黒川 信重:ラマヌジャン探検 |
作成日:2020-06-29 最終更新日: |
ラマヌジャンの数学とその着想を存分に味わい尽くす。
数学者の中でラマヌジャンという人物はその特異性においてとびぬけている。 ラマヌジャンは数々の数学結果を得ていたが、 著者曰く:<現代の数学から見て残念なことは, 「証明する」という習慣はラマヌジャンにはあまりなかったらしい点です.> ただ、著者はしばらくしてこうも付け加えている: <もっとも、天才的な数学者が結果を予想して提出し,それを秀才数学者が証明する, というのはとても合理的な良いシステムとも言えます.> そして著者はこう締めくくっている。<これから数学の学習や研究に向かう人は, 客観的に説明できるように自分を訓練することが大切です。 せっかくの良いアイディアを持てたとしても,他の人に理解されなかったら生きません.> それは確かにそうなのだが、一方で、ラマヌジャンのようないびつな個性をうらやましく思うのが、 私のような凡人の悲しい性分だ。
第2章ではラマヌジャンによる次の等式が紹介されている。もっともこの等式はすでにオイラーが見つけていたものだそうだが、 やはり不思議である。
`prod_(p:素数) (p^2+1)/(p^2-1) = 5/2`
この証明にはオイラー積表示を用いる。
`prod_(p:素数) 1/(1-p)^-s = sum_(n=1)^oo n^-s = zeta(s)`
上記の左端がオイラー積と呼ばれ、すべての素数 `p` に関する積である。 この式自体の証明は本書ではされていない。この式を認めてラマヌジャンの 5/2 を得る。これには、 `zeta(2) = pi^2/ 6` 、`zeta(4) = pi^2/ 90` を使うのであるが、 これらの zeta の値そのものも不思議であるし、凡人はただただ感嘆するのみである。
ところで、この本は国立国会図書館のデータベースでは、日本十進分類の解析学の本とされているが、 これはリーマン予想にかかわるものだからだろうか。
数式表現は ASCIIMathML を、数式表現はMathJax を用いている。
書 名 | ラマヌジャン探検 |
著 者 | 黒川 信重 |
発行日 | |
発行元 | 岩波書店 |
定 価 | 円 |
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その他 | 越谷図書館南部図書室で借りて読む |
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