「まえがき」から引用する。
(前略)そこでこの本では,Kähler-Einstein 計量に焦点をしぼって取り扱うことにした. (中略)Kähler-Einstein 計量について学べば他の問題に応用できることも多く, 複素幾何の研究への入口としてふさわしいのではないかと思う.また,二木,板東,満渕ら日本人研究者の貢献が多いことも,この問題の特徴である. (中略)読者としては,解析に興味を持っている微分幾何,複素幾何専攻の学生・研究者と, 逆に幾何に興味を持っている解析専攻の学生・研究者の両方を想定した.問題の性格上,複素幾何と解析についてそれぞれ次の予備知識を仮定する. 複素幾何については Kähler 計量と層のコホモロジー群の基本的なことを理解していること,(中略)
「まえがき」にあるような予備知識は私は全く持ち合わせていないので、この本を読む資格がない。そこで、まえがきにある日本人研究者の貢献が多い
という文言が気になったので、
本書にある日本人の名前を少し調べてみた。
まず、「まえがき」に出てきた二木とは、二木昭人氏を指す。本書の「§3.2 二木の障害」や、この節で示された「二木不変量」は氏の名前にちなむものだろう。
また、板東とは板東重稔氏を、満渕とは満渕俊樹氏を指す。「まえがき」では両氏から多くを学んできたことを述べたうえでこの両氏から原稿に貴重なご意見をいただいた.この場を借りて両氏に深く感謝したい.
と結んでいる。
それでは「まえがき」に出てこない日本人研究者は誰がいるのだろう。目次をみてみると、「§3.1 松島の障害」がある。文献一覧を見ると Y. Matsushima の名前でフランス語の論文がある。 Y. Matsushima ということは、松島与三だろうか。有名な「多様体の基礎」の著者である。なお、これらの「障害」は obstruction の訳語のようだ。
数式は MathJax を用いている。
書名 | 非線形問題と複素幾何学 |
著者 | 中島啓 |
発行日 | 1999 年 6 月 28 日 |
発行元 | 岩波書店 |
定価 | ???? 円(本体) |
サイズ | A5 版 |
ISBN | 4-00-010656-2 |
備考 | 草加市立図書館で借りて読む |
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