矢野健太郎:リーマン幾何学入門

作成日 : 2022-03-11
最終更新日:

概要

「はじめに」から引用する:

まだリーマン幾何学の適当な参考書がなかったので,著者があえてテンソル解析学の初歩とリーマン幾何学の概要を説明するために書いたものである.

線形代数の用語

第1章はテンソル代数学である。ここでは、指標記法とその利用方法についての説明がある。 そのなかの1.3 節は行列式である。 ここの用語が面白い。まず、p.22 で、行列式 `a` を次で考えている。

`a = |{:(a_1^1,a_2^1, cdots, a_n^1),(a_1^2,a_2^2, cdots, a_n^2),(cdots, cdots, cdots, cdots),(a_1^n,a_2^n, cdots, a_n^n):}|`
行列式の要素を `a_mu^lamda` で表わしている。 右上につけた指標 `lambda` は行列式 `a` におけるこの要素の存在する行を表わし、 右下につけた指標 `mu` はこの要素の存在する列を表わしている。 もう少し読み進めると同じ p.22 で行列式 `a` における `a_1^1, a_2^1, cdots, a_n^1` の余因数それぞれ `A_1^1, A_1_2, cdots, A_1^n` とおけば という記述がある。余因数のことを今は余因子というだろう。 たとえば「理系のための線型代数の基礎」p.70 などを見るといい。

本書の同じページには、行列式 `a` における元素 `a_mu^lambda` の余因数を `A_lambda^mu` とおけば(後略) という記述がある。元素という表記はここだけだ。おそらく要素といってもいいだろう。

外国人の名前

p.26 まで読み進めるとクラマーの法則が出てくる。他書では「クラーメルの公式」 と呼ぶことが多い。いっきに飛んで、p.128 では、これは有名なロードリーグの公式の拡張である と記されている。ロードリーグの公式とは、三次元回転におけるロドリゲスの回転公式のことであろうか。

長音

本書の p.23 ではクロネッカー (L. Kronecker) のデルターという表記がある。 デルターと長音で伸ばすのがかっこいい。

送り仮名

本書の p.96 の 4.4 節は「テンソルの展げ」である。これは何と読むのだろう。 「テンソルのひろげ」だろうか。

誤植

p.4 下2行から1行で微分幾何者 とあるが、《微分幾何学者》だろう。 また p.7 14行で古典微分何学 となっているが、《古典微分幾何学》だろう。

p.17 の 1.1 節は「指標記号」となっているが、p.13 目次では 「1.1 指標記法」 となっている。1.1 節の本文は「記号」より「記法」の用語が多く使われているので、 目次の「指標記法」を採用すべきだろう。

さくいんの誤植

p.181 は 行 「ベクトラミの第1種微分係数」とあるが、正しくは《ベルトラミの第1種微分係数》 だろう。この上がベクトルに関する数々の用語だから、これにひきずられたか。

p.181 ら 行「ロードリーグの公式」は p.125 とあるが、p.125 にはこの公式の記載はない。

数式記述

このページの数式は MathJax で記述している。

書誌情報

書名リーマン幾何学入門
著者矢野健太郎
発行日1990 年 7 月 10 日 第 1 版 第 11 刷発行
発行元森北出版
定価2900 円(本体)
サイズA5版 264 ページ
ISBN4-627-00200-9
その他数学レクチャーノート基礎篇2、草加市立図書館にて借りて読む

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MARUYAMA Satosi