清水 健一:美しすぎる「数」の世界

作成日 : 2018-05-14
最終更新日:

要約

副題は《「金子みすゞの詩」で語る数論》

整数論

私は数学が好きだが、整数論に心がひかれることはついぞなかった。なぜか。自分でもわからなかったが、 この本に私の内なる心を見透かすようなことが書かれていた。今、そのページが見つけられないのだが、書かれていたことはこんなことだった。

整数にはいろいろな規則がある。自分勝手な規則をみつけるのは容易だが、それが重要だという保証はない。

整数の性質にはいろいろあるが、私にはどうもそれが恣意的な性質に見えて仕方がないのだ。そのうち、私が最も憎いと思っているのが素数である。 なぜ、素数だけ特別扱いされないといけないのか。ただの言いがかりであるが、そう思う。

それから、入学試験で出る整数問題もどうも気に食わない。適当な数の剰余類を考えればすぐに答えがでるが、だいたいどんな数の剰余類を考えたらいいのかもわからない。 初等幾何で、どのような補助線を引いたらいいかわからないような感じがするのだ。

数学の美について

著者はいたるところで数学の美を語っている。著者はこう書いている。

数学の世界における出会いとして,私が感動したものに次の事実があります。
`cos theta = (e^(i theta) + e^(-i theta)) / 2, quad sin theta = (e^(i theta) - e^(-i theta)) / 2`
この公式は,`e^(i theta) = cos theta + i sin theta` と同値です。

この感動はわかるつもりだ。ただ、私の場合は感動というよりは度肝を抜かれた。著者がこの事実と出会ったのは大学受験の勉強のときだったという。 私は大学に入ってからだった。まず、物理(力学)の授業で微分方程式を解くときにこのオイラーの公式が出てきてたまげた。 その少し後、数学(代数)の授業で、物理で困っているだろうからオイラーの公式の証明「もどき」をします、といって、 先生が `e^theta` のテイラー展開と `cos theta` のテイラー展開、`sin theta` のテイラー展開を導出してこの通り両辺がおなじだから、 と説明したのにはたまげたを通り越して呆然としてしまった。ちなみに、私の高校時代の指導要領では複素平面の取り扱いはないころである。

私は他の人とは違い、オイラーの公式には美を感じるというより上のように畏怖を感じたのだった。私が美しいと思った数学の諸事実は、 任意の三角形の角の三等分線を引いて各辺に近い線同士の交点を P, Q, R とすると、三角形PQR は正三角形になるという事実 (モーリーの定理)、`1 + 1/2^2 + 1/3^2 + cdots = pi^2/6` (いわゆるバーゼル問題)、`int_-oo^oo e^(-x^2) = sqrt(pi)` (ガウス積分)などである。

整数の世界

今まで述べたことは忘れて、整数の世界をこの本をもとに鑑賞したい。

数式表現

数式の記法には ASCIIMath を、 数式の表示には MathJax を用いている。

書誌情報

書名美しすぎる「数」の世界
著者清水 健一
発行日2017 年 10 月 20 日
発行所講談社
定価920 円(本体)
サイズ18cm
ISBN 978-4-06-502036-4
その他講談社ブルーバックス
NDC 412

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