奈良県香芝市穴虫 |
採集できる石
鉱物名 | 量 | コメント |
---|---|---|
サファイア | 少ない | 現場での採集は不可能に近い |
ガーネット | 多い | 小さいものだけですが |
珪線石 | 少ない | 工場でもらうしかないでしょう |
高温石英 | 少ない | 母岩の中に少し見えます |
サヌカイト | 少ない | 昔はたくさん拾えましたが |
次にガーネット産地についてである。ここ二上山は、兵庫の玄武洞に負けないくらいの、すばらしい玄武岩の柱状節理が見られるし、ファイアはないがオパールの産出も報告されている。自宅から近いこともあり、よく採集に出かけた。最初に訪れた1970年代には竹田川の上流の二上山の山の中にむしろを引き、上流からガーネットを含んだ川砂を流して比重の高いガーネットだけがむしろの隙間に入る、砂金を採るような採集をしている人をよく見かけたものだが、1980年代になるとそんな人もめっきりいなくなった。
しかし、川の中にはまだガーネットの粒は見えているので、採集を試みることにした。川の中に岩盤がなくなり、水の流れが緩やかになっているところが一カ所だけあり、見方によっては滝壺のように見えるところがある。そんなに広いところではないが、3m四方で砂が堆積している。前々から目を付けていたところだ。寒い中K氏と共に流れの中に入り採りはじめた。
大型スコップで砂を掘ってはふるいの中に入れ、大きさも4段階に分けるのである。大変な作業であった。掘る作業とふるいの作業を何回も変わりながら進めていったが、一時間に一個くらいの割で目を引く物が出てくるので体はしんどいが、気持ちは良かった。二上山のガーネットとしては最大と思われる安山岩の母岩にくるまれた2Cm近い物が出たときには飛び上がるほどだった。ただ、形が悪かったのが残念であった。次の一時間で四周完全な24面体の和田峠産に引けを取らない上物が出てきた。大きさは6mm程度だったが、これもこの産地の完品の物としては最大の物と思われる。これが出たときは小躍りするほどだった。(実際にはへとへとで体は動かなかったが。)4時間ほど採った後、大量のガーネットと良い獲物を持って家に帰った。
次の日からが又大変だった。選鉱作業である。パンニングで全部のガーネットのより分けをするのに2週間はかかったが終わったときには、手はあかぎれて、腰はぎしぎし鳴っていた。
しかし、その結果、ガーネットの大きさの比率は、
1・5mm以下 85%以上
1・5〜3mm 10%
3〜5mm 4%
5mm以上 1%未満
くらいであろうと思う。
大きい物はほとんどなく、それを考えても、今回の獲物はすばらしい物であると自負している。
ただ、残念なことには、もう一つの目玉鉱物であるサファイアは全く見ることはできなかった。あれだけ大量のガーネットを含む場所を選んでの、また場所を絞っての採集で見つからなかったということは、フィールドでの採集は不可能に近いのではないかと思う。たぶん水田の5m下の層にしか見られないものと思う。そのころに風化した含石榴石安山岩の中には割とたくさんのサファイアがあったのであろう。実際、今の安山岩の露頭を調べてもサファイアにはとんと出会わないので、それが証拠であろう。
1997年までに10回以上は訪れたが、1990年頃になって採石所が本格的に採石を開始したので最近はとれなくなってしまった。
先ほどのガーネットの産地はダイヤモンド・トレールという、二上・葛城・金剛山麓のハイキング用の道の横にあるのだが、採石のためのダイナマイト云々の看板や巨大なトラックが行き来したり、イノシシの養殖場があったりと、最近は危なくって近寄れなくなった。
また、他の所から土が持ち込まれてもいるようで、近頃は川の中にガーネットのかけらも見なくなった。上記の産地も野球場とゲートボール場が造成され、その土が1mくらいかぶってしまい、今は採れなくなってしまった。悲しい限りである。
話は変わってサヌカイトの産地であるが、この辺り一帯はどこででも採れるようである。屯鶴峰(「どんづるぼう」と読む)という火砕流の湖沼性堆積岩(でも、火成岩の分類。)の景勝地があるが、この中にも含まれているし、(国定公園内なので採集はできません。)白い色の凝灰岩の所を探せばすぐ手にはいると思う。大きい石で石器でも作ろうと考えておられるのであれば、大阪側に出て太子町に入ったすぐの所に、観光ミカン園があり、その入り口に車を止めて、歩いて中へ入るとすぐに畑が見える。サヌカイトは畑にはじゃまなのであぜ道に置いてあるのでそれを持って帰ると良い。今(1999年)であれば奈良県側に高山台という造成地があるので、そこにはガラス度の高いサヌカイトが採れるが、もうすぐ造成が終わると採れないのは明白である。
国道165号線の奈良と大阪の境に大きな火砕流の湖沼性堆積岩の露頭が見える。地質的な事はよくわかるが、鉱物はこれといったものはない。
ファンシーという喫茶店の前を東に左折すると、すぐに同じ露頭が見えてくる。500mほど行った右側に、明日香村の高松塚古墳で使われたのと同じ凝灰岩が出ている。1990年頃までは、そのころの物と思われるクサビ跡まではっきりわかったのだが、今は造成のために崩れてしまった。説明の看板だけはまだ立っているので一見されても良いと思う。
ただ、その看板の道をはさんだ反対側にある露頭には、黄色い部分が入っている凝灰岩が出ている。硫黄でもないそうだし、色でいうとウランに似ている。本当は鉄の色かとは思うが、不思議な色をしている。新産鉱物ではないかと思っているのだが、調べてはいない。
地質については、前出の二上山博物館の中にパネルがあるので参考にされると良いと思う。