西白保 敏彦:測度・積分論 |
作成日:2021-05-29 最終更新日: |
著者曰く、
今日,ルベーグ(Lebesgue)積分論を構成する方法は種々あるが,
本書では,この理論を取り巻く歴史的発展の背景を踏まえて,概念導入の自然さをはかり,
理論体系の構造を明快に解説する.
目次は次の通り。
1. 基礎概念 1.1 集合と集合族 1.2 集合算 1.3 写像と集合関数 1.4 上限, 下限, 上極限, 下極限, 極限 1.5 Euclid空間と距離空間 第1章の問題 2. 測度 2.1 可測空間 2.2 測度空間 2.3 測度空間の完備化 2.4 測度の構成法 2.5 測度の拡張 2.6 Lebesgue測度の構成 2.7 Lebesgue測度の基本的性質 第2章の問題 3. 積分 3.1 測関数 3.2 近似定理 3.3 積分の定義と基本的性質 3.4 収束定理 3.5 直積測度とFubiniの定理 第3章の問題 4. 符号付き測度 4.1 Hahnの分解定理 4.2 Jordanの分解定理 4.3 Lebesgueの分解定理 4.4 Radon-Nikodymの定理 4.5 有界変動関数と絶対連続関数 第4章の問題 5. 関数空間 5.1 Banach空間 5.2 Hilbert空間 5.3 Lebesgue空間 5.4 Clarksonの不等式と Lp -ノルムの一様凸性 5.5 Lp の共役空間 5.6 合成積近似法 5.7 正線形汎関数と正Radon測度 第5章の問題
pp.5-6 に、対称差の定義がある。
`A ⊖ B = (A \\ B) + (B \\ A)`
で定義される集合を `A` と `B` の対称差集合または単に対称差という.
ここで `A \\ B` は `A` と `B` の差集合である。特に問題はなさそうに見えるが、 気になったのは集合に関する演算で + は本書では定義されていないのだ。 少し考えて、互いに素な集合の和集合を + で定義するのだろうと推測した。 この推測を裏付ける記述は、p.6 にある。
例 1.2.1 `Λ = {1, 2, cdots, n}, Λ = NN` のとき,和集合,共通集合はそれぞれ
`uuu_(i=1)^n A_i , quad uuu{A_i : i = 1, 2, ldots, n}, quad A_1 uu A_2 uu cdots uu A_n,`等と書く.特に,互いに素な集合列に対して,上記の表示で `uuu` を `sum` で置き換える.
`uuu_(n=1)^oo A_n , quad uuu{A_n : n = 1, 2, ldots},`
`nnn_(i=1)^n A_i , quad nnn{A_i : i = 1, 2, ldots, n}, A_1 nn A_2 nn cdots nn A_n,`
`nnn_(n=1)^oo A_n , quad nnn{A_n : n = 1, 2, ldots}`
ここで、互いに素な集合列に対して,上記の表示で `uuu` を `sum` で置き換える
という表明があったので、
`uu` を `+` で置き換えることも正しいと考えられる。
なお、本書では `uuu` は `uu` で書かれているが、私の判断で、集合列全体を処理する記号は `uuu` に変更した。
また、式が4行にわたっているが、これらはそれぞれ `Λ = {1, 2, cdots, n}` の和集合、
`Λ = NN` の和集合、`Λ = {1, 2, cdots, n}` の共通集合、`Λ = NN` の共通集合の表記と考えられる。
本書では長音のーがすべてハイフン-で表示されている。たとえば、最初のページ i のはしがきでは、 本来リーマン、カテゴリー、ルベーグと表記されるべきところがそれぞれリ-マン、カテゴリ-、ルベ-グと表記されている。 これは見ていて少し気になる (この逆に比べればまだましだとは思うが)。
別の関数解析の本の評で 「人名をカタカナで表記するのか、原語で表記するのかは悩ましい問題だ」 と私は書いた。同書では一貫して原語表記(ただし、ロシア系の人名はラテン語表記)してある。 この表記の難点は読み方がわからないことであるが、同書では人名索引という形でアイウエオ順に読み方を pp.302-304 で示すことで解決している。 ここではその数学者の生没年も記載されてありがたい。
しかし、一部の数学者については生没年が記載されていない。 ここでは、生年や没年が記載されていない数学者に対して インターネットで調べた結果を付記する。
イタリアの数学者。ベッポ・レヴィの単調収束定理(本書 p.125) が知られている。
イタリアの数学者。ボレル=カンテリの定理(本書 p.93)が有名。
アメリカの数学者。クラークソンの不等式(本書 p.249)が知られている。
ポーランドの数学者。ラドン=ニコディムの定理(本書 p.197)で有名。 本書では生年が 1878 年となっている。なお、つづり字は Nikodým のように、 y の上に鋭いアクセントを付ける場合もある。
ページ | 行 | 誤 | 正 |
---|---|---|---|
i | 上から11行目 | 出来なっかたり, | 出来なかったり, |
14 | 上から6行目 | `(ho(g@f))(x) = h((g@f)(x)) = h((g(f(x))).` | `(h@(g@f))(x) = h((g@f)(x)) = h(g(f(x))).` |
17 | 上から3行目 | 以下復号同順 | 以下複号同順 |
28 | 下から5行目 | `S(a, n_1), S(a, n_2), cdots, S(a, n_k}` | `{S(a, n_1), S(a, n_2), cdots, S(a, n_k)}` |
数式表現はMathJax を用いている。
書 名 | 測度・積分論 |
著 者 | 西白保 敏彦 |
発行日 | 年 月 日 |
発行元 | 横浜図書 |
定 価 | 円 |
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NDC |
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