円周率 π についての話。
本書には数学はあまり出てこない。それでも、取り尽くし法(本書では悉尽法と訳している)のことが書かれていて興味深い。 なかでも面白かったのはチュドノフスキー兄弟について書かれた章だった。 私にとって、有名な兄弟といえば飛行機のライト兄弟、プロレスのシャープ兄弟、 ピアノのコンタルスキー兄弟、ギターのアサド兄弟と同じくらい、 兄のデビッド(ダフィト)と弟のグレゴリーのチュドノフスキー兄弟というのは身近な存在である。 (なお近江兄弟社というのがあるが、これは近江という名の兄弟がいたからこの名が付いたというものではない。) チュドノフスキー兄弟は、一時期日本の金田康正と円周率を求める記録を競い合った。 チュドノフスキー兄弟は独自のアルゴリズムを考案したということは知っていたが、 計算機も独自で作り上げたということは知らなかった。 おまけに、弟のグレゴリーは重症筋無力症を患っていることも本書を読んで初めて知った。ウーム。
p.84 には次の囲み記事がある。
`pi e` が無理数であることはわかっている。だが、`2 pi` 、 `pi + e`、`pi^e` が無理数であることを証明するのは非常に困難で、その確証はない。
これは妙だ。`2 pi` は無理数である。これは `pi` が無理数であることを認めれば簡単にわかる。 `2 pi` ではなくて `pi^2` だったのか。でも、`pi^2` も無理数であることはわかる。 岩本義和による証明は、まず `pi^2` が無理数であることを証明してから `pi` が無理数であることを証明するものだ。 `pi^pi` であれば、これは無理数であるかどうかさえわかっていないという。
p.109 の数学詩で立法根
という表記があるが、ふつうは《立方根》である。
なお、この書評とはいえない、たわごとを書いたのが 3 月 15 日である。 3 月 14 日には 1 日遅かった。
書名 | π の神秘 |
著者 | デビット・ブラットナー |
訳者 | 浅尾敦則 |
発行日 | 1999 年 7 月 24 日 初版第 1 刷 |
発行所 | アーティストハウス |
定価 | 1,600 円(本体) |
サイズ | |
ISBN | 4-901142-09-7 |
NDC | 414.1 |
その他 | 越谷市立図書館で借りて読む |
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