副題は「―多変数の微積分―」
第8章ではベクトル解析について述べられている。ベクトル解析では、 div, grad, rot から説明する古典的なベクトル解析の説明と、 微分形式を導入してから説明する現代のベクトル解析の説明に分けられる。 本書は微分形式を導入してから始めるので、後者である。p.106 で著者自身が明言している。
おもしろいのでしばらく本書の問題を解いてみよう。
まず記号の定義がある。p.106 では、関数はすべて必要なだけ回数だけ偏微分でき、偏導関数は連続であるものとする.(中略)
こうした関数のなす集合を `Omega_0` と記す.
その後、1次微分形式、2次微分形式、3次微分形式が定義される。
また、1次微分形式全体のなす集合を `Omega_1` とする記法が導入される。
そのあとで微分形式の積が定義され(ここでは省略)、外微分が次のように定義される:
`f in Omega^0` に対してその外微分 `df` を
`df = (delf)/(delx)dx + (delf)/(dely)dy + (delf)/(delz)dz`
によって定義する.
そこで、同じ p.109 にある次の定理を証明する。なお、上から (1), (2), (3) とする。
定理8.1.1
`d(Pdx + Qdy + Rdz) = ((delR)/(dely) - (delQ)/(delz))dz ^^ dz +((delP)/(delz) - (delR)/(delx))dz ^^ dx +((delQ)/(delx) - (delP)/(dely))dx ^^ dy`
`d(Pdy^^dz + Qdz^^dx + Rdx^^dy) = ((delP)/(delx) + (delQ)/(dely)+ (delR)/(delz))dx^^dy ^^ dz`
`AA omega in Omega^i (i = 0, 1), quad d^2 omega = d(d omega) = 0`
まず (1) からやってみよう。まず、`dPdx` から計算してみる。
`d(Pdx) = dP^^dx=((delP)/(delx) dx + (delP)/(dely) dy + (delP)/(delz) dz )^^dx = (delP)/(delz) dz ^^ dx - (delP)/(dely)dx ^^ dy`
同様に、`dQdy` と `dRdz` も計算してみる。
`d(Qdy)
= (delQ)/(delx) dx ^^ dy - (delQ)/(delz)dy ^^ dz`
`d(Rdz)
= (delR)/(dely) dy ^^ dz - (delR)/(delx)dz ^^ dx`
これらを加えて、おなじ楔をまとめる。
`d(Pdx + Qdy + Rdz) = ((delR)/(dely) - (delQ)/(delz))dy ^^ dz + ((delP)/(delz) - (delR)/(delx))dz ^^ dx + ((delQ)/(delx) - (delR)/(dely))dx ^^ dy`
書き下した式が何度も違っていたが、サイクリックな式になるように見比べて何度も修正した結果、 右辺と同じになった。
次に (2) をやってみよう。まず、`d(Pdy^^dz)` から計算してみる。
`d(Pdy^^dz) = ((delP)/(delx) dx + (delP)/(dely) dy + (delP)/(delz) dz )(dy^^dz) = (delP)/(delx) dx^^dy^^dz`
同様に、`d(Qdz^^dx)` と `d(Rdx^^dy)` を計算してみる。楔の順序を変えるときに注意する。
`d(Qdz^^dx) = (delQ)/(dely) dy^^dz^^dx = -(delQ)/(dely) dy^^dx^^dz = (delQ)/(dely) dx^^dy^^dz`
`d(Rdx^^dy) = (delR)/(delz) dz^^dx^^dy = -(delR)/(delz) dx^^dz^^dy = (delR)/(delz) dx^^dy^^dz`
これらを加える。
`d(Pdy^^dz+Qdz^^dx+Rdx^^dy) = ((delP)/(delx) + (delQ)/(dely) + (delR)/(delz))dx^^dy^^dz`
最後は(3) だ。まず、`omega in Omega_0` の場合を計算する。
`domega = (delf)/(delx) dx + (delf)/(dely) dy + (delf)/(delz) dz`
(以下続く)
このページの数式は ASCIIMathML で記述している。
書 名 | 理工基礎 微分積分学Ⅱ |
著 者 | 足立 恒雄 |
発行日 | 2002 年 4 月 25 日 初版発行 |
発行元 | サイエンス社 |
定 価 | (本体) |
サイズ | A5 版 |
ISBN | 4-7819-1009-2 |
NDC | |
備考 | 越谷市立図書館で借りて読む |
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