加藤昌英 : 複素関数論

作成日 : 2022-11-13
最終更新日 :

概要

「まえがき」より引用する :

本書の内容は,1 変数正則関数の解析的な側面と幾何学的な側面の解説である.

本文には各所で問がある。また各章には章末問題があり、どちらも一部を除き詳細な解答がある。参考文献もある。

感想

詳細な解答があるのがありがたい。しかし、解答が省略されているものもある。p.2 の次がそうだ。

問 1.1 次を示せ.

  1. `"Re"\ z = 1/2 (z + barz)`
  2. `"Im"\ z = 1/(2i) (z + barz)`
  3. `|z|=0 hArr "Re"\ z = "Im"\ z = 0`
  4. `|"Re"\ z| le |z|`
  5. `|"Im"\ z| le |z|`
  6. `|z + w| le |z| + |w|`
  7. `||z| - |w|| le |z - w|`
  8. `|zw| = |z||w|`

なんとかやってみよう。

(1) `z = x + iy` とおく。左辺は定義から `x` である。右辺を計算すると、`1/2 (z + barz) = 1/2 ((x + iy)+(x - iy)) = 1/2(2x) =x` となり、確かに等しい。

(2) `z = x + iy` とおく。左辺は定義から `y` である。右辺を計算すると、`1/(2i) (z - barz) = 1/(2i) ((x + iy)-(x - iy)) = 1/(2i)(2iy) =y` となり、確かに等しい。

(3) `z = x + iy` とおく。まず `rArr` を示す。`|z| = 0` であるから、`|z| = (zbarz)^(1/2) = (x^2+y^2)^(1/2) = 0`。 最後の等式の両辺を2乗して、`x^2+y^2 = 0`。`x, y in RR` であるから、`x = y = 0` である。よって `rArr` がいえた。 次に `lArr` を示す。`"Re"\ z = "Im"\ z = 0` であることから、定義より `x = 0, y = 0` よって、`z = x + iy = 0 + i*0 = 0`。よって `lArr` がいえた。 以上から `hArr` がいえた。

(4) 示すべき式の両辺は正またはゼロだから、`|"Re"\ z|^2 le |z|^2` と同値。`z = x + iy` とおく。 左辺は `x^2` である。右辺は `x^2+y^2` だから、`x^2 le x^2 + y^2` であるから与えられた不等式は成り立つ。 等号成立は `y = 0` のとき、すなわち `"Im"\ z = 0` のときであり、このときに限る。

(5) 示すべき式の両辺は正またはゼロだから、`|"Im"\ z|^2 le |z|^2` と同値。`z = x + iy` とおく。 左辺は `y^2` である。右辺は `x^2+y^2` だから、`y^2 le x^2 + y^2` であるから与えられた不等式は成り立つ。 等号成立は `x = 0` のとき、すなわち `"Re"\ z = 0` のときであり、このときに限る。

以下は森正武・杉原正顕:複素関数論Ⅰにしたがって示す。

(6) 示すべき式の両辺は正またはゼロだから、`|z+w|^2 le |z|^2` と同値。左辺 - 右辺 がマイナスかゼロになることを示せばよい。
左辺 - 右辺 = `|z+w|^2 - (|z| + |w|)^2 = (z + w)(barz+barw) - (|z|^2 + 2|z||w| + |w|^2) = zbarw + barzw - 2|z||w| = 2"Re"\ zbarw - 2|z||w|`。 最後の式変形では (1) を用いた。ところで、(4) から、`alpha` を複素数とすれば `"Re"\ alpha-|alpha| le 0`がなりたつ(等号成立は `alpha` が 0 または正の実数の場合に限る)ので、`alpha = z bar w` とすれば `|z||w|=|z||barw|=|zbar(w)|`と合わせて、 先の計算式が`le 0`になることがわかる。

(7) (6) から、複素数 `alpha` と `beta` について `alpha + beta| le |alpha| + |beta|` が成り立つ。 `alpha = w, beta = z - w` として、`|z| le |w| + |z - w|`、すなわち `|z| - |w| le |z - w|`。 また `alpha = z, beta = w - z` として、`|w| le |z| + |w - z|`、すなわち `|w| - |z| le |w-z| = |z - w|`。 `|z - w|` に関してまとめると、`|z - w| ge max(|z|-|w|,|w|-|z|) = ||z|-|w||`

(8) 両辺を2乗した `|zw|^2 = |z|^2|w|^2` について示せばよい。`|zw|^2 = zwbarzbarw = zbarzwbarw = |z|^2|w|^2`

本書のうち、実積分の積分値を求める JavaScript を書いてみた。 複素関数のページにある。

数式記述

このページの数式は MathJax で記述している。

書誌情報

書名複素関数論
著者加藤昌英
発行日2003 年 2 月 10 日 初版第 1 刷
発行元朝倉書店
定価3800 円(本体)
サイズA5版 232 ページ
ISBN4-254-11589-X
その他草加市立図書館にて借りて読む

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MARUYAMA Satosi