「まえがき」から引用する :
この図鑑には美しい図形や不思議な図形がたくさん出てきます. そのような図形の仕組みを「見ているだけで理解できるように」したいのです.
どのページもいろいろな形がいろいろな色で彩られている。確かに美しい。
本書の最終章にあたる第 8 章は「東京ジャーミイ」と題されている。東京ジャーミイは東京の代々木上原にある、 イスラム教の礼拝施設である。なぜ本書でこの施設が取り上げられているかというと、 イスラム教の施設では対称性が高い意匠があちこちに取り入れるからで、本書の面白いところだ。以下、 「まえがき」から引用する:
第 8 章はイスラムの伝統デザインを取り上げました.東京ジャーミイさんの撮影許可に感謝します. 撮影は写真家の飯村昭彦氏の協力を得ました.
この飯村氏とは、「超芸術トマソン」の表紙を飾った衝撃の写真「谷町の煙突」 を撮影した飯村昭彦氏でまちがいないはずだ。こんなところで会えるのも読書の楽しみだ。
扉(標題紙)の、黄緑色の背景が目を引く。これはおそらくロマネスコであろう。 これについての注釈がないのが残念だ。と思ったら、p.147 にロマネスコのフラクタル性が解説されていた。 まあいいか。
p.70 のコラムは「凸 5 角形によるタイル張り 4 種を発見した主婦マジョリー・ライス」という標題である。
ここでは平面張り詰めができる凸 5 角形タイルの形は,次ページの 5 角形タイルだけではありません.
とある。p.71 には 5 角形タイルが見当たらないように見えたが、よく見ると p.71 の中ほどに、
平行 6 辺形を半分にした 5 辺形は,2 つ組み合わせると平行 6 辺形にもどるので,
タイル張りできます.
という文があった。このことである。
p.26 では正多面体の 2 面角が表示されている。
正4面体 | 正6面体 | 正8面体 | 正12面体 | 正20面体 | |
---|---|---|---|---|---|
2面角α | 70.5… | 90 | 109.4… | 116.5… | 138.1… |
これらの数値はどのようにして計算されるのだろうか。少し考えてみた。
右は第3角法で描いた正四面体である。左上が立面図、左下が正面図、右下が側面図である。 右下の側面図で考えてみる。正三角形の 1 辺の長さを `2a` としよう。 まず、AB の長さは `sqrt(3)a` である。これは、正三角形の1 点から向かい合う辺との距離を考えればわかる。 同様に、BC の長さも `sqrt(3)a` であることがわかる。また、AC は正三角形の1辺の長さ `2a` そのものである。 2 面角である角 ABC を `alpha` とおくと余弦定理から、
正六面体、すなわち立方体の2面角は 90 °であることはいいだろう。 次は正八面体を考えてみる。右は第3角法で描いた正八面体である。正面図と側面図は同じである。 同様に右下の側面図で考えてみる。正八面体を構成する正三角形の 1 辺の長さを `2a` としよう。 まず、AB の長さは `sqrt(3)a` である。これは、正三角形の1 点から向かい合う辺との距離を考えればわかる。 同様に、AC の長さも `sqrt(3)a` であることがわかる。また、BC は正三角形の1辺の長さ `2a` そのものである。 以上から、AD の長さは `2sqrt(3a^2-a^2) = 2sqrt(2)a` とわかる。 2 面角である角 ABD を `alpha` とおくと余弦定理から、
p.184 の表の標題が2 次元ブラペー格子
になっているが、
《2 次元ブラベー格子》が正しい。
書名 | 美しい幾何学 |
著者 | 谷克彦 |
発行日 | 2019 年 9 月 21 日 初版 第 1 刷 |
発行元 | 技術評論社 |
定価 | 2980 円(本体) |
サイズ | B5 判 243 ページ |
ISBN | 978-4-297-10810-6 |
備考 | 越谷市立図書館にて借りて読む |
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