芳沢光雄 : 群論入門

作成日 : 2024-02-21
最終更新日 :

概要

副題は「対称性をはかる数学」。

感想

Amazon の書評を見てみると、好意的な書評と批判的な書評がある。 私は理解していないのでどちらとも言えない。

自己同型群

4 章「いろいろな対象の自己同型群」の p.92 から引用する。

はじめに,2 章 3 節で述べたことから,正 `n` 角形(`n ge 3`)の合同変換全体が作る二面体群 `G` は位数 `2n` の群である。 これを普通,正 `n` 角形の合同変換群というが,正 `n` 角形の自己同型群ともいう。

(中略)

15ゲームが完成するための必要十分条件は,開始時(右下空白)から終了時(右下空白)を見た
`T = {1,2,3, cdots, 15}`
上の置換が偶置換であることであった。

すなわち 15 ゲームにおいては,右下空白の状態から右下空白の状態への移動可能なもの全体は `T` 上の交代群 `A_15` である。このことを, 15 ゲームの自己同型群は `A_15` であるという。

上で見たように,自己同型群という言葉は個々の数学的構造で定めるものであるが,個々の対象をそれ自身へと移す移動全体が群になるとき,それを指していうのである.

「A というが B ともいう」という主張を見たとき、なぜ A で間に合うのに B という言い方をわざわざするのだろうか、 という疑問が残る。その後読んでいくと、15 ゲームの自己同型群は `A_15` であるというとあり、こちらは A というが、に相当するところがない。 これはどういうことなのだろう。個々の数学的構造で定めるものであるがというのがその理由を明かすものに思えるが、まだわからない。

7 ゲームと新 15 ゲーム

4 章「いろいろな対象の自己同型群」では、自己同型群の例としてパズル(ゲーム)を用いている。これは面白いと思う。昔から知られている 15 パズル(15ゲーム)のほかに、 著者が考案した 7 ゲームと新 15 ゲームがある。7 ゲームは次のとおりである。

1 2
3 4 5
6 7

2 1
3 4 5
6 7

空白(ブランク)のところに、すでにある数字を動かしていく。左側の配置が右側の配置になれば完成だ。左上と右上の間の⇔は、左上と右上が隣同士であり行き来ができることを示している。 本書の通りのレイアウトは面倒なのでやめた。左を右にする解は次のとおりである。「詳細」をクリックするたびに表示と非表示が切り替わる。

    (1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 0)
    (1, 2, 3, 4, 5, 6, 0, 7)
    (1, 2, 3, 0, 5, 6, 4, 7)
    (1, 2, 0, 3, 5, 6, 4, 7)
    (0, 2, 1, 3, 5, 6, 4, 7)
    (2, 0, 1, 3, 5, 6, 4, 7)
    (2, 5, 1, 3, 0, 6, 4, 7)
    (2, 5, 1, 3, 7, 6, 4, 0)
    (2, 5, 1, 3, 7, 6, 0, 4)
    (2, 5, 1, 3, 7, 0, 6, 4)
    (2, 5, 0, 3, 7, 1, 6, 4)
    (0, 5, 2, 3, 7, 1, 6, 4)
    (5, 0, 2, 3, 7, 1, 6, 4)
    (5, 7, 2, 3, 0, 1, 6, 4)
    (5, 7, 2, 0, 3, 1, 6, 4)
    (5, 7, 0, 2, 3, 1, 6, 4)
    (0, 7, 5, 2, 3, 1, 6, 4)
    (7, 0, 5, 2, 3, 1, 6, 4)
    (7, 3, 5, 2, 0, 1, 6, 4)
    (7, 3, 5, 0, 2, 1, 6, 4)
    (7, 3, 0, 5, 2, 1, 6, 4)
    (7, 3, 1, 5, 2, 0, 6, 4)
    (7, 3, 1, 5, 2, 6, 0, 4)
    (7, 3, 1, 0, 2, 6, 5, 4)
    (7, 3, 0, 1, 2, 6, 5, 4)
    (0, 3, 7, 1, 2, 6, 5, 4)
    (3, 0, 7, 1, 2, 6, 5, 4)
    (3, 2, 7, 1, 0, 6, 5, 4)
    (3, 2, 7, 0, 1, 6, 5, 4)
    (3, 2, 0, 7, 1, 6, 5, 4)
    (0, 2, 3, 7, 1, 6, 5, 4)
    (2, 0, 3, 7, 1, 6, 5, 4)
    (2, 1, 3, 7, 0, 6, 5, 4)
    (2, 1, 3, 7, 4, 6, 5, 0)
    (2, 1, 3, 7, 4, 6, 0, 5)
    (2, 1, 3, 0, 4, 6, 7, 5)
    (2, 1, 3, 4, 0, 6, 7, 5)
    (2, 1, 3, 4, 5, 6, 7, 0)
    

p.102 に「図3 新 15 ゲームの基本形」がある。本書の p.103 では次のように書かれている。

図 3 の新 15 ゲームは 1999 年考案したもので,ネット上でも「New 15 Puzzle by Mitsuo Yoshizawa」と入力すると誰でも気軽に楽しめるようになっているが,7 ゲームと比べるとかなり難しくなる。

検索すると該当するページは表示されたのだが、小チップが動かない。実装に Java アプレットを使ったためだろう。現在 Java アプレットが使えるブラウザはない。 そこで、JavaScript を使えば実装できるのではないかと思ってやってみた。ないよりまし、という程度だ。左側の配置を右側の配置にするにはどうしたらよいかが、新 15 ゲームである。 左側の配置において、ブランクのセルの隣のセルの数字をクリックすると、数字とブランクが入れ替わる。これを繰り返す。右側の配置はクリックしても動かない。 実装は、廣瀬豪:いちばんやさしい JavaScript 入門教室を参考にした。

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書誌情報

書名 群論入門
著者 芳沢光雄
発行日 2015 年 5 月 20 日 第1刷
発行元 講談社(ブルーバックス)
定価 800 円(本体)
サイズ 新書判
ISBN 978-4-06-257917-9
備考 草加市立図書館で借りて読む

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MARUYAMA Satosi