「まえがき」から引用する :
この本は,大学や専門学校の学生のために,応用の場面を思い描きながら書いた. 教科書として,また自習のために役立てていただけたらと願っている.
数学者が書いた微分積分の本は、実数論があって、 `epsilon-N` 論法による収束の定義や `epsilon-delta` 論法による連続の定義があって、 それから微積分の基本定理の証明という順で解説されているのが普通だ。 この本は物理学者が書いているからだろうか、そのような普通の書き方はされていない。 まず、実数論はない。 `epsilon-N` 論法による収束の定義は、テイラー展開の説明のあとで注意として出てくる。このとき、 単純な級数の収束ではなく、各項が `x` の関数である級数の収束で説明される。 さらに、 `epsilon-delta` 論法は、 本の半ばを過ぎた偏微分の順序交換の可能性を論じる個所で初めて出る。 このような書き方は、必要になって初めて説明するということなのだろうか、なるほどと思う。
おもしろいのは、最初のページでいきなりアステロイドの説明が出てくることである。 アステロイドは曲線のカタログで紹介したように、 `x^(2/3) + y^(2/3) = a^(2/3)` で表される曲線のことで、この曲線からいろいろな話題に言及している。 たとえば、このアステロイドは `y=f(x)` とすると多価関数になるという説明はなるほどと納得した。 複素関数ではごくあたりまえに多価関数が出てくるのに、実数関数で多価関数を正面から説明した本は、 私が知る限りなかった。
また、計算ミスをチェックするためのいろいろな方法が参考になった。その一つに次元の考えがあり、 これは物理学者の書いた実例だと納得した。
このページの数式は ASCIIMathML で記述している。
書名 | 微分積分の基礎と応用 |
著者 | 江沢 洋 |
発行日 | 2000 年 7 月 10 日 初版発行 |
発行元 | サイエンス社 |
定価 | 1,800 円(本体) |
サイズ | A5 版 258 ページ |
ISBN | 4-7819-0939-6 |
NDC | |
備考 | 草加市立図書館で借りて読む |
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