加藤文元 : ガロア理論 12 講

作成日 : 2023-03-28
最終更新日 :

概要

副題は「概念と直観でとらえる現代数学入門」

以下はただの感想文である。

パズルゲーム性

p.97 では、有限群論の世界のさまざまな問題は,パズルゲーム性があるので面白いと感じる人は多いと思う。と記されている。 たしかにそうだ。位数 4 の群が 2 通りあることがまず不思議だ。この 2 通りとは巡回群のほかクラインの四元群である。 私は昔数学にパズルゲーム性を感じていたのだが、もうそういうことはなくなった。

正規部分群

ガロア理論を理解するための重要な概念に「正規部分群」がある。私はなかなかこの概念が理解できない。頭が悪いからだろう。 正規部分群を理解するには自己同型とか内部自己同型とかそのような概念を理解しないといけない。そのような理解の連鎖が必要になってくるので困る。 きっと初めてではないはずで、すぐ忘れるのだ。きっといいことが書いてある本なのだろうが、返す期限が迫っているので通読できないのがくやしい。

p.107 にある例題 1.3.1 を引用する。

`G` を群として,`g in G` とする。任意の `a in G` について,

`i_(g)(a) = gag^-1`
できまる写像 `i_(g)(a) : G -> G` は自己同型であることを示せ。

解 `a, b in G` について
`i_(g)(ab) = = i_(g)(a)i_(g)(b)`
よって,`i_(g)` は群準同型である。(後略)

この解でなぜ `g(ab) g^-1 = (gag^-1)(gbg^-1)` が成立するのかわからなかった。10 分ほど考えて、やっと次の理由で成立することがわかった。 `G` の単位元を `e` とすると、`e = g^-1g` だから次が成り立つ。

`g(ab) g^-1 = g(aeb)g^-1 = g(ag^-1gb)g^-1 = (gag^-1)(gbg^-1)`
こういう、わからないことが積み重なると困ってしまう。

本書の正規部分群の定義を p.109 から引用する。定義 1.4.1 である。

群 `G` の部分群 `N` が,任意の `g in G` について

`i_(g)(N) ( = gNg^-1) sube N`
を満たすとき,`N` は `G` の正規部分群という。`N` が `G` の正規部分群であることを,しばしば
$ N \triangleleft G $
と書く。

群 `G` の部分群 `N` が `G` の正規部分群であるとき $ N \triangleleft G $ と書くことを、この記述で改めて知った。何度も目にしているはずなのに、 絶えず新鮮な気分だ。

転倒数・置換・符号・交代群

p.112 が置換 `sigma` の転倒数が導入されている。導入数の概念は、一部の線形代数の本で行列を定義するときに出てくるが、 代数学の本で目にしたのは初めてだった。以前見たことがある概念が出てくると、多少は安心できる。このあとで偶置換・奇置換が定義され、 さらに交代群の正規性を意味する定理 2.2.6 が証明される。この定理を見て、交代群とはどんな群だろう、と別の定義を忘れている自分に気づく。

数式記述

数式は MathJax で記述している。

書誌情報

書名ガロア理論 12 講
著者加藤文元
発行日2022 年 7 月 21 日 初版
発行元KADOKAWA
定価2200 円(本体)
サイズA5 判 239 ページ
ISBN978-4-04-400682-2
その他越谷市立図書館で借りて読む

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