山での遭難事故について
山での遭難事故とはどのようなものでしょうか。
そもそも「遭難」とは、自分(もしくはグループ)での対応範囲を超え救援無しでは戻れない状態と言えます。
(生死に係る状況)
毎年確実に「遭難」は増えて来ています。
情報元;警察庁ページ
https://www.npa.go.jp/toukei/index.htm#safetylife
原因ですが、(H26年度)
と道迷いが4割と多い状態です。
情報元;警察庁ページ
年齢別(H26年度)
情報元;警察庁
また年度のトレンドとしてはH25年とH26年比較ですが、60歳以上事故増加傾向にあります。
このグラフだと登山人口の影響が見えないため、少し強引な手法ですが、H25年の事故発生をH22年人口(データ元:一般財団法人日本生産性本部「レジャー白書」<平成23年度>http://www.env.go.jp/nature/report/)で年齢別平均の一人当たり事故発生率を比較してみます。
登山者数あたりの発生率は20代が一番少なく高齢になるほど発生し易いことが分かります。
20歳以下も多いが、60歳を過ぎると特に要注意ということが分かります。
道に迷うケースは、色々あるかと思いますが、特に尾根道の下りで発生する場合が多いと考えられます。理由は、登りは、山に向かって道が集まる傾向にありますが、下りは、尾根が分かれるため、道が分岐していくためです。
登りでは気づかなかった分岐点を、下りで見落してしまい、ケモノ道や、間違った足跡(踏み跡)やテープ印に誘い込まれてしまいます。(沢登り等は、逆に登るにつれて沢が分かれていくため間違いが発生しやすい。)
道を間違える原因
@そもそも地図を見ていない。
A思い込み(確認不足)
B藪や雪、霧等(おしゃべり等含む)による分岐点の見失い(見落とし)。
C間違った踏みあとやマーク(雪上トレース)
D事前準備確認忘れ等
E地図に記載されていない地形に惑う(偽ピーク等)
F天候、体調、精神状態、低体温症など冷静、判断力低下
上記はイメージ図ですが、青が正規ルート、赤は尾根が集まってきている迷い込みやすい尾根を示しています。
登り時は勾配の高い方向に進みますが、下りは分岐がどんどん進みます。季節により景色が大きく変化します。(冬は雪、夏は木の葉や草などでルートが分からなくなります。)登り途中に分岐を見つけた時は、必ず振り返って景色を覚えて置くようにしています。
『基本は、地図とコンパスでの読図術』が必要という話は良く聞くかと思います。しかし実際何人の人が地図による山でのナビゲーション技術を持っておられるでしょうか。まず地図は携帯している方が70%らしいのですが、ほとんどの方が昭文社やゼンリン、渓谷社などの5万分の1の地図(一部25000分の1記載含む)となります。
この地図を定期的に確認して、現在の位置を特定しているひとが何人おられるかですが、一般的には標識や、テープによるマーキング、踏みあと、人の流れを頼りに歩いているのではないでしょうか。
間違えた場合は(もしくは道に自信が持てない場合は)、戻ることが基本ですが、下りの場合、また登り戻る必要があるため、疲れているときは、かなり抵抗感が生じます。
道に迷ったと気がつくケース
1)道が突然消える。もしくは、あきらかに急な斜面となる。
2)岩場や藪で道が途絶える。
3)枝道や踏み跡が交錯していて、消えていく。
4)急に霧につつまれ、景色や道が確認出来ない。
(穏やかな登山道はトレースが地面に付きにくいため発生)
迷った時に深みにはまるケース
1)何とかかなるだろうと前進する(楽観&戻るのが面倒)
2)早く下りたいと谷に下りる。(谷は崖が待っているので大変危険)
(イメージ図)
➔谷は下れないと考えたほうが無難
3)無理に崖を下る(登る)
➔滑落事故につながる(捻挫や打撲で身動き出来なくなる。)
後戻りできなくなる。
4)藪道を進む。
➔戻る道が分からなくなり危険
見えない崖で滑落する
5)焦って動き回る
➔体力消耗し、思考力低下。
迷った場合
道迷の怖いところは、恐怖でパニック的に焦って無茶な行動をすることです。
また道迷いが原因で、日没、滑落や捻挫等で動けなくなり遭難につながります。
1)現在地が何処かをできるだけ冷静に判断する。
⇒まずは落ち着く事が非常に重要
1)必ず分かる所まで引き返す。(尾根を間違えた可能性あり。)
⇒これは強い精神力が必要です。
特に登り返すというのはタフな心が必要です。
2)体力を消耗しないように心掛ける。
3)日没、天候や健康上の問題があれば、明るい内にビバーク(野営)するところを探す。
⇒初めての場所はツェルトや防寒具、懐中電灯を持参しましょう。
下記ページは、遭難の事例と対応で大変参考になります。
http://toyokawa-ac.jp/map/map_sounan
同じところから迷路を抜け出せず、何日も歩き回る例があります。
ハンディーGPSは自分の位置大雑把でも確認できるため落ち着いた冷静な対応が期待出来ます。
(GPSを持っていても判断を間違えると遭難する可能性があります。)
基本だれかが見つけてくれる様に知らない山行の前には誰かに伝言を残すか、登山届を残しておくことを忘れないようにしましょう。