堀江真理子の室内楽


作成日: 2005-06-30
最終更新日:

2005年11月15日

堀江真理子の室内楽

カザルスホールにて行なわれた、堀江真理子ピアノによるフォーレの室内楽を聴きに行った。
ピアノ四重奏曲第2番とピアノ五重奏曲第2番の2曲であった。
どちらも生演奏は初めて接する曲であり、大変感慨深かった。
前半は、ピアノ四重奏曲第2番であった。第1楽章では、最初のピアノのアルペジオが渦巻くように流れてくるのがわかった。見通しがよくわかり、声部も明瞭だった。第2楽章は力強い推進力に圧倒された。第3楽章は、フォーレの曲の中でもっともわかりにくい(と私が思っている)が、その茫漠感が保たれていた。第4楽章は、さまざまにうつろう曲想のコントラストがはっきり表現されていた。全体に、よい演奏だった。

後半は、音楽学者の講演(フォーレと国民音楽協会)の後、ピアノ五重奏曲第2番であった。こちらは長い間いろいろな演奏を聞き込んできたので、いろいろと文句が多くなる。

第1楽章は私の印象ではちょっと速い。もう少しAllegro Moderatoの、Moderato を感じることはできなかったか。それから、低音が少し不安定だった。ピアノのせいか、低弦(チェロ、ビオラ)のせいかは知らないが、音程の不整合があると妙なうなりが生じ、曲の均衡が損なわれる。私は気が気でなかった。とはいえ、ヴィオラのソロの部分はホールを包み込むようなよい響きに包まれたし、チェロもなかなか健闘していた。第1バイオリンはやや固めの音であったが、これが曲作りには幸いしたとも思える。

第2楽章は快速運転であったが、ライブにつきものの緊張感が絶えず漂っていた。おそらく小さな事故はたくさんあったであろうが、大崩れすることなく、帰還(フィードバック)が働いていた、すなわち元に復元するように制御されていたようだ。きっと、フォーレ的な感覚を演奏者すべてがもっているのだろう。わたしはドキドキハラハラを楽しんだ。最後に、フォレ愛好家のPierreさんが提起した、この楽章の最後におけるピアノの3連音と4連音の交替について考えながら聞いていた。結論は出なかった。しかし、フォーレが意図していたいないにかかわらず、絶妙の効果を導いたのではないか、と思えることもあった。

第3楽章、第4楽章は、だいぶ運気が向いてきたようだ。よい演奏だと思った。一言だけ言わせていただくなら、第4楽章の最後、コーダの前後は、つまり調性記号がハ短調からハ長調に変わるところは、そのままのテンポで(遅くすることなく)コーダに突入するのが好みである。アップダウンのはげしいコースを走ってきたマラソンランナーが、市街地からグラウンド内の最後の周回コースとなって、観客の大いなる声援を浴びるところなのだから。

礼奏は、五重奏曲の第2楽章。あのめまぐるしい音を、フォーレは75歳を過ぎてよく書いたものだとつくづく思った。

posted by まりんきょ at 23:59| Comment(2) | TrackBack(0) | フォーレ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
しょーもないことですが、
「正帰還」とみると「発散」しか思いつけないので、やっぱり「負帰還」じゃあないでしょうか。
Posted by B氏あらためH氏 at 2005年11月17日 18:03
コメントありがとうございます。
ご指摘の通り、負帰還でした。なれない日本語を書いたのが敗因でした。修正の前後がわかるように直しました。
これからも変わらぬご愛顧をお願いします。