阿原 一志:大学数学の証明問題 発見へのプロセス

作成日:2012-12-02
最終更新日:

概要

大学数学で悩むのが証明問題である。この証明に至る糸口をどうやってみつけ、 どのように筋道を立てればいいのか、試行錯誤のプロセスをていねいに解説する。

感想

大学で解析学やら代数学を学んだときのことを思い出した。 解析学はまずε‐δ論法がわからず、どうしてもなじめなかった。 田島一郎の解析学の本や、石谷茂の「ε・δに泣く」「∀と∃に泣く」を図書館で借りて読み、 なんとかついていけるようになった。 代数学は計算方法こそ身に着いたが、代数的構造や線形空間の把握は結局わからずじまいだった。 もし、試験で線形空間に関する証明問題があったら落第したのではないかとぞっとする。

これらの問題を見て、あのころのこわい思い出がよみがえってきた。時間ができたときに、 この本の証明を味わいたいものだ。

手を動かしてみる

味わってみたいものだ、とだけ書いて何もしないのは著者に申し訳ない。第 8 話の問題8、 すなわち合成関数の微分の問題を自分でカレンダーの裏に書いて追ってみた。ちなみに問題8は次の通りである。

合成関数の微分の公式
`(g @ f)' (a)=g'(f(a)) * f'(a)`
を証明せよ。

この問題を選んだ理由は何か。 一つ考えられる理由がある。高校のときに定義は習って計算法も身に付けたが、その証明は高校の時にしなかったか、 忘れたかしたのだろう。そして大学に入った時は、授業ではやったのだろうがわざわざ証明の必要がないだろう、 と思い込んでやらなかったのだろう。

別の理由かもしれない。たまたま本書巻頭の「まえがきに代えて」で取り上げられた問題1が

`d/dxsin(x^2)` を求めよ.

という計算問題だった。これを解くには合成関数の微分の公式を必要とする。これが頭のどこかにひっかかっていた、 という理由かもしれない。

私が本書と共に証明を追っていった結果は、苦労するものだった。 ふだん頭を使っていないところを使った結果、解答を書き上げたあと頭がもうろうとしていることに気付いた。

数式記述

このページの数式は MathJax で記述している。

誤植

ところどころ「保障」ということばが使われているが、正しくは「保証」である。 たとえば、p.61 上から5行目、「自然に `q_k - p_k` は 0 に収束することが保障される」とあるが、これは保証が正しい。保障は権利や自由や安全を守ることで、 保証は請け合うこと、責任をとることなどに使われる。

p.238 の上から2行目、「`phi(x)` は `x!=a` でで定義されていることに」とあるが、もちろん、 「`phi(x)` は `x!=a` で定義されていることに」が正しい。

書誌情報

書 名大学数学の証明問題 発見へのプロセス
著 者阿原 一志
発行日2011 年 5 月 25 日(第1刷)
発行元東京図書
定 価2800 円(本体)
サイズA5 版 266ページ
ISBN978-4-489-02099-5
NDC

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MARUYAMA Satosi