一樂重雄(監修):集合と位相 そのまま使える答えの書き方

作成日 : 2022-05-11
最終更新日:

概要

もちろん,集合と位相の内容の全部をカバーしているわけではない. 数学の勉強は,そのやり方がのみ込めるまでが,「ひと勝負」であり,いったん,勉強のしかたがわかれば, 講義や通常のテキストによって,楽々とまではいえないまでも,なんとか勉強できるようになる.

ていねいな記述

執筆者は監修者の他は執筆者のゼミの学生である。そのためか、記述がていねいだ。 以下、いろいろ書いたがそれはていねいであるがためにわかったことがらである。

局所充填集合

p.94 で開集合という言葉についてのコメントがある。

開集合の概念は位相空間論の出発点となる.この言葉は,その内容を的確に表しているとはいえない. ある境界線があってその内側,あるいは外側というような集合の場合は,開集合とは境界を含まない集合であって, 言葉とあっている.
内容を直感的に表すとすれば、“局所充填集合” (locally full set) ともいうべきであろう. 開集合とは局所的に空間全部を含んだ集合なのである。

ある境界線があって…の文は、私にはわからなかった。 ある境界線があってその内側,あるいは外側というような集合の場合というが、そうでない集合があるのだろうか、 と思った。しかし、当たり前だが、離散的な集合もある。この場合は、境界という概念がないから、 開集合の開くという字には当惑を覚える。この局所充填集合は p.141 でも出てくる。以下引用する。

開集合とは,その中の各点が内点であるものであった. 境界点を含まないという意味で「」というのだが,もし,その意味がわかりやすい名前をつけるとすれば, “局所充填集合” (locally full set) といったところではないだろうか. `A` が開集合とは,各点が居所的にはその空間全体(全方向という感じ)を含んでいるということなのである.

不思議な ??

p.95 には次の問題がある。

問題 3.3.3. `B_delta(x)` は開集合であることを示せ.(問題 ??)

この問題 ?? というのは何か?

誤植

p.74 の中央の不等式

`abs()(a,b)|le 2norm(a)norm(b) le 2sqrt((a,a)(b,b))`

だが、左辺の棒が一本足りない。正しくは次の通り。

`norm((a","b))le 2norm(a)norm(b) le 2sqrt((a,a)(b,b))`

同じ p.74 にある、問題 3.1.4. は次のようになっている。

問題 3.1.4. `x, y in RR` に対して,次の式が成り立つことを示せ.

`abs(x_1-y_1) + abs(x_2-y_2) + cdots + abs(x_n-y_n) = norm(x-y)`.

`x, y` は `x, y in RR^n` とすべきだろう。また式は等号 (=) になっているが、正しくは不等号 (`ge`) である。

pp.142-143 の問題は次のようになっている。

問題 5.1.2. `X = {a, b, c}` としたとき,`X` の開集合の族を以下の 6 つで与える. それぞれ `X` が位相空間となっているかを確認せよ.(中略)
(4) `bbbO (X) = {X, {a,b}, {a,c}, O/}`
解.(`O_1`) `X, O/ in bbbO(X)`.
(`O_2`) `{a, b} uu {b, c} = {a, b, c} !in bbbO(X)`. よって位相空間にはなっていない.(後略)

この最後の行が問題だ。実際、`{a,b,c}` は全体集合であるので `X` に等しく、`{a, b, c} in bbb O(X)` である。だから (`O_2`) の条件は満たしている。なお、引用が遅れたが、p.141 には次の定義が書かれている。

定義 5.1.1. (位相空間).集合 `X` の部分集合を要素とする集合 `bbbO(X)` が決まっていて次の 3 つの条件を満たすとき `X(bbbO(X))` を位相空間という.また単に `X` を位相空間ともいう.
(`O_1`) `X, O/ in bbbO(X)`.
(`O_2`) `U_alpha in bbbO(X), alpha in Lambda => uuu_(alpha in Lambda) U_alpha in bbbO(X)`.
(`O_3`) `U_1, cdots, U_n in bbbO(x) => U_1 nn cdots nn U_n in bbbO(X)`
(中略)また条件(`O_1`),(`O_2`),(`O_3`) を開集合の公理という.

問題の解にもどって、(4) は公理 (`O_2`) は満たしているが、公理 (`O_3`) を満たしていないために位相空間にはなっていない。 すなわち、(`O_3`) によれば、(4) の `bbbO` が位相空間であるためには、 `{a, b} nn {b, c} = {b}` は `bbbO` の要素でなければならないが、実際は `{b}` は `bbbO` の要素ではない。

数式記述

このページの数式は MathJax で記述している。

書誌情報

書 名集合と位相 そのまま使える答えの書き方
監修者一樂重雄
発行日2001 年 5 月 1 日 第1刷
発行元講談社
定 価
サイズ21cm 174 ページ
ISBN
その他草加市立図書館にて借りて読む

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MARUYAMA Satosi