佐々木 浩宣 : ヘンテコ関数雑記帳

作成日 : 2021-11-01
最終更新日 :

概要

副題は「解析学へ誘う隠れた名優たち」。

感想

私は頭が弱いので本書の大半の内容が理解できない。しかし、何か問題を解こうとは思う。

p.19 にある第1章の章末問題を解いてみる。

問 1.7 `T(x)` の最大値を求めよ.

`T(x)` とは高木関数のことであり、`t(x) = 2abs((x-1)/2 - |__ (x-1)/2 __|- 1/2)`、 `t_n(x) = (t(2^nx))/2^n` とするとき、`T(x) = sum_(n=1)^oo t_n(x)` で定義される。

これだけではわからない。下記にある論文
https://arxiv.org/abs/1112.4205
をカンニングしたら、最大値は `2/3` であり、最大値をとる `x` はたとえば `x = 1/3` のときである、 ということが書いてあった。証明も上記の論文にあったが、私には説明できない個所があったので、 自分で理解して載せたいと思う。

問 1.8 定積分 `int_0^1T(x)dx` の値を求めよ.

これは、上記の論文などで、1/2 という値が与えられているが、証明がわからない。 積分と和の順序の交換が正当化されるのならば、

`int_0^1T(x)dx = int_0^1 sum_(n=1)^oo t_n(x) dx = sum_(n=1)^oo int_0^1 t_n(x) dx `
となる。ここで、`t_n(x)` の性質として、本書 p.6 から引用する :

これらの性質から `int_0^1 t_n(x) dx= 2^(n-1) (2^-n * 2^-n) = 2^(-n-1)` となることがわかる。要はのこぎりの歯のような関数 `t_n(x)` と `x` 軸から作られる三角形の面積を足し合わせるだけである。 さて、数列 `{2^(-n-1)}_(n=1)^oo` は初項 `1//4` 、公比 `1//2` の等比数列だから、数列の和 `S` は、
` S= 1/4 (1/ (1-1//2)) = 1/2` となる。よって求める積分の値は 1 である。

9 章はランベルトの W 関数である。pp. 136-137 にある章末問題をやってみよう。

問 9.1 超越方程式 `(3x + 2)e^x = 3` の実数解を,`W` を用いて求めよ.
問 9.2 超越方程式 `(2x^2 + x - 3)e^(2x) = e^(-4x^2)` の実数解を,`W` を用いて求めよ.
問 9.3 超越方程式 `e^(-2x^2) = 3x` の実数解を,`W` を用いて求めよ.

問 9.1 の解答例 : 関数 `W` の定義と p.124 より、超越方程式 `xe^x =y` に関して、`y ge 0` のときただ一つの実数階 `x = W(y)` が存在する。与えられた方程式を変形する :
`(x+2/3)e^(x + 2/3 - 2/3) = 1`
`(x+ 2/3)e^(x + 2/3) = e^(2/3)`
`x+ 2/3 = W(e^(2/3))`
`x = W(e^(2/3)) - 2/3`

問 9.2 の解答例 : 与えられた方程式を変形する :
`(4x^2+2x-6)e^(4x^2 + 2x) = 2`
`(4x^2+2x-6)e^(4x^2 + 2x - 6) = 2 e^-6`
`(4x^2+2x-6) = W(2e^-6)`
`(2x + 1/2)^2 - 1/4 -6= W(2e^-6)`
`2x + 1/2 = +- sqrt(25/4 + W(2e^-6))`
`x = 1/2( -1/2 +- sqrt(25/4 + W(2e^-6)))`
なお、この答は p.125 に出ている。この解答例では途中の式変形を示した。

問 9.3 の解答例 : `W(y) = x` の満たす方程式を変形する :
`x e^x = y`
`sqrt(x) e^(x/2) = sqrt(y)`
この式をにらみながら与えられた超越方程式を変形する。
`e^(-2x^2) = 3x`
`3xe^(2x^2) = 1`
`3/2sqrt((2x)^2) e^(((2x)^2)/2) = 1`
`sqrt((2x)^2) e^(((2x)^2)/2) = sqrt(4/9)`
ここでさきほど変形した式と併せて
`W(4/9) = (2x)^2`
`x = 1/2 sqrt(W(4/9))`
ここで得られた `x` の近似値を式 `3xe^(2x^2)` に代入して、ほとんど 1 に近い値が得られたので感動した。

誤植

p.223 の下から4行めから3行め、 ルベーグ積分可能だがリーマン積分できない関数は存在する.典型例はディラック関数 `d(x)` (3章参照)であろう. とあるが、正しくはディリクレ関数 `d(x)` だろう。 実際、3章の p.39 に注 3.1 としてやんちゃな例として解説されているのはディリクレ関数である。 なお、ディラック測度と呼ばれる測度がある。

数式記述

このページの数式は MathJax で記述している。

書誌情報

書名ヘンテコ関数雑記帳
著者佐々木 浩宣
発行日2021 年 6 月 20 日(初版第1刷)
発行元共立出版
定価2800円(税別)
サイズA5版 240 ページ
ISBN
NDC413.51, 413.1
その他越谷市立図書館にて借りて読む

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