副題は「公理から考える」。序文から引用する:
(前略)最後に改めてあなたに問おう.
「あなたが今まで,思い描いてきた点や直線とは一体いかなるものですか」.
「そしてその実在についてはいかがですか」.
このことは,この本と共に常時考えていただきたいテーマである(この序文の最後に特に注意を喚起しておきたい).
生半可な覚悟では読めない本である。ただ、公理論的に幾何学を見ることに徹底しているのが、 読み進めるうえで気持ちがいい。具体的には、複数の公理を提示して、 これこれの公理を除いてこれこれの公理だけで成り立つモデル、というのが複数あることが驚きだった。 本文中のモデルは 14 も提示されている。 最初のモデル 1 は 7 点図形であり、点が 7 つだけからなるモデルである。昔、 有限点からなる幾何学があることを「組合せ理論とその応用」で初めて知り驚いたことを思い出した。
p.8 に次の集合に関する説明がある。
たとえば,`NN, ZZ, bbbD, QQ, RR, CC` を次のような集合とする (この記号の定義は本書全体を通して利用する).
`NN:` 自然数の集合,`ZZ:` 整数の集合,`QQ:` 有理数の集合
`RR:` 実数の集合,`CC:` 複素数の集合,
`bbbD: = {n/2^k | n in ZZ, k = 0, 2, cdots}`.
以上の `bbbD` の集合で `{n/2^k | n in ZZ, k = 0, 2, cdots}` とあるのは、 `{n/2^k | n in ZZ, k = 0, 1, 2, cdots}` とするのがいいだろう。
さて、p.17 では、次の定義と記法が示されている:
定理 0.7(実数の基本的性質 5) `NN, ZZ, D, QQ` は同等であるが,`RR` とは同等ではない.すなわち,
`|NN| = |ZZ| = |bbbD| = |QQ| = aleph_0 != |RR|`.
ここで最初の `D` は、正しくは `bbbD` である。
また、pp.158-159 では、次の定義と記法が示されている:
定義 4.1(円の定義) 平面 `ccP` 内の点 `C` と `r gt 0` が与えられたとき,
`bbbC = {P in ccP | OP = r}`
を中心 `C`,半径 `r` の円という.
もちろん、ここの `CC` は、複素数の集合ではない。気を付けないといけない。
p.99 に定理 1.28 が次の通り記述されている。
定理 1.28(外角定理) 3 角形の外角は内外角のいずれよりも大きい.
正しくは《3 角形の外角は内対角のいずれよりも大きい.》だろう。 内対角の定義は p.98 にある。
このページの数式は MathJax で記述している。
書 名 | 初等幾何入門 |
著 者 | 溝上 武實 |
発行日 | 2005 年 9 月 15 日 第1版第1刷発行 |
発行元 | 日本評論社 |
定 価 | 2200 円(本体) |
サイズ | A5版 188 ページ |
ISBN | 978-4-535-78439-6 |
その他 | 越谷市立図書館にて借りて読む |
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