最判昭和46年4月20日(集民102号491頁(昭和43年(オ)第104号))

(原審:東京高判昭和42年11月9日(昭和41年(ネ)第39号))

<判決>
 破棄自判。
「上告代理人柚木要の上告理由および同代理人柚木要,同復代理人柚木司の追加上告理由について。
 本件訴は,被上告人が,訴外Dを特許権者とする特許権について有するその専用実施権に基づき,上告人がこれを侵害したことを理由とし,上告人に対し侵害の差止および損害の賠償を請求するものであり,また,原判決が右特許権および専用実施権の存在を前提として本件訴について判断していることはその判文に徴し明らかである。しかるところ,上告人の提出した昭和39年審判第1286号審決および特許登録原簿の各謄本の写によれば,右特許権につき,昭和44年12月13日特許を無効とする審決があり,昭和45年6月1日右審決は確定し,同年7月14日特許の登録が抹消されたことが認められる。したがつて,本件特許権は初めから存在しなかつたものとみなされ,被上告人の専用実施権もまたその当初から効力がなかつたものというべく,原判決には,民訴法420条1項8号所定の再審事由があり,右事由は適法な上告理由に当たるものというべきであつて,この点の論旨は理由がある。それ故,上告理由および追加上告理由のその余の点について判断するまでもなく,原判決中上告人の敗訴部分を破棄しなければならない。そして,本件専用実施権が右のように当初からその効力のないものである以上,右専用実施権の存在を前提とする被上告人の本件請求は,その余の点について判断するまでもなく,すべて失当というべきであるから,上告人の右敗訴部分に関する被上告人の請求を棄却すべきである。
 上告人の民訴法198条2項の裁判を求める申立について。
 上告人は,原審において,原判決事実摘示記載のとおり,右裁判を求める申立をし,当審においては,その申立を減縮し,原判決が認容した部分を除くその余の部分についてのみ裁判を求めるものであるところ,原判決が確定したところによれば,上告人がその主張のように被上告人に対して支払つた金員は本件第一審判決の仮執行宣言に基づき給付したものであるから,前記のとおり原判決中上告人の敗訴部分を破棄し,この部分に関する被上告人の請求を棄却すべきものである以上,一審判決に付された仮執行宣言が右部分についてもその効力を失うことはもとよりであり,したがつて,前記仮執行宣言に基づく給付金中197万8466円の返還を求めるとともに,これに対する給付の翌日である昭和40年12月29日から右金員の支払ずみに至るまで年5分の民法所定の損害金の支払を求める上告人の申立は,正当として認容すべきである。
 よつて,民訴法408条198条2項,96条89条に従い,裁判官全員の一致で,主文のとおり判決する。」