リーマン予想は解決するのか?副題は「絶対数学の戦略」
私は頭が弱いので、当たり前だが、難しい。まず、リーマン予想に関連して、ゼータ関数を説明する。p.113 から引用する(原文は縦書き):
それで、今では、ゼータ関数は `zeta(s)` という特別な関数記号で書かれる。`s` が自然数のとき、`zeta(s)` = 「`s` 乗数の逆数の無限和」である。
この関数について、同書の p.142 で、数学者オイラーが発見したこととして次のことが述べられている。
さらに進んでリーマンは、上記の 2. で求められているゼータ関数のゼロ点、すなわち `zeta(s) = 0` となる `s` が、 負の偶数以外にも無数に存在することを発見した。リーマンは、負の偶数以外のゼロ点は、`0.5 + `(実数)` * i` という形の複素数だけだろうと予想した。 これが、リーマン予想である。
同書では、このリーマン予想に先立って、多くの数学的事柄が「リーマン予想まであと 10 歩」という章で解説されている。 私が驚いたのは、イデアルの説明だった。同書では、イデアル理論を<集合を「数」とみなしてしまう技術といっている。 どういうことか。たとえば、整数を 3 で割った余りで分類する。(余り0)、(余り1)、(余り2)を数もどきとして扱って、 具体的な余りの計算に置き換えても矛盾が生じないようにするにはどうしたらよいか。1 + 2 = 0 と書けないのであれば、 3 つの集合 A, B, C を考える。ここで、A は 3 で割って余りが 0 となる整数の集合、B は 3 で割って余りが 1 となる整数の集合、 C は 3 で割って余りが 2 となる整数の集合とする。すると、C + B は A となる。ここで、集合 A, B, C を数とみなせばよい、ということだ。
以上を抽象的にしたものがイデアルである。 環 `X` において、その部分集合である集合 `I` がイデアルとは次の 2 条件を満たしていることをいう。
さて、先に定義した集合 `A` について考えよう。`A` はイデアルとなる。まず第1の条件を確かめよう。 なるほど、`A` は要素 0 をもっているし、`A` は `3n` という形の要素を、また `-3n` という要素も持っているので、 加法の逆元の要素も大丈夫だ。さらに、`3n + 3m = 3(n + m)` だから、`I` の中の2数の和も `I` の数となる。そして、 第2の条件も、`3n` に `X` の要素 k を乗じると `(3k)n` はやはり `I` の要素である。
一方、`B` や `C` はイデアルではない。
さて、今度は環 `X` として、`n + m sqrt(-5)` (`n, m` は整数)という形の集合を考えよう。集合 {3 × `X` の数}という形の数の全体は、 `X` におけるイデアルである。これを (3) と書く。そのほかに、ほかに `X` に属する数すべてがイデアルとなる。要素 0 、加法の逆元、 2 数の和は満たしている。`p, q` を整数として、` (n + m sqrt(-5)) * (p + q sqrt(-5)) = (np - 5mq) + (nq + mp) sqrt(-5) ` となる。
さて、`X` のイデアルは `X` に属する要素だけだろうか。
書名 | リーマン予想は解決するのか? |
著者 | 黒川 信重、小島 寛之 |
発行日 | 2010 年 9 月 9 日 (第 5 刷発行) |
発行元 | 青土社 |
定価 | 1800 円(本体) |
サイズ | 判ページ |
ISBN | 978-4-7917-6487-7 |
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