立花俊一・勝野恵子・山口誠一・成田清正・田川正賢 : Advanced ベクトル解析

作成日 : 2022-04-11
最終更新日 :

概要

「序」より引用する : 本書は,大学の理工系学部および工業高等専門学校の学生を対象とするベクトル解析のテキストである.

解答と疑念

私が気になっていた問題に対する解答があった。p.111 の次の問題である。

4. (ガウスの積分) 閉曲面 `S` 上の点 P の位置ベクトルを `bbr`, その大きさを `r = abs(bbr)` とするとき,次が成り立つことを示せ.

`int int_S bbr / r^3 * bbn dS = {(0, "点 O が" S "の外部のとき"),(4pi,"点 O が" S "の内部のとき"), (2pi,"点 O が" S "上のとき") :}`

気になっていたのは、点 O が `S` 上にあるときの値だ。これは、平居孝之・福田亮治 : 使える数学 ベクトル解析を読んだときからである。

解答は pp.157-158 にある。気になっているのが点 O が `S` 上のときである。これを (3) とする。 この解答は次の通りである。

(3). 点 O が `S` 上のとき,O を中心として微小半径 `c` の球面を考え, `S` の内部にある部分を `S'`,球面の外部にある `S` の部分を `S''` とする.`S'` と `S''` で作られる閉曲面上の単位法線ベクトルを `bbn` ,球面上の単位法線ベクトルを `bbn'` とすれば, `S'` 上では `bbn = -bbn`[図 A-19(省略)] なので (2) と同様にして

`int int_(S'') bbr/r^3 * bbn dS = int int _(S') bbr / r^3 * bbn' dS`
`c -> 0` とすれば,`S'` は点 O の接平面で分けられた半球面と考えてよいから

`int int_S bbr/r^3 * bbn dS = lim_(c->0) int int _(S') bbr / r^3 * bbn' dS = lim_(c->0)1/c^2 int int_(S') dS = lim_(c->0) 1/c^2 2pic^2 = 2pi`

何が気になるかといえば、`S'` は点 O の接平面で分けられた半球面と考えてよいからの部分だ。 もしこの閉曲面が直方体だったらどうだろう。直方体の面上ならば確かに半球面と考えていいだろうが、 直方体の稜だったらこれは半球ではなくて 1/4 球だろう。直方体の頂点ならば 1/8 球になるはずだ。 そのほか、滑らかではない閉曲面の非平面部分なら半球面ではない例が多くあるだろう。 では滑らかならばこの証明はいいのだろうか。よくわからない。

問題を解いてみる

p.84 の問題を解いてみよう。なお、赤字は誤植だ。

9. ベクトル場 `bbA = (a_1(x, y, z), a_2(x, y, z), a_3(x, y, z))` は,`"div" bbA = 0` を満たすとする.このとき

`bbB = (int_color(red)(c)^z a_2(x,y,z)dz - int_b^y a_3(x,y,color(red)(c))dy, -int_a^color(red)(x)a_1(x,y,z)dz, 0)`
とすれば
`bbA = "rot" bbB`
が成り立つことを示せ.ただし,`a, b, c` は定数.

正しい式は次の通りだ。青字にした。

`bbB = (int_color(blue)(a)^z a_2(x,y,z)dz - int_b^y a_3(x,y,color(blue)(a))dy, -int_a^color(blue)(z)a_1(x,y,z)dz, 0)`
対称性がよくないので怪しい雰囲気がただよっている。解答を見よう。p.150 にある。

9. `"rot bbB` の `z` 成分が `a_3(x, y, z)` であることを示す.

`del/(delx) {-int_a^z a_1(x,y,z)dz} -del/(dely){int_color(red)(c)^z a_2(x,y,z)dz - int_b^y a_3(x,y,a)dy}`
`=-int_a^z{del/(delx)a_1(x,y,z) + del/(dely)a_2(x,y,z)}dz + del/(dely) {int_b^y a_3(x,y,a)dy}`
`=int_a^zdel/(delz)a_3(x,y,z)dz+a_3(x,y,a)=a_3(x,y,z) ["div" bbA = 0]`

正しいのは次の式だ。青字で訂正した。

`del/(delx) {-int_a^z a_1(x,y,z)dz} -del/(dely){int_color(blue)(a)^z a_2(x,y,z)dz - int_b^y a_3(x,y,a)dy}`
`=-int_a^z{del/(delx)a_1(x,y,z) + del/(dely)a_2(x,y,z)}dz + del/(dely) {int_b^y a_3(x,y,a)dy}`
`=int_a^zdel/(delz)a_3(x,y,z)dz+a_3(x,y,a)=a_3(x,y,z) ["div" bbA = 0]`

第2式から第3式への変形は、`"div" bbA = 0` すなわち `del/(delx)a_1(x,y,z)+del/(dely)a_2(x,y,z)+del/(delz)a_3(x,y,z)=0` を使う。さて、本書の解答は次のように続く。

`x` 成分、`y` 成分も積分と偏微分を入れかえて,同様に成り立つことが示される.

大丈夫だろうか。`x` 成分を計算してみた。

`("rot"bbB)_x = -del/(delz) {-int_a^color(blue)(z)a_1(x,y,z)dz}`
`=int_a^z del/(delz) a_1(x,y,z)dz = a_1(x,y,z)`

大丈夫だろうか。`y` 成分を計算してみた。

`("rot"bbB)_y = del/(delz) {int_color(blue)(a)^z a_2(x,y,z)dz - int_b^y a_3(x,y,color(blue)(a))dy}`
`=int_a^zdel/(delz)a_2(x,y,z)dz = a_2(x,y,z)`

本当にこれでいいのだろうか。

書誌情報

書名Advanced ベクトル解析
著者立花俊一・勝野恵子・山口誠一・成田清正・田川正賢
発行日2000 年 1 月 25 日 初版 1刷
発行元共立出版
定価2000 円(本体)
サイズA5版 165 ページ
ISBN4-320-01638-6
その他草加市立図書館にて借りて読む

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MARUYAMA Satosi