、ぁあっ、しっ、んっ、あはは!!死んじゃう!あはっはははは!!」
「やぁははははっ!!だっ、やめ、やっ、やぁ…っぁはははははは!」

必死の懇願にもかかわらず、クレアは残酷な60本もの指に身体中の感じやすい場所を責められて、何も考えることができなくなるくらいに笑わされた。
しゃべったら止めてやるといわれても、身体中をくすぐられているクレアの口から出るのは狂ったような笑い声だけであった。クレアはもう訊かれることは何でも話してしまいたかったのだが、彼女達の指はそれを許さなかった。
 くすぐられ始めてからまだ3分も経ってはいなかったが、クレアは焦点の合わない虚ろな瞳を潤ませ、頭をめちゃくちゃに振り乱しながら、ただ笑いつづけるだけだった。

「あひゃっ、あひひぃっ、んっははははっ!」
「らめ、ぁあああはははっ、あはあはあははははは!!!!」

無慈悲なくすぐりの練達たちは、それから1時間以上に渡ってクレアをくすぐり続けたのだった。
6人の女兵士たちは幼さを残す声で笑い続ける少女をさらに弄び、のたうちまわらせた。

 激しいくすぐりに精魂尽き果てるまで笑わされ、その感覚を身体に刻み込まれたクレアは、その後で改めて始まった尋問で、身体を指でなぞられるだけで嬌声に近い悲鳴を上げ、彼女が知っていることをすべて語ったのだった。


 ――某国政府の強行した麻薬撲滅作戦に対し、テロ行為で報復を重ねていた麻薬王の持つ農場の8割が同時に壊滅したのは、その数時間後のことであった。

(了)

2000.11.11
SATORI.