遠山 啓:代数的構造

作成日: 2015-03-22
最終更新日:

概要

代数的構造、すなわち群や環、体を解説する。

用語

自己同型

p.086 で初出だが、定義はなされていない。私の理解では、 ある群 G に対して、G から G への写像が同型となるような写像のこと、なのだがどうか。 同型の定義は、p.019 でなされていて、この2つは(中略)その要素のあいだにある相互関係の型は同じである. つまり,このような場合 `S, S'` は同形であるという。と記されている。 ここで、`S` は 整数 6 の約数の集合 {1, 2, 3, 6} に対する約数―倍数の関係の構造を、 また `S'` は集合E={1, 2} の部分集合すべてに関する含む―含まれるの関係の構造を指す。

比喩

p.64 で次の比喩が出ている。

  1. “シャツを着る”
  2. “上着を着る”
  3. “オーバーを着る”

そして、“シャツを着て,その後で上着を着る”は `a` の次に `b` を行うことであるが、これを `ab` で表すことにする。 そのあとで `ba` についての説明はこうである。<“上着を着てから,シャツを着る”といういささか奇妙な動作を意味する.> この「いささか」ということばがいい。

私が思い出したのは、逆行列の公式だった。 ` (AB)^(-1) = B^(-1)A^(-1) ` を「パンツをはいてズボンをはく」の逆は、「ズボンをぬいでからパンツをぬぐ」 と教わったのは高校のころだったろうか。

家紋

第3章、第4節でいきなり家紋が出てくる。自己同形の群 C1 の家紋の例のあと、折り返し可能な D1、 180°回転を許す C2 がどんどん提示されて面食らう。ふうむ。

クロネッカー

pp.177-178 で、クロネッカーの有名な言葉が引用されている。

わが愛する神は整数(自然数)を創り給うた.他の数はすべて人間の創ったものだ.

そのあと著者はクロネッカーは(中略)たとえば `pi` のような無理数に市民権を認めなかった。と論評する。しかし、 クロネッカーは微積分に関する論文も少なからずあること、微積分は実数の連続性を認めない限り意味がないことから、 彼の主張は矛盾しているといえる.と言い切っている。そして、結びに次のポアンカレの言を引いている。

クロネッカーが偉大な数学者であり得たのは,彼が自分の主張に忠実でなかったからだ.

この揶揄は実におもしろい。

MathJax

MathJax を使っている。

代数の本

書誌情報

書 名代数的構造
著 者遠山 啓
発行日
発行所筑摩書房
定 価円(本体)
サイズ文庫版
ISBN 4-
その他
NDC 410

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MARUYAMA Satosi