「まえがき」から引用する。
線形代数は,自然科学や数学のいくつかの分野に散在していた数学的現象の共通性を見抜き, その本質を抽き出して作られた数学である.いわゆる抽象数学の典型で, 大学初年級の学生諸君にとって,どのようにして数学が創られるかを学ぶ格好な教材と思われる.
矢ヶ部先生の著作では、本書に限らず、箱崎、香椎、六本松の3 人が出てくる。 これらの名字はすべて福岡市の地名にちなんでいる。 ただし、「数Ⅲ方式 ガロアの理論」では、同じく 3 人が出てくるが名前は異なる。
「数Ⅲ方式 ガロアの理論」のように、有名なことばや世相を表すことばが出てくる。ほとんどが六本松のセリフである。
p.137
1 次独立か 1 次独立でないか,それが問題!
ハムレットの有名なセリフ、<To be or not to be, that is the question. >のもじり。
p.143
百も承知,千も合点!
普通は「百も承知、二百も合点」という。このあと六本松は続けて<定義に返って>という命令だったから,
バカていねいに,したまで.
と続けている。
p.156
ザンギリ頭を叩いてみれば,空間分類の音がする!
「ザンギリ頭を叩いてみれば、文明開花の音がする」のもじり。
p.164
待とう ― 有限次元空間より愛をこめて!
おそらく「007/ロシアより愛をこめて」のもじり。
p.50 で、〈等式の両辺に同じ減を足しても,等号は変わらない〉という、 一見当たり前の主張がある。しかし、よく考えると(考えすぎると)本当にそれでいいのだろうか、 という疑問がわいてくる。本書では、この主張が正しいことが説明されている。なるほど、胸のつかえが降りた。
線形空間の公理系の性質(法則)は普通 8 つあるが、 そのうち(いわゆる加法の)交換法則は、他の法則から導けることを示している。 このようなことを書いてある書籍はあまりお目にかかったことがない。 それで、性質を 7 つに減らした線形空間の公理系とを示している(p.52)。そしてこの 7 つの公理系は、 8 つの公理系と同値であることを確かめたあと、7 つの公理系がすべて独立であること、 すなわち 7 つの公理系のうち 1 つのみが成り立たず他の 6 つが成り立つとしても何等矛盾を生じない公理系が存在することを、 具体例を挙げて示している。これには感心した。
p.48 の下から 7 行目、
(ⅴ) `(ab)@color(red)(a) = a@(b@alpha) (a, b in F, alpha in V)`
となっているが、
正しくは
《(ⅴ) `(ab)@color(blue)(alpha) = a@(b@alpha) (a, b in F, alpha in V)` 》である。
p.50 の上から 8 行目、
一般に,`gamma o+ delta, gamma' o+ delta` は,それぞれ `(gamma, delta'), (gamma', delta)` に
となっているが、正しくは
《 `gamma o+ delta, gamma' o+ delta` は,それぞれ `(gamma, delta), (gamma', delta)` に 》である。
数式表示には MathJax を使っている。
書名 | 線形代数の構図 |
著者 | 矢ヶ部巖 |
発行日 | 1980 年 5 月 20 日 初版発行 |
発行元 | 現代数学社 |
定価 | 2300 円(本体) |
サイズ | A5 判 166 ページ |
ISBN | なし |
備考 | 川口市立図書館で借りて読む |
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