山下光雄:数学ロングトレイル「大学への数学」に挑戦

作成日 : 2023-06-16
最終更新日:

概要

本書裏から引用する。

いまだからできる、マイペースで学べる
たどり着けなかった知の頂に再挑戦。

感想

本書は第0章から第15章の全16章で構成されている。第0章があるのがさすがである。

帰納法

本書はプロローグから始まり、第1部、第2部、第3部を経てフィナーレで締めくくられている。 プロローグは第0章だけからなる。第0章は「数学的帰納法について」と題されている。

pp.16-17 では、通常の数学的帰納法より強い仮定を使って次の命題を証明している。

例題 4 `a, b` は実数で,`a+b` および `ab` が共に有理数であるとき,すべての自然数 `n` に対し, `a^n+b^n` は有理数であることを数学的帰納法で証明せよ。

おおまかな方針をいえば、`a+b` および `a^2+b^2` が有理数であることをまず確認したのち、 `a^(k-1)+b^(k-1)` および `a^k+b^k` がともに有理数であれば `a^(k+1) + b^(k+1)` も有理数であることを証明する。 ここで、`a^(k-1)+b^(k-1)` と `a^k+b^k` の両方がともに有理数であることを仮定すること、つまり前2つの仮定を使うことが「強い」という意味である。 この伝でいけば、次のように問題を拡張すれば、より強い仮定が必要になる。

`a, b, c` は実数で,`a+b+c` 、`ab+bc+ca`、 および `abc` が共に有理数であるとき,すべての自然数 `n` に対し, `a^n+b^n+c^n` は有理数であることを数学的帰納法で証明せよ。

これを証明するのは、次のようになるだろうか。
(I) まず、`n = 1` のとき、`a^1+b^1+c^1 = a + b + c` は当初の条件から有理数である。
また、`n=2` のとき、`a^2+b^2+c^2 = (a+b+c)^2 - 2(ab + bc+ ca)` であり、右辺は有理数であるので左辺も有理数である。
さらに、`n=3` のとき、`a^3+b^3+c^3 = (a+b+c)(a^2+b^2+c^2 - ab - bc - ca) + 3abc` であり、右辺は有理数であるので左辺も有理数である。
(II) `n = k, n = k + 1` および `n = k+2` のとき成り立つと仮定する。 すなわち `a^k+b^k+c^k`、`a^(k+1)+b^(k+1) + c^(k+1)` および `a^(k+2) + b^(k+2) + c^(k+2)` がすべて有理数であると仮定する。
`n = k+3` のとき、
`a^(k+3) +b^(k+3)+c^(k+3) = (a^(k+2) + b^(k+2) + c^(k+2))(a+b+c) - {a^(k+2)(b + c)+ b^(k+2)(c + a)+ c^(k+2)(a + b)}`

わたしはここでくじけてしまった。ここから先は、次のページの通り計算すればできる。
https://mathematicsgarden.com/3taishosiki/

数式と図の記述

数式は MathJax で記述している。

書誌情報

書名 数学ロングトレイル「大学への数学」に挑戦
著者 山下光雄
発行日 2015 年 6 月 20 日(第1刷)
発行元 講談社
定価 1180 円(本体)
NDC 376.8
サイズ 18cm 350ページ
ISBN 978-4-06-257913-1
その他 講談社ブルーバックス、草加市立図書館で借りて読む

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MARUYAMA Satosi