副題は「微積分・微分方程式・確率統計」
「はじめに」で著者は、情報社会の急激な進展のもと、激しい競争にさらされたり、
人工知能の発展でヒトが多くの仕事を奪われたりすることを述べたうえで、
そのような社会において私たちは何を身につけていけばよいのでしょうか.
私は有効な答えの 1 つに,数学を活用することがあるように思っています.
と述べている.もちろん、その理由やその背景について書かれているのだけれど、
私はこの回答は残念ながらこの世の中には当てはまらないように感じる。
なぜ、そんなことをいうのか。世の中は理詰めでは動かないから、というのがその理由である。
少なくとも日本の政治は、理詰めでは動いていない。著者だって有効な答えの 1 つといっているだけだから、
万能だともいっていないし、数学の活用が有効だと断言しているわけでもない。
ただ、社会で生き抜くことの効用に数学を挙げるのは、何か違うような気がする。
それはそれとして、本書には盛りだくさんな内容が含まれている。これらをすべて把握するのは容易ではない。 自分が気に入っているところから読めばいいのではないかと思う。
pp.161-162 発展 11 複雑な統計モデルについて
p.162 でモデル選択のための基準の1つに AIC(赤池情報量基準)と呼ばれるものがあり,
と解説されている。一般に、AIC は「赤池情報量規準」の字を充てるのが普通だ。また、
本書では AIC に関する参考文献が書かれていない。日本語で読める文献としては、
共立出版の坂元・石黒・北川の「情報量統計学」を挙げるべきだろうが、
残念ながら版元の WEB ページを見てみると「この書籍は現在お取り扱いできません。」となっている。
現在手に入るのは、朝倉書店の小西・北川「情報量規準」などだろうか。
私は見ていないが、p.165 の脚注にある、コロナ社の渡辺澄夫「ベイズ統計の理論と方法」に、
AIC があるかもしれない。
このページの数式は MathJax で記述している。
書 名 | 「極限」を使いこなす |
著 者 | 小谷 潔 |
発行日 | 2017 年 10 月 27 日(初版) |
発行元 | 東京大学出版会 |
定 価 | 3600 円(本体) |
サイズ | A5版 251 ページ |
ISBN | 978-4-13-063903-3 |
その他 | 越谷市立図書館にて借りて読む |
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