井川俊彦 : 基礎解析幾何学

作成日 : 2022-04-09
最終更新日 :

概要

「まえがき」から引用する。

本書は,解析幾何学の基本を説明するために書きました.

大きな図

本書は B5 版なので図が大きく、見やすい。

不満

50 ページの 3.4 節は「極と極線」である。次の記述と図がある。

円の外にある 1 点 `"P"_1` から直線を引き,円との交点を `"Q", "R"` とします. そこで
`2 / ("P"_1"P") = 1 / ("P"_1"Q") + 1 / ("P"_1"R") `
をみたす点 `"P"` をとると,この点は 1 直線上にあります.この関係を調べます.

Q P R P1
図 3.5

わかってみると当たり前だが、この点 P が 1 直線上にあるというこの 1 直線とは、図でいう `"P"_1"QPR"` ではない。図 3.5 で、 P を通る直線は 2 つあり、直線 `"P"_1"QPR"` ではない、もう一つの直線のほうが、 この 1 直線のことを指している。だから、 この点は 1 直線上にありますというのは、「この点のなす軌跡は直線です」といえばわかりやすい。 事実、この事実の証明で本書の 52 ページには点 `"P"` の軌跡という表現が複数回出ている。

書き方には不満があるが、事実はおもしろい。中心が原点で半径が `R` の円にたいし、 点 P の座標を `(x_1, y_1)` とすれば、 この 1 直線の式は `x_1x + y_1y = R^2` で表され、これを極線というのだそうだ。 では練習問題をやってみよう。54 ページを見る。

問 9 円 `x^2 + y^2 = 9` に関する点 `(2, 1)` の極線を求めなさい。

このときの円と点を書いてみよう。あれ、点が円の内側にある。外側にはない。聞いてないよ。答を見てみる。 `2x+y=9` だそうだ。これは点が円の外側にあるときの結果と形式的には同じだ。ということは、 極線は点 P が円の内側にあってもいいのか?

本書の証明を見る限り、点 `"P"_1` は円の内部にあってもいいようだ。ふむ。

誤植

35 ページ上から 9 行め

`y = (y_2-y_1)/(x_2-x_1) (x-x_1) + y_1 - x_1(x_2-x_1)`

とあるが、右辺最後の項は不要だ。次が正しい。

`y = (y_2-y_1)/(x_2-x_1) (x-x_1) + y_1`

48 ページ下から 5 行め

`t = 0, quad t = -(2lambdax_1 + muy_1)`

とあるが、次が正しい。カッコの位置に注意。

`t = 0, quad t = -2(lambdax_1 + muy_1)`

66 ページ下から 4 行めから 2 行め

点 `P_1` から引いた直線がの接線になっているときには,点 `Q, R, P` は接点に一致します. つまり,極線は,極からへ引いた接線を通ることがわかります.

とあるが、ここでは円ではなく、2 次曲線一般の話をしているので、 「円」を 「2 次曲線」に置き換えなければならない。

数式記述

このページの数式は MathJax で記述している。

書誌情報

書名基礎解析幾何学
著者井川俊彦
発行日2005 年 3 月 25 日 初版 1 刷発行
発行元共立出版
定価2200 円(本体)
サイズB5版 120 ページ
ISBN4-320-01782-X
NDC414.5
その他草加市立図書館にて借りて読む

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MARUYAMA Satosi