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  TOKYO発

アチェ惨禍ルポ

写真家・豊田直巳さん


モナちゃん(右)の両親は行方不明になったまま。親を捜す掲示板の前で、NGOスタッフのティモさんが声をかけても表情一つ変えなかった=マタイーキャンプで

 未曽有の犠牲者を出したスマトラ沖地震津波は肉親や家族と離ればなれになった大量の“孤児”を生んだ。被災地では徐々に復旧が進み、学校も再開され始めた。だが、家族が見つからないまま、避難キャンプでの生活を余儀なくされる子どもは少なくない。最大の被災地インドネシア・アチェ州を先月下旬に取材したフォトジャーナリストの豊田直巳さん(48)=東京都東村山市=が、キャンプ地の孤児たちの様子をリポートする。

 バンダアチェのマタイー地区に設けられた四千人規模の避難キャンプ。そこで一人の少年に出会った。名はイクバル、十一歳。テントで暮らしていた。駐留するインドネシア国軍の若い兵士に借りた携帯電話を握りしめ、同じ着信メロディーを繰り返し聞いていた。

 「この曲を聴くと家族を思い出すの。お姉ちゃんが持っていた携帯の音楽と同じだから」

 昨年十二月二十六日。日曜の早朝。海岸近くの自宅で暮らすイクバルの家族を大津波が襲った。「あのぐらいの高さだった」とイクバルが指さしたのは、二十メートル以上ある国営放送局のビル。その巨大さにあらためて息をのんだ。

 トラウマ(心的外傷)を克服する訓練の一環として、彼が描いた絵には、押し寄せる巨大な津波と、道路脇に並ぶ何体もの遺体が描かれていた。

 イクバルは、父親に買ってもらったラジコン自動車で遊んだ思い出を話してくれ、新しい車が欲しいと言った。私は「早く両親が迎えに来るといいね」と声を掛けることしかできなかった。イクバルは「お父さんも、お母さんも死んじゃったから、もう迎えには来ないの」と気丈に話し、現実をしっかりと受け止めていた。

 イクバルのような津波が生んだ孤児が何人にのぼるのか、現在も正確には分からない。こうした孤児らが人身売買の対象にされていると国連児童基金(ユニセフ)は警告を発した。今回はその事実を確認できなかった。

 一方、公務員のイスマイル(36)のように津波から一カ月余りがたった今も、行方不明の妻子を捜し求めている人もいる。「津波の日から三日間、遺体という遺体を見て回った。でも、妻も子どももどこにもいませんでした。だから生きていると信じているのです」

 ユニセフと共同で、離ればなれになった親子の再会を支援している地元非政府組織(NGO)は「二百人の子どもと、九百五十人の子どもを捜す親が登録されている」と言うが、これまでに再会できた親子は六組にすぎなかった。そして再会の可能性は、日を追うごとに小さくなっている。

 「緊急援助プロジェクトは当面三カ月で、その後のことは決まっていません」と、NGOの責任者は顔を曇らせる。「後は政府が世話をすると思いますが…。イクバルがどうなるかも、私たちには分からないのです」。孤児たちの苦難が始まるのはこれからなのだ。 (文中敬称略)

 文と写真・豊田直巳

 <とよだ・なおみ> 静岡県生まれ。1983年から中東取材を開始。92年からはアジア、アフリカなどの「紛争地」をめぐり、そこに暮らす人々の日常に光を当てる取材を続ける。2003年に平和・協同ジャーナリスト基金賞奨励賞受賞。JVJA会員。著書に「イラク 爆撃と占領の日々」(岩波書店)など。

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