一松 信:微分積分学入門第一課

作成日:2021-06-24
最終更新日:

概要

はしがきから引用する。

微分積分学の教科書は,すでに数百種類が出版され,特色ある名著も少なくない. それにもかかわらず本書を書いた理由は,端的に言ってこれまでの教科書が難しすぎたと思うからである.

感想

これまでの教科書が難しすぎた、というのは私も同じ意見だ。ではこの教科書はどうか。 わたしが見る限り、難しいということはない。少なくとも `epsilon-delta` は出てきていない。 また、実数論もない。これでいいと思う。念のため、目次を掲げる。

本書の目次

以下、本書の目次を紹介する。なお、実際の目次には、各章末の演習問題および演習問題略解、索引もあるが、 これらは割愛した。

第Ⅰ部 基礎理論
 第1章 面積を求めて
  1.1 面積とは何か
  1.2 しぼり出し法
  1.3 区分求積法
 第2章 関数値の変化
  2.1 変化をとらえる
  2.2 微分係数
  2.3 導関数の例
 第3章 微分と積分の逆関係
  3.1 定積分の概念
  3.2 導関数の符号と関数値の増減
  3.3 微分積分学の基本定理
  3.4 不定積分
 第4章 微分積分の応用
  4.1 極値問題
  4.2 ニュートン法
  4.3 速度と加速度
  4.4 面積と体積
第Ⅱ部 計算技法
 第5章 微分法の基本公式
  5.1 関数の概念
  5.2 積・商の微分の公式
  5.3 合成関数とその微分の公式
  5.4 逆関数とその微分の公式
 第6章 微分の計算
  6.1 三角関数に関する極限
  6.2 三角関数の微分
  6.3 指数関数の微分
  6.4 対数関数の微分
 第7章 積分の計算のための準備
  7.1 多項式の除法
  7.2 互除法の応用
  7.3 無平方分解
  7.4 逆微分としての積分の基本公式
 第8章 積分の計算
  8.1 有理関数の不定積分
  8.2 対数部分の処理
  8.3 無理関数の積分例
  8.4 初等超越関数の積分例
  8.5 定積分の例

この目次で目をひくのは、第7章の 7.3「無平方分解」である。ここではアルゴリズム的な観点から述べられている。 有理関数の不定積分に関しては部分分数展開を経由するのがふつうだが、この無平方分解はおもしろい。

別の意味で目をひくのは、平均値の定理に関する説明がないことだ。はしがきにあるように、伝統的な形での平均値の定理は一言も述べていない。 にもかかわらず、微分積分学の基本定理は正しく証明されている。これは、 本質的に平均値の定理と同値な「有限増分の定理」(有限増分不等式)を活用しているからである。

本書の「有限増分の定理」の証明はリンク先を参照のこと。

数式の表現ほか

数式表現はMathJax を用いている。

書 名微分積分学入門第一課
編 者一松 信
発行日1994 年 4 月 20 日 初版第7刷
発行元近代科学社
定 価1800 円 (税別)
サイズ
ISBN978-4-7649-1012-8
NDC
その他越谷市図書館で借りて読む

まりんきょ学問所数学の部屋数学の本 > 一松 信 : 微分積分学入門第一課


MARUYAMA Satosi