副題は「目で見る組合せトポロジーと射影幾何学」。
私のように大学数学もわからない者には、荷が重い。 本書は2部に分かれている。 第Ⅰ部は「目で見る閉曲面の分類定理」であり、第Ⅱ部は「射影平面とデザルクの定理」である。
第Ⅰ部でよく出てくる「位相同型」について、感じとしてはなんとなくわかるのだが、 心底から納得してわかるということにはなかなかならない。特に、クラインの壺が出てきてからは、 もうダメである。四角形が紙でできているとして、向かい合う辺を張り付けるまではいいが、 さらに両端の輪のうち片方をひねって貼り付けた絵を見ると、もうついていけない。だって、 貼り付ける前にひねる必要があって、 しかも3次元では輪をはりつけるのに今までの紙を突き破る絵しか書けないのに、 実際は突き破っていないことになっているのだから。そのうえ、メビウスの帯を2つ用意して、 これらの境界である閉曲線をお互いに張り合わせるとクラインの壺ができる、 という説明については驚嘆するしかない。
p.45 ではクロスキャップという曲面が解説される。 形が帽子(キャップ)に似ていることからこのように呼ばれるのだが、 私が見るとカニの爪(ハサミ)のようにしか見えない。それはともかく、 切ったり貼ったりを連発していろいろな図形を作っていくのだけれど、 私には想像力が不足しているためついていけない。
そういえば、フェアリー詰将棋の系譜に、盤を変更するというものがある。
フェアリー盤変更では縦シリンダー盤がよく知られていて、これは1段目と9段目の同じ筋どうしがつながった盤である。
同じように横シリンダーも考えられるが、作例があるかどうか知らない。
さらに妄想を広げよう。縦の筋をつなげるときに、ねじってつなげる(1段目は9段めに、2段目は8段目に…)
とすると、メビウスの帯ならぬメビウスの盤ができる。これはだいたい将棋として機能するのだろうか。
チェスの世界ではメビウスチェスというのがあるらしい :
Moebius Chess(www.chessvariants.com)
これは 1992 年から 1993 年にかけて発明されたらしい。チェス盤を2枚使うようだ。
縦横共につなげるとトーラスの盤ができあがる。これは位相的に問題はないと思うがどうだろうか。
これもトーラスチェスがあった。
Torus Chess(www.chessvariants.com)
これもチェス盤を2枚横につなげて(16x8 として)使う。サイトを見ると、ポーンは横向きに移動するようだ。
サイト先の説明を見ると、エッジ(隅)の概念がないのでキング(玉)を詰ますのは非常に難しい、
という。なるほど、そうだ。コメントによると、チェス盤1枚だけ(8x8) のトロイダルチェスと似ている、
とのことである。
さらに、クラインの壺の将棋盤もできそうだが、これは果たして指せるのだろうか。
チェスは案の定あるようだ。
Chess in a Klein Bottle(www.chessvariants.com)
このページの数式は MathJax で記述している。
書名 | 楽しもう射影平面 |
著者 | 大田 春外 |
発行日 | 2016 年 7 月 20 日 第1版第1刷発行 |
発行元 | 日本評論社 |
定価 | 2500 円(本体) |
サイズ | A5版 214 ページ |
ISBN | 978-4-535-78745-2 |
その他 | 越谷市立図書館にて借りて読む |
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