溝上 武實:初等幾何入門

作成日:2021-10-07
最終更新日:

概要

副題は「公理から考える」。序文から引用する:

(前略)最後に改めてあなたに問おう.
「あなたが今まで,思い描いてきた点や直線とは一体いかなるものですか」.
「そしてその実在についてはいかがですか」.
このことは,この本と共に常時考えていただきたいテーマである(この序文の最後に特に注意を喚起しておきたい).

感想

生半可な覚悟では読めない本である。ただ、公理論的に幾何学を見ることに徹底しているのが、 読み進めるうえで気持ちがいい。具体的には、複数の公理を提示して、 これこれの公理を除いてこれこれの公理だけで成り立つモデル、というのが複数あることが驚きだった。 本文中のモデルは 14 も提示されている。 最初のモデル 1 は 7 点図形であり、点が 7 つだけからなるモデルである。昔、 有限点からなる幾何学があることを「組合せ理論とその応用」で初めて知り驚いたことを思い出した。

気を付けるところ

p.8 に次の集合に関する説明がある。

たとえば,`NN, ZZ, bbbD, QQ, RR, CC` を次のような集合とする (この記号の定義は本書全体を通して利用する).

`NN:` 自然数の集合,`ZZ:` 整数の集合,`QQ:` 有理数の集合
`RR:` 実数の集合,`CC:` 複素数の集合,
`bbbD: = {n/2^k | n in ZZ, k = 0, 2, cdots}`.

以上の `bbbD` の集合で `{n/2^k | n in ZZ, k = 0, 2, cdots}`  とあるのは、 `{n/2^k | n in ZZ, k = 0, 1, 2, cdots}` とするのがいいだろう。

さて、p.17 では、次の定義と記法が示されている:

定理 0.7(実数の基本的性質 5) `NN, ZZ, D, QQ` は同等であるが,`RR` とは同等ではない.すなわち,
`|NN| = |ZZ| = |bbbD| = |QQ| = aleph_0 != |RR|`.

ここで最初の `D` は、正しくは `bbbD` である。

また、pp.158-159 では、次の定義と記法が示されている:

定義 4.1(円の定義) 平面 `ccP` 内の点 `C` と `r gt 0` が与えられたとき,
`bbbC = {P in ccP | OP = r}`
を中心 `C`,半径 `r` のという.

もちろん、ここの `CC` は、複素数の集合ではない。気を付けないといけない。

誤植

p.99 に定理 1.28 が次の通り記述されている。

定理 1.28(外角定理) 3 角形の外角は内角のいずれよりも大きい.

正しくは《3 角形の外角は内角のいずれよりも大きい.》だろう。 内対角の定義は p.98 にある。

数式記述

このページの数式は MathJax で記述している。

書誌情報

書 名初等幾何入門
著 者溝上 武實
発行日2005 年 9 月 15 日 第1版第1刷発行
発行元日本評論社
定 価2200 円(本体)
サイズA5版 188 ページ
ISBN978-4-535-78439-6
その他越谷市立図書館にて借りて読む

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MARUYAMA Satosi