「まえがき」より引用する :
本書の内容は,1 変数正則関数の解析的な側面と幾何学的な側面の解説である.
本文には各所で問がある。また各章には章末問題があり、どちらも一部を除き詳細な解答がある。参考文献もある。
詳細な解答があるのがありがたい。しかし、解答が省略されているものもある。p.2 の次がそうだ。
問 1.1 次を示せ.
- `"Re"\ z = 1/2 (z + barz)`
- `"Im"\ z = 1/(2i) (z + barz)`
- `|z|=0 hArr "Re"\ z = "Im"\ z = 0`
- `|"Re"\ z| le |z|`
- `|"Im"\ z| le |z|`
- `|z + w| le |z| + |w|`
- `||z| - |w|| le |z - w|`
- `|zw| = |z||w|`
なんとかやってみよう。
(1) `z = x + iy` とおく。左辺は定義から `x` である。右辺を計算すると、`1/2 (z + barz) = 1/2 ((x + iy)+(x - iy)) = 1/2(2x) =x` となり、確かに等しい。
(2) `z = x + iy` とおく。左辺は定義から `y` である。右辺を計算すると、`1/(2i) (z - barz) = 1/(2i) ((x + iy)-(x - iy)) = 1/(2i)(2iy) =y` となり、確かに等しい。
(3) `z = x + iy` とおく。まず `rArr` を示す。`|z| = 0` であるから、`|z| = (zbarz)^(1/2) = (x^2+y^2)^(1/2) = 0`。 最後の等式の両辺を2乗して、`x^2+y^2 = 0`。`x, y in RR` であるから、`x = y = 0` である。よって `rArr` がいえた。 次に `lArr` を示す。`"Re"\ z = "Im"\ z = 0` であることから、定義より `x = 0, y = 0` よって、`z = x + iy = 0 + i*0 = 0`。よって `lArr` がいえた。 以上から `hArr` がいえた。
(4) 示すべき式の両辺は正またはゼロだから、`|"Re"\ z|^2 le |z|^2` と同値。`z = x + iy` とおく。 左辺は `x^2` である。右辺は `x^2+y^2` だから、`x^2 le x^2 + y^2` であるから与えられた不等式は成り立つ。 等号成立は `y = 0` のとき、すなわち `"Im"\ z = 0` のときであり、このときに限る。
(5) 示すべき式の両辺は正またはゼロだから、`|"Im"\ z|^2 le |z|^2` と同値。`z = x + iy` とおく。 左辺は `y^2` である。右辺は `x^2+y^2` だから、`y^2 le x^2 + y^2` であるから与えられた不等式は成り立つ。 等号成立は `x = 0` のとき、すなわち `"Re"\ z = 0` のときであり、このときに限る。
以下は森正武・杉原正顕:複素関数論Ⅰにしたがって示す。
(6) 示すべき式の両辺は正またはゼロだから、`|z+w|^2 le |z|^2` と同値。左辺 - 右辺 がマイナスかゼロになることを示せばよい。
左辺 - 右辺 = `|z+w|^2 - (|z| + |w|)^2 = (z + w)(barz+barw) - (|z|^2 + 2|z||w| + |w|^2)
= zbarw + barzw - 2|z||w| = 2"Re"\ zbarw - 2|z||w|`。
最後の式変形では (1) を用いた。ところで、(4) から、`alpha` を複素数とすれば `"Re"\ alpha-|alpha| le 0`がなりたつ(等号成立は
`alpha` が 0 または正の実数の場合に限る)ので、`alpha = z bar w` とすれば `|z||w|=|z||barw|=|zbar(w)|`と合わせて、
先の計算式が`le 0`になることがわかる。
(7) (6) から、複素数 `alpha` と `beta` について `alpha + beta| le |alpha| + |beta|` が成り立つ。 `alpha = w, beta = z - w` として、`|z| le |w| + |z - w|`、すなわち `|z| - |w| le |z - w|`。 また `alpha = z, beta = w - z` として、`|w| le |z| + |w - z|`、すなわち `|w| - |z| le |w-z| = |z - w|`。 `|z - w|` に関してまとめると、`|z - w| ge max(|z|-|w|,|w|-|z|) = ||z|-|w||`
(8) 両辺を2乗した `|zw|^2 = |z|^2|w|^2` について示せばよい。`|zw|^2 = zwbarzbarw = zbarzwbarw = |z|^2|w|^2`
本書のうち、実積分の積分値を求める JavaScript を書いてみた。 複素関数のページにある。
このページの数式は MathJax で記述している。
書名 | 複素関数論 |
著者 | 加藤昌英 |
発行日 | 2003 年 2 月 10 日 初版第 1 刷 |
発行元 | 朝倉書店 |
定価 | 3800 円(本体) |
サイズ | A5版 232 ページ |
ISBN | 4-254-11589-X |
その他 | 草加市立図書館にて借りて読む |
まりんきょ学問所 > 数学の本 > 加藤昌英 : 複素関数論