「はじめに」から引用する。
大学入試問題は,プロの数学者の関心事そのものではないでしょう. しかし,大学入試問題を作成しているのが大学の数学の先生, すなわちプロの数学者である以上, そこにはプロの数学者が大切に思っていることが見えるはずなのです.
なるほどと思うことばかりである。ただ、私の頭が弱いせいか、数学の内容はすぐ忘れてしまう。 私がおもしろいと思ったのは、p.44 の脚注にある「昔からあるジョーク」の例である。 本書を読んでもらいたい。
少し進むと p.49 で次のような個所がある。
数学では,不等式を用いて数や式の大小を調べることを 《評価する(estimate)》といいます.
数学の評価は罪がなくてうらやましい。評価ということばで思い出したことはいくつかある。 その一つは、大学でうけた解析の授業である。教官がカリキュラムに基づいた講義をしているなかで、 ふとある不等式を黒板に書き、 「私の研究で出てきたこの式を上から評価したいのですが、評価式がまだわかりません。 みなさんの中でわかった人がいたら教えてください。」と言った。 教官が研究をしているということがわかった、珍しい瞬間だった。
さらに少し進むと、p.54 に問題7が出ている。すぐあとで次のように続く:
この問題も,出題当時ずいぶん話題になりました.
「この問題も」の「も」は何だろう。私はどんな本でも飛ばして読む悪い癖があるから、こういうことが起こる。 前のページをやはり飛ばしながら読むと、p.19 で、 「問題4は出題当時,非常に話題になりました.」と書かれているので、この文を受けての「も」と思われる。 なお、問題4や問題7が具体的にどんな問題だったかということは、本書を見られたい。
p.182 では、次の記述がある。
実は, テイラー展開を持つ関数たちは非常に特別なもので, 解析的関数(analytic function)という名前がついています. 単に無限回微分可能であるだけでは,解析的関数になるとは限らないのです.
本書にはないが、無限回微分でかつ解析的関数にならない例として有名なのは、次の函数である:
`f(x) = {(e^(-1//x), if t gt 0),(0, if t le 0):}`
この `f(x)` は、`x = 0` では無限回微分ではあるが、解析的関数ではない。
このページの数式は MathJax で記述している。
書 名 | プロの数学 |
著 者 | 松野 陽一郎 |
発行日 | 2015 年 6 月 25 日(第1刷) |
発行元 | 東京図書 |
定 価 | 2200 円(本体) |
サイズ | A5 版 242ページ |
ISBN | 978-4-489-02212-8 |
その他 | 越谷市立図書館で借りて読む |
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