まえがきから引用する。(前略)この `π` の値をどのようにして導出してきたかは,大学を卒業してもよくわからない.
(中略)そこで,大学初級程度の能力で理解できる教科書並みの書物が必要と考え,書くことにした.
本書のほとんど至るところで、小数点が「少数点」と書かれている。これでは少数点どころ多数点だろう。 不思議なのは、一部では正しく「小数点」と書かれている。これはいったいなぜだろう。
p.17 の本文は次のように始まる。
次に示すツェータ(`xi`)関数からも円周率 `pi` の値を求めることができる.
`xi(n) = sum_(k=1)^oo 1/k^n`
この 2 箇所で現れる `xi` はツェータではなく、クシー(グザイ)である。本書の 96 ページのギリシャ文字の呼称では、 クシーの読みが充てられている。ツェータは `zeta` である。 なお、p.94 の付録でもツェータ関数は誤って `xi(n)` と記されている。
このようなことがわかると、数値計算も本当にあっているのだろうかという疑念がわいてくる。しかし、 検算はしていない。
それから、誤植とはいえないだろうが、本書の(等号をもたない)不等号は直線部からなる `gt` や `lt` でなく、 曲線部からなる `prec` や `succ` である。通常 `prec` は `succ` は数の大小には使われず、順序の後先を表わすために使われる。 一方で、本書の等号をもつ場合は `ge` や `le` の通り、直線部からなる不等号である。なぜだろう。
p.16 で `pi` の計算公式が列挙されていて、
最後に
その他いろいろな公式が多数の研究者によって提案されているが,
それについては他の書物を参考にされたい.
と結んでいる。しかし、「他の書物」とは何か、わからない。せめて参考文献でも挙げてくれればいいのに、
と思う。
p.1 の 1.1 節のタイトルは、円周率 `pi = 3.14159265358979323846264338327cdots` を求めよう
とある。ところが、この本のどこにも、このタイトルの通り小数点以下 29 ケタを計算した結果がない。
p.13 では、マチンの公式を使って,この節のタイトルに示した `pi = 3.14159cdots`,
有効数字 15 ケタまで一致させるためには,右辺第何項まで必要か.計算を行ってみよ.
とある。このタイトルは 29 ケタまであると思うのだけれど。ちなみにこの答は右辺第 11 項までの和だそうだ。
この、書評とはいえない、たわごとを書いたのが 3 月 14 日である。 これも何かの縁であろう。
書名 | π の計算 |
著者 | 木田外明 |
発行日 | 2013 年 11 月 25 日 初版第1刷 |
発行所 | 共立出版 |
定価 | 900 円(本体) |
サイズ | A5 版 |
ISBN | 978-4-320-11057-1 |
NDC | 414 |
その他 | 越谷市立図書館で借りて読む |
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