(原審:東京高判昭和36年4月7日)
<判決>
上告棄却。
「上告代理人弁護士清瀬一郎,同内山弘の上告理由は別紙のとおりである。
論旨は,要するに,上告人の特許出願にかかる本件発明と同一内容のフランス国特許第1017546号明細書が,出願前にわが国の特許庁資料館に到達していても,出願当時には,未だ一般公衆の閲覧可能な状況にはなかつたのであるから,本件発明は,旧特許法(大正10年法律第96号,以下同じ)4条2号に該当しない旨を主張するに帰する。
しかし,外国において発刊頒布された刊行物であつても,わが国の特許庁に到達し同庁資料館に受け入れられた以上は,右刊行物は旧特許法4条2号にいう「国内ニ頒布セラレタル刊行物」と解するのが相当である(大正元年10月26日大審院判決,民録18輯920頁参照)。原判決の確定するところによれば,上告人が本件特許出願をしたのは昭和28年4月30日であるが,それ以前の同年同月27日に前記フランス国特許第1017546号の明細書は特許庁資料館に受け入れられていたというのである。しからば,右明細書が出願当時一般公衆の閲覧が可能であつたか否かを問わず,本件発明は,旧特許法4条2号に該当するものといわなければならない。本件出願に対する拒絶査定を支持した被上告人の審決は正当というべく,その審決の取消を求める上告人の請求を棄却した原判決は,その理由とするところは上述と同じではないが,結局正当であつて,本件上告は理由がないことに帰する。
よつて,民訴401条,95条,89条に従い,裁判官全員の一致で,主文のとおり判決する。」