山本 芳彦:数論入門

作成日 : 2021-07-23
最終更新日:

概要

カバーから引用する:

あまりに高度化した現代の数論は初心者には初心者には近寄りがたくなってしまったが, 初等代数学をはじめとして, ある程度の数論を理解するために必要な数学的素養を身につけられるように工夫した. 素数のふるまいを探求する「代数的整数論」とよばれる分野を中心として, 近年注目されている話題を解説する.

感想

私は頭が弱いから、解答があるとすぐ見てしまう。本書は、章の途中に問が、章末に演習問題があり、 どちらも略解がほとんど載っている。ということは、解が全くない問もあるので、 それらの一部について解答を試みる。

第1章 有理整数環

代数ではイデアルは重要な構造なのだろうが、p.10 でイデアルが出てくると早速困る。 私のイデアルの理解は整数の倍数、ということから先に一歩も出ていない。

p.4 にこんな問題がある:

問6 次の数を素因数分解せよ.

121
12321
1234321
123454321
12345654321
1234567654321
123456787654321
12345678987654321

答を見たが、ヒントしかない。

ヒント.`121 = 11^2, 12321 = 111^2, 1234321 = 1111^2, cdots`

もっとも、1だけからなる数字が素数かどうかわからない。 同じ p.4 に 1 だけからなる数字の素因数分解の結果が載っているので、それと合わせて答を作ろう。

`121 = 11^2`
`12321 = 111^2 = 3^2 * 37^2`
`1234321 = 1111^2 = 11^2 * 101^2`
`123454321 = 11111^2 = 41^2*271^2`
`12345654321 = 111111^2 = 3^2*7^2*11^2*13^2*37^2`
`1234567654321 = 1111111^2 = 239^2*4649^2`
`123456787654321 = 11111111^2 = 11^2*73^2*101^2*137^2`
`12345678987654321 = 111111111^2 = 3^4 * 37^2 * 333667^2`

第2章 合同式

私は爺さんだから、高校のときに合同式を習ったことはなかった。今の高校生は使えるらしい。うらやましい。 さて、本書 p.27 を見てみよう。

問1 `5^8=390625` を実際に 7 で割って 4 余ることを確かめよ.

b = ap + q を b/a = a...q と書く。

39/7 = 5...4, 40/7 = 5...5, 56/7 = 8...0, 25/7 = 3...4

なるほど、確かに 4 余った。もちろん、本文には合同式を使ったスマートな方法が記述されていて、 それを泥臭い方法で検算しろ、ということだ。スマートな方法とは次の通り:

`5^2 -= 25 -= 4 (mod 7)`
`5^4 -= (5^2)^2 -= 4^2 -= 2 (mod 7)`
`5^8 -= (5^4)^2 -= 2^2 -= 4 (mod 7)`

次に、本書 p.33 を見てみよう。答は載っていない。

問6 `m` が奇数のとき,次を示せ.

`m -= 1 (mod 10) <=> m -= 1 (mod 5)`

困りましたね。まず `rArr` を導くことにする。命題 2.5 (ii) より、

`a -= b(mod kn) => a-=b (mod n)`

が成り立つ。この式で、`a=m, b = 1, k=2, n = 5` とおけば、`m -= 1 (mod 5)` が得られる。 次に逆の `lArr` を示す。`m` が奇数であることを考慮し、次の連立合同式

`{(m-=1,(mod 2)), (m-=1,(mod 5)):}`

を解く。2 と 5 は互いに素であるから命題 2.10 (p.30) の (i) が成立する。 また、上記連立合同式で、m = 1 がその解の一つだから、同命題の (ii) から次が成り立つ:

`m-=1 quad (mod 10)`

証明終

第3章 剰余環

本章も初等整数論の範囲だが、 新たな用語がどんどん入ってくる。もうついていけない。

せめて、答は載っていない問題を一つ解いておこう。本書 p.57 を見てみよう。

問9 次の集合は複素数としての加法・乗法により体となることを示せ.

`QQ(sqrt(-1)) = QQ + QQsqrt(-1) = { a + b sqrt(-1) | a, b in QQ}.`

本書では、本問のすぐ上の例 3.28 に似た例があるので、この通りやってみる。

`(a + b sqrt(-1)) + (c + d sqrt(-1)) = (a + c) + (b + d)sqrt(-1)`,
`(a - b sqrt(-1)) + (c - d sqrt(-1)) = (a - c) + (b - d)sqrt(-1)`,
`(a + b sqrt(-1)) (c + d sqrt(-1)) = (ac - bd) + (ad + bc)sqrt(-1)`.

また,`c + d sqrt(-1) != 0` のとき,

`1 / (c + d sqrt(-1)) = ((c - d)sqrt(-1)) / (c^2 + d^2) = c / (c^2 + d^2) - d / (c^2 + d^2) sqrt(-1)`.

であるから,`QQ( sqrt(-1) )` は体である.

数式記述

このページの数式は MathJax で記述している。

誤植

p.46 上から 13 行め、系??より,`p | a` または `p | b` が成り立つ. とある。この ?? は何だろう? 前のページを読み直すと、p.14 に記載がある。だから、 系 1.26 より,`p | a` または `p | b` が成り立つ.がただしい。 p.14 をここで引き写す。

系 1.26(素数の性質)`p` を素数とするとき,

`p | ab => p | a ` または `p | b`

p.222 上から 11 行め、この ?? は何だろう? たぶん、例 6.16 (p.163)だと思うが、よくわからない。

`m -= 2, 3 (mod 4)` のときの基本単数 `epsilon` の例は例??にある.

p.248 上から 6 行め、問1 (??)を示せ. とある。この ?? は何だろう? どうやら前の式 (8.2) を表しているらしい。(8.2) は次の通り:

`D(alpha) = D(alpha + 1) = D(-alpha) = D(1/alpha)`

書誌情報

書 名数論入門
著 者山本 芳彦
発行日2003 年 11 月 11 日(第1刷)
発行元岩波書店
定 価3800 円(本体)
サイズA5版 372 ページ
ISBN978-4-00-006878-4
その他越谷市立図書館にて借りて読む

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MARUYAMA Satosi