磯崎 洋 : 数理物理学における微分方程式
作成日 : 2022-01-28
最終更新日 :
概要
「はじめに」から引用する:
本書は数学,物理学に用いられる微分方程式論の基礎事項とその応用を解説しようとするものです.
内容は盛りだくさんである。次の目次を見ればわかると思う。
引用にあたって番号付きリストに変えた。大項目は章を、小項目は課を表わす。
- 基礎理論
- 最低限の知識
- 等周問題
- 定数係数1階連立方程式
- 実行列の指数関数
- 定数係数単独方程式
- 変数係数線形方程式
- 2階線型単独方程式
- 一般的な存在定理
- 大域解
- 比較定理とその応用
- 安定性
- 力学への応用
- 力学系の初歩
- 2次元トーラス上の運動
- 複素領域における微分方程式
- 単連結領域での存在定理
- 多価の解
- モノドロミー行列
- 確定特異点
- 超幾何微分方程式
- 合流型超幾何微分方程式
- Hankel 関数
- 鞍点法
- 直交関数系
- 固有値問題の多項式解
- 交換関係と固有値問題
- 偏微分方程式入門
- Laplacian の基本解
- Helmholtz 方程式の基本解
- 波動方程式とエネルギー保存則
- 3 次元空間における波動方程式
- 2 次元における波動方程式
- 放物型方程式
- Fourier 変換
- Fourier 変換と基本解
- 種々の方程式のスペクトル理論からの見直し
- 弱解の概念
感想
私のように大学数学もわからない者には、荷が重い。p.26 の問 6.1 を解いてみよう。
問 6.1 方程式
`d/(dt)((x),(y)) = ((1, t),(0, -1)) ((x),(y))`
を解けば `x = C_1e^t - C_2(1/4 + t/2)e^-t, y = C_2e^-t` である.
`e^(B(t))` は解を与えるか.
巻末の問題解答には、本問の解答は略されている。こういうことだろうか。
本文 p.26 の記載によれば、微分方程式
`d/(dt)x = A(t)x, x(0) = x_0 in CC^n, B(t) = int_0^tA(s)ds`
において、`A(t)` と `B(t)` が可換ならば `E^(B(t))x_0` は上の微分方程式の解を与える。
しかし、`A(t)` と `B(t)` は一般に可換ではない.本文でははっきりいっていないが、
ということは `A(t)` と `B(t)` は一般に可換ではないなら `E^(B(t))x_0` は一般には解を与えない
ということか。 では計算してみる。
`B(t) = int_0^tA(s)ds = ((t,t^2/2),(0,-t))`
`A(t)B(t) = ((1,t),(0,-1))((t,t^2/2),(0,-t)) = ((t,-t^2/2),(0,t))`
`B(t)A(t) = ((t,t^2/2),(0,-t))((1,t),(0,-1)) = ((t,t^2/2),(0,t))`
`A(t)` と `B(t)` は可換ではない。よって、`e^(B(t)` は解を与えない。
こうしていいのだろうか。可換でなくてもたまたま解を与えてしまった、ということはないのだろうか。
よくわからない。
誤植
p.196 上から 8 行め、Wierstrass により指摘
とあるが、
《Weierstrass により指摘》が正しい。
数式記述
このページの数式は MathJax で記述している。
書誌情報
書名 | 数理物理学における微分方程式 |
著者 | 磯崎 洋 |
発行日 | 2000 年 9 月 25 日 第1版第1刷発行 |
発行元 | 日本評論社 |
定価 | 3800 円(本体) |
サイズ | A5版 228 ページ |
ISBN | 4-535-78275-X |
その他 | 草加市立図書館にて借りて読む |
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