木田外明: `π` の計算

作成日 : 2022-03-14
最終更新日 :

概要

まえがきから引用する。(前略)この `π` の値をどのようにして導出してきたかは,大学を卒業してもよくわからない. (中略)そこで,大学初級程度の能力で理解できる教科書並みの書物が必要と考え,書くことにした.

誤植

本書のほとんど至るところで、小数点が「少数点」と書かれている。これでは少数点どころ多数点だろう。 不思議なのは、一部では正しく「小数点」と書かれている。これはいったいなぜだろう。

p.17 の本文は次のように始まる。

次に示すツェータ(`xi`)関数からも円周率 `pi` の値を求めることができる.

`xi(n) = sum_(k=1)^oo 1/k^n`

この 2 箇所で現れる `xi` はツェータではなく、クシー(グザイ)である。本書の 96 ページのギリシャ文字の呼称では、 クシーの読みが充てられている。ツェータは `zeta` である。 なお、p.94 の付録でもツェータ関数は誤って `xi(n)` と記されている。

このようなことがわかると、数値計算も本当にあっているのだろうかという疑念がわいてくる。しかし、 検算はしていない。

それから、誤植とはいえないだろうが、本書の(等号をもたない)不等号は直線部からなる `gt` や `lt` でなく、 曲線部からなる `prec` や `succ` である。通常 `prec` は `succ` は数の大小には使われず、順序の後先を表わすために使われる。 一方で、本書の等号をもつ場合は `ge` や `le` の通り、直線部からなる不等号である。なぜだろう。

ないものねだり

p.16 で `pi` の計算公式が列挙されていて、 最後にその他いろいろな公式が多数の研究者によって提案されているが, それについては他の書物を参考にされたい. と結んでいる。しかし、「他の書物」とは何か、わからない。せめて参考文献でも挙げてくれればいいのに、 と思う。

p.1 の 1.1 節のタイトルは、円周率 `pi = 3.14159265358979323846264338327cdots` を求めよう とある。ところが、この本のどこにも、このタイトルの通り小数点以下 29 ケタを計算した結果がない。 p.13 では、マチンの公式を使って,この節のタイトルに示した `pi = 3.14159cdots`, 有効数字 15 ケタまで一致させるためには,右辺第何項まで必要か.計算を行ってみよ. とある。このタイトルは 29 ケタまであると思うのだけれど。ちなみにこの答は右辺第 11 項までの和だそうだ。

この、書評とはいえない、たわごとを書いたのが 3 月 14 日である。 これも何かの縁であろう。

書誌情報

書名π の計算
著者木田外明
発行日2013 年 11 月 25 日 初版第1刷
発行所共立出版
定価900 円(本体)
サイズA5 版
ISBN978-4-320-11057-1
NDC414
その他越谷市立図書館で借りて読む

まりんきょ学問所数学の部屋数学の本 > 木田外明:π の計算


MARUYAMA Satosi