B. マンデルブロ : フラクタル幾何学 下

作成日 : 2022-03-27
最終更新日 :

概要

上巻の「まえがき」から引用する:

この本の目的は,フラクタルが幾何学的な対象としてどのように作られ, 表され,性質が明らかにされているのかをやさしい数学を使って紹介することです. そして,「数学的」なフラクタルと,自然界に存在する「現実」のフラクタルとの関係についてもお話します.

下巻ではカラー写真が巻頭で何枚か紹介されている。

自負の強さ

私は図を見ただけで、充分おもしろかった。逆に、本文はほとんど読んでいない。 読んでみた本文はというと、たとえば、37 章「経済学におけるスケーリングと価格変動」の、 自身の研究を説明したときの結論(p.209)である。 経済学の予測において,他にこの研究と同程度の成功をおさめた例を私は知らない. なんという自負の強さだろう。

リンディ効果

私は〇〇効果という名前の用語を集めるのが趣味だ。本書には「ノア効果」と「ヨセフ効果」、そして 「リンディ効果」という効果が説明されている。「ノア効果」と「ヨセフ効果」は著者マンデルブロによる命名だが、 「リンディ効果」は著者による命名ではないが、著者自身が面白いと思ってとりあげたのだろう。

ノア効果とヨセフ効果については、次のような p.12 で次の説明がなされている。 なお、それぞれの元になる話はどちらも旧約聖書の「創世記」から取られている。

ノアの物語は,中東地域における降水の非一様性を説話化したものと考えられるし, またヨセフの物語は雨量の多い年と少ない年が集中して続くという傾向を説話化したものであると見なすのが自然である.

うーん、ということはノア効果とヨセフ効果は正反対のことを言っているのだろうか。あるウェブサイトを見ると、 《未来は予測可能な「ヨセフ効果」と予測不能な「ノア効果」からなる》といっていて、 これでは「人間は死ぬまで生きる」という、ごく当たり前のことではないか。そういうことだろうか。よくわからない。

「リンディ効果」について、 p.215 から引用する。

リンディ効果.テレビのコメディアンの将来性は,過去の出演回数と比例する. 出店は The New Repulic の 1964 年 6 月 13 日号.

本書ではリンディの名前の出自については解説されていない。インターネットではその説明がある。 本書ではリンディ効果の数学的な見方と、これに関連するスケーリング (スケールの変換に対する不変性のこと。上巻 p.47 )やフラクタルについての説明がある。

書誌情報

書名フラクタル幾何学 下
著者B. マンデルブロ
監訳広中平祐
発行日2011 年 2 月 10 日(第1刷)
発行元筑摩書房
定価1600 円(本体)
サイズ文庫本
ISBN978-4-480-09357-8
備考ちくま学芸文庫、草加市立図書館で借りて読む

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