セルゲイ・プロコフィエフ

作成日:2021-01-07
最終更新日:

かっこいいプロコフィエフ

プロコフィエフの音楽は、かっこいい。ヴァイオリン協奏曲第1番の第2楽章は、その極みだろう。 私にはかっこいいプロコフィエフは無縁だろうが、2021 年になって、何をトチ狂ったのか、 ピアノソナタ第3番を練習してみることにした。

ピアノソナタ第3番の全体像

ピアノソナタ第3番は作品番号 28 、イ短調という付加情報をもっている。また、単一楽章であるという特徴がある。 楽譜は MCA 版で 15 ページにわたる。演奏時間でいえば、プロの演奏は7分を切る演奏から8分以内というところだ。

難度は当然のことながら高い。速いし、手の跳躍は頻繁にあるし、 連続する和音を歯切れよく弾かないといけないところはあるし、 とにかく大変だ。

速度記号は次のように変化している。

  1. Allegro tempestoso
  2. Moderato
  3. Allegro tempestoso
  4. Moderato
  5. Più lento
  6. Più animato
  7. Allegro I
  8. Poco più mosso

この速度記号の変わり目で構造が区切られているといっていいだろう。

冒頭と第1主題

プロコフィエフピアノソナタ第3番1小節

第3小節の右手にアクセントつきで現れる F A D F で始まるメロディーが第1主題なのだろうか。

第2主題

プロコフィエフピアノソナタ第3番58小節
この楽譜の4小節前に速度記号が Moderato になっている。しかし、そこでの音形は半音階であり、メロディーとは呼びにくい。 この楽譜から右手で始まるメロディーが第2主題のようだ。


展開部1

プロコフィエフピアノソナタ第3番94小節
94 小節で再び Allegro tempestoso という速度表示がある。ここから展開部が始まる。 開始は両手が反行する細かな動きで、提示部でもつなぎとして現れている。 その次に 96 小節から第1主題が音価が縮められて展開される。


展開部2

プロコフィエフピアノソナタ第3番122小節
122小節で rit. 表示があり、123 小節は Moderato となる。この Moderato で高声部に第2主題が出る。


展開部3

プロコフィエフピアノソナタ第3番128小節
128 小節は 123 小節からの展開を引き継いでいる。速度記号は Più lento とさらに遅くなり、 発想記号も dolcissimo となり、最上級となっている。


展開部4

プロコフィエフピアノソナタ第3番132小節
132 小節は、展開される主題が低音部に移る。速度記号は Più animato で、これは速度というより発想を表したものではないか。 意味は「(今までより)生き生きと」ということだろう。では今まではどうだったのかというと死んでいたのではないと思う。 低音部の動きが感じられるように、と解釈したい。 右手は和声とリズムだが、これは冒頭2小節のリズムを利用している。


再現部

プロコフィエフピアノソナタ第3番160小節
Più animato 以降は盛り上がり、153 小節で ff 長い和音が打ち鳴らされたフェルマータとなる。 その後 155 小節から ppp の細かな音符が現れ、少しずつ accelerando しながら 161 小節で Allegro I (アレグロ・プリモ)となる。ここが再現部の開始と考えてよいのだろうが、単純な主題の回帰ではない。 メロディーらしいメロディーは現れない。 見てわかる通り、左手と右手の細かな動きが主体となり、 これは提示部の主題ではなく接続部で見られた構造である。この動きのなかで、 ときどき音階を駆け上がったり付点リズムを伴う和音が現れたりする。


コーダ

プロコフィエフピアノソナタ第3番205小節
最後に現れる速度記号は Poco più mosso で、少しテンポがあがる。また、今まで3連符主体で刻んできたリズムが2連符主体となり、 コーダに入ったことに気づく。コーダでは2連符と3連符が交錯し、最後の頂点を形作る。

細かなこと

拍子

冒頭を見るとわかる通り、拍子は 4/4 (12/8) という表記になっている。これは、4/4 拍子で、かつ 3 連符が主体となる拍子だから心せよ、ということだろう。だから、1 拍の4分音符を、3連符のように刻むのか、 2 連符で処理するのか、付点音符として 3:1 で弾むのか、適切に判断せよ、という印ととらなければならない。

一か所だけ、29 小節で 3/2 拍子が出てくる。ここはちょっと立ち止まるような雰囲気がある。 この後の 30 小節は推移部とか移行部とか経過部とかに相当するミニマル的なパッセージが来る。 このパッセージはこの曲のあちこちで現れる。

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