〜公約達成日の新聞記事より〜


近鉄、“ミラクル男”北川の逆転打で粘り勝ち(サンケイスポーツより)

 【パ・リーグ、ダイエー8−9近鉄、17回戦、ダイエー9勝8敗、28日、福岡ドーム】奇跡としか言いようがない。三塁に滑り込んでアウトになったはず北川から、思わず白い歯がこぼれる。窮地の猛牛を救ったのは、2年前に代打逆転サヨナラ満塁優勝本塁打を放った、あの“ミラクル男”だった。

 「勝ちたいという気持ちが強かった。打った瞬間は『あ〜あ』と思ったけど、早く落ちてくれと思った。相手がダイエーだったんで、きょう勝ったのは大きい」

 九回二死からドラマは始まった。中村は左翼フェンス直撃の二塁打。それまで3安打の吉岡を敬遠で二死一、二塁。そして抑えの篠原の真っすぐを北川が打ち上げてしまったが…。白球は猛ダッシュで前進する右翼・柴原の前でポトリ。2者が生還、土壇場で逆転。ベンチも優勝したかのようなお祭り騒ぎだ。

 最後まで諦めないのが梨田野球。2年前のリーグVも、決してあきらめない姿勢が数々の逆転劇をもたらした。

 「勢いを持ってきそうな感じだね。首の皮1枚つながった。いいゲームだ。こういう野球をしたい」とハンサム指揮官も目尻を大きく下げた。

 「2年前? そういう雰囲気を自分がつくりたい。チームに勢いをつける起爆剤になれれば」とえびす顔を引き締めて北川は言いきった。あのミラクル男の引き起こした奇跡で、2年前の再現の予感が漂い始めた。

近鉄北川、9回2死から逆転2点打!(ニッカンスポーツより)

<近鉄9−8ダイエー>◇28日◇福岡ドーム

 猛牛が生き残った。9回裏2死二塁、リードはわずか1点。ダイエー村松の打球が右前へ転がる。大歓声をため息に、そして静寂に変えたのは礒部だ。打球を処理すると矢のような好返球。捕手的山のミットに収まり、二塁走者荒金がタッチアウト! その瞬間、梨田監督は両手をたたきながら三塁側ベンチを飛び出した。「いい試合だったね。首の皮1枚残ったね。これで乗っていける。高村が8回無死満塁をよくしのいでくれた」。ベンチには、まるで優勝を決めたかのような、ナインの雄たけびがサク裂。試合後の指揮官は、興奮気味に価値ある白星を振り返った。

 勝負を決めたのは、2年前のリーグ優勝決定のかかった試合で満塁アーチをかけた6番北川だ。スコアは7−8。9回も2死。中村が中越え二塁打で出塁。続く5番吉岡が敬遠されて2死一、二塁。この追い詰められた局面で、北川の放った打球は右前に落ち、角度を変えてスルスルと転がった。その間に二塁から中村、一塁から吉岡が一気にホームを駆け抜けた。殊勲の北川が興奮気味に話した。「打ったのは真っすぐでした。いい当たりではなかったから、打った瞬間はやばいと思いましたけど、早く落ちろと祈りながら走りました」。

 この試合に敗れれば、ダイエーとの差は6ゲームに広がっていた。和田を引きずり下ろしたが、中継ぎ陣が四球を連発するなどの乱調。せっかく奪ったリードも、7回には三沢が、吉田が押し出し四球を与えるなど、がけっぷちのピンチを背負っていた。ペナントの行方を左右する3連戦の初戦を総力戦で制し「勢いがつきそうやね」と梨田監督。パ・リーグの灯はまだまだ消さない。